「うちは基本、来た人は断らないんです」
先日、ある経営者の方からそう聞きました。
間口を広く取って、誰でも受け入れる。
一見、間違っていないように聞こえます。
実際、その姿勢自体は悪いことではありません。
でも、その方の
ホームページやSNSを見せてもらうと、
少し違和感がありました。
こだわりの強い世界観、高単価な写真、
限られた人だけに向けたようなメッセージ。
「誰でも歓迎」のはずなのに、
発信は「選ばれた人だけへ」になっている。
これ、実はよくあるズレです。
「誰でも歓迎」は戦略の一つ
先に言っておくと、
間口を広げることは、悪いことではありません。
回転数で稼ぐ。
量でカバーする。
これも、立派な戦略です。
逆に、絞り込んで高単価で勝負する。
これも、立派な戦略です。
どちらが正しい、という話ではありません。
問題は、戦略そのものではなく、
その戦略と、実際のマーケティングが
一致しているかどうかです。
3業種で見る「ズレ」の正体
分かりやすい業種で見てみます。
・飲食店
回転数で稼ぐ戦略なら、それでいい。
でも、こだわりの内装や、
高単価に見える料理写真ばかり発信していたら、
来る客の期待と、店の戦略がズレます。
・美容室
数をこなして安定的に稼ぐ戦略なら、それでいい。
でも、SNSで技術力の高さや、
独自のスタイルばかり打ち出していたら、
来る客は「特別な技術」を期待して来ます。
実際は、そこまでの技術を求めていない、
という現場とズレます。
・住宅(工務店)。
幅広い予算帯に対応する戦略なら、それでいい。
でも、こだわりの注文住宅として発信していたら、
予算の合わない相談ばかり増えます。
3つとも、業種は違います。
でも、起きていることは同じです。
戦略とマーケティングが噛み合っていないとき、
疲弊が生まれるという構造です。
間口を広げること自体が悪いのではありません。
間口を広げる戦略なのに、
絞り込んだメッセージを発信しているから、
ズレるのです。
でも、本質はここではありません。
本質は「一致しているかどうか」
間口を広げるべきか、絞るべきか。
多くの経営者は、ここで悩みます。
でも、本質はそこではありません。
選んだ戦略通りに、
マーケティングできているかどうか。
これが本質です。
戦略に正解はありません。
でも、戦略とマーケティングがズレていれば、
どちらの戦略を選んでいても、現場は疲弊します。
パターンA/Bで見る、美容室の場合
同じ美容室で、二つのパターンを比べてみます。
パターンA:
発信は「技術特化」「こだわりの高単価サロン」。
でも、実際は予約枠を埋めるため、
誰でも受け入れている。
結果、どうなるか。
期待値の高い客は、
施術に「思っていたのと違う」と感じる。
一方、口コミで「誰でも受けてくれる」
と聞いて来た客は、
サロンの世界観と自分が合っていないと感じる。
どちらの客にとっても、
中途半端な満足度になります。
パターンB:
発信を「幅広い要望に対応できる、
通いやすいサロン」に統一。
実態と、発信が一致している。
結果、どうなるか。
来る客は、最初から
「対応の幅広さ」を期待して来ます。
期待と実態が一致しているので、
満足度が安定します。
リピートも、紹介も安定していきます。
ただし、一つ変化があります。
高単価志向・こだわりの強い客層は、
以前より来なくなります。
発信が「通いやすさ」に寄るほど、
「特別感」を求める客とは、
自然と距離ができるからです。
これは、失敗ではありません。
そもそも、その戦略では
ターゲットにしていない客層だからです。
むしろ、来てほしい客層に
より深く刺さる発信になった、
ということです。
同じ「誰でも受け入れる」という戦略でも、
発信と実態が一致しているかどうかで、
結果はまったく変わります。
戦略とマーケティングを一致させると、何が変わるか
一致させることで、変わることが三つあります。
一つ目は、集客の質です。
そもそも、求めている客層が
やって来るようになります。
二つ目は、現場の疲弊です。
期待値のズレによる
クレームやすれ違いが減ります。
三つ目は、紹介の質です。
同じ戦略に共感した客が、
同じような客を紹介してくれます。
戦略を変える必要はありません。
発信を、戦略に合わせるだけです。
正直に言うと、ここは苦労しました
本来、中小企業の戦略としては、
どちらか一方に振り切るのがセオリーです。
低単価×量で攻めるか。
高単価×絞り込みで攻めるか。
でも、うち事務所のは、
実はそこを、あえて振り切りませんでした。
開業当初は、オンラインに
特化した仕組みで効率化し、
比較的シンプルな税務ニーズを持つ
スタートアップ層を受け入れる。
これが入口でした。
そこから事業が育ったお客様に、
社外CFOとして、より深く関わっていく。
入口から出口まで、一つの導線としてつなげる。
これが、うちの戦略です。
正直、これは効率がいい選択ではありません。
一方に振り切った方が、組織としては動きやすい。
入口対応の体制と、出口対応の体制、
両方を用意する必要があるからです。
それでも、あえて両方を残しているのが、
うちの事務所のリアルなところです。
だからこそ、発信も一貫させる必要があります。
「オンラインで効率化する事務所」であり、
「社外CFOとして深く関わる事務所」でもある。
この二つを、一つの発信の中でどう伝えるか。
ここは、今も試行錯誤しています。
戦略を、一行で言葉にする
今日、やってみてほしいことは一つです。
自分の事業の戦略を、
一行で書き出してみてください。
「量で攻める」のか、「絞り込んで攻める」のか、
それとも、うちのように
「両方を、あえて残す」のか。
書き出したら、次に見てほしいのは、
今のホームページやSNSの発信です。
その一行と、発信は一致していますか。
一致していなければ、
それが今、現場で起きている
疲弊の正体かもしれません。
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