「顧問料、ちょっと高いですね」
そう言われた瞬間、 頭の中で一瞬、
値引きの計算をしたことがあります。
断られたくない。
嫌われたくない。
そういう感情が、先に動く。
実際に、開業してしばらくは
値引きをしていました。
「少しだけなら」と思って下げる。
契約は取れる。
でも、どこかすっきりしない。
その感覚の正体に気づくまで、
少し時間がかかりました。
値引きは優しさではない。
価格は、信頼をつくるものだ、と。
値引きした瞬間に何が壊れるか
値引きは、一見すると相手への配慮に見えます。
「無理させたくない」
「喜んでもらいたい」
そういう気持ちから来ることも多い。
でも、値引きした瞬間、
相手の頭の中では別のことが起きています。
「最初の価格は、適正じゃなかったんだな」
「交渉すれば、下げてくれる人なんだな」
「この人、断られるのが怖いんだな」
こう思われた瞬間、
信頼の土台が静かに揺らぎます。
そして一度値引きをすると、
次も値引きを求められます。
「前は下げてくれたのに」という話になる。
これが繰り返されると、
適正な価格を提示すること自体が、
できなくなっていきます。
値引きが生む悪循環は、じわじわと、
でも確実に関係性を壊していきます。
本来、価格は上がるべき時代にいる
ここで、少し視野を広げて考えてみてください。
人件費が上がっています。
物価が上がっています。
あらゆるコストが、
数年前とは別次元になっています。
この状況で、 同じサービスを
同じ価格で提供し続けること自体、
すでに経営判断として正しくない。
値引きどころか、
据え置きすら本来は見直しが必要なフェーズです。
安く売るのは、簡単です。
価格を下げれば、
その瞬間の契約は取りやすくなります。
でも、それは経営ではありません。
コストが上がる中で価格を下げれば、
利益は削られ、サービスの質を維持できなくなる。
結果として、
クライアントに提供できる価値も下がっていく。
安売りは、巡り巡って相手への
不誠実につながります。
「高い」は断り文句ではなく、価値が伝わっていないサイン
「高いですね」と言われると、
価格の問題だと受け取りがちです。
でも多くの場合、
価値がまだ伝わっていない、というサインです。
そして価値が伝わらない原因の多くは、
自分自身が価値を言語化できていない
ことにあります。
意外とすごいことを、
無自覚にやってしまっている。
当たり前にやっていることが、
相手にとっては当たり前ではない。
でも、それを言葉にしていないから、
相手には見えない。
以前、顧問料を「他より高い」と言われたとき、
値引きではなく中身を説明しました。
月次の数字確認だけでなく、
資金繰りの相談や融資のサポート、
経営の判断を一緒にする関係であること。
返ってきた言葉は「それなら納得です」でした。
相手が「高い」と言ったのは、
価格への不満ではなく、
中身が見えていなかっただけでした。
価値を言語化して、きちんと伝える。
これも顧客教育です。
値引きより先にやるべきことは、そこです。
適正価格を守ることが、関係性を守る
価格を守ることは、
一見すると強引に見えるかもしれません。
でも、軸のある人間だと思われることが、
長期の信頼をつくります。
「この人は、自分のサービスに自信を持っている」
「価格に根拠がある人だ」
そう思われることで、
関係性の質が変わってきます。
逆に、値引きを繰り返す人には、
「また交渉すれば下げてくれる」
という目で見られ続ける。
どちらが長期の関係をつくりやすいか、
考えてみると明らかです。
価値を理解してくれる相手と組む、という経営判断
それでも「高い」と言われたとき。
無理に契約しないことを、僕はすすめています。
価格で折れて始まった関係は、
後で必ずひずみが出ます。
「こんなに払っているのに」という不満が、
どこかのタイミングで出てくる。
価値を理解してくれるクライアントとだけ組む。
これは冷たい話ではなく、
長期で良い関係を築くための経営判断です。
「ご縁がなかった、ということで」
そう言える覚悟を持つことが、
自分のためにも、相手のためにもなります。
うちの事務所も、
ここはまだ難しいと感じることはあります。
目の前の契約を取りたいという気持ちは、
当然出てくる。
それでも、
価値観の合わない関係を無理につなぐより、
合う相手と深く組む方が、結果としてお互いにいい
という感覚は年々強くなっています。
価格という軸を、今一度確認する
今日、一つだけ確認してみてください。
自分の価格に「なぜこの金額か」を
一行で説明できるか。
そして、その金額は今の時代に見合っているか。
言語化できていないなら、
そこから始めるだけです。
価格の根拠が自分の中にあると、
「高いですね」と言われたときの答え方が、
変わってきます。
価格を守ることは、自分への誠実さであり、
相手への誠実さでもあります。
安く売るのは簡単です。
でも、それだけでは経営とは呼べない。
自分のサービスに自信があるなら、
その価値に見合った価格を堂々と提示する。
それが、長く続く
仕事のつくり方だと思っています。
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