先日、経費精算のために提出された
領収書の画像を見ながら、
ふと「これ、本物かな」と考えた瞬間がありました。
きっかけは、あるニュースです。
ChatGPTで作られたコンビニのレシート画像が、
本物と見分けがつかないほど精巧だとして、
Xで話題になりました。
経費精算などへの悪用を
懸念する声も上がっています。
これは、決して他人事のニュースではありません。
経理・税務の現場に、静かに、
でも確実に関わってくる話だと思っています。
本物と見分けがつかない、AI生成レシートの中身
実際にChatGPTでセブン-イレブンの
レシート画像を生成してみたそうです。
結果はこうでした。
実在する店舗名までは再現できなかった。
ただし、店名を架空のものにすれば、
ロゴ、レイアウト、商品名、価格など、
店舗名以外の要素はほぼ本物と
同じレベルで再現できた。
経費精算サービスを提供する
マネーフォワードへの取材でも、
こんなコメントが出ています。
「AIで偽造された領収書画像を見せられた場合、
企業側が自力で見破ることは難しい」。
生成AIが登場する以前から、
領収書の加工による架空の立替経費精算は
重要な課題として認識されていた。
それが、AIの登場・進化によって
リスクが増大している。
そういう説明でした。
数分あれば、それらしい領収書が作れてしまう。
これが、今起きていることです。
領収書が「証拠」でいられたのは、偽造に手間がかかったからだ
電子帳簿保存法という、
領収書やレシートの保存方法を
定めたルールがあります。
画像データでの保存を認めているのも、
このルールの一つです。
ただし、いつでも好きなタイミングで
画像化していいわけではありません。
領収書を受け取ってから、
原則として最長2か月とおおむね7営業日以内に、画像データとして保存しなければならない、
という期限が決められています。
実はこのルールの背景には、
こんな考え方があったと言われています。
「短い期間で領収書を偽造・加工するには、
手間も時間もかかるはずだ」。
つまり、領収書が証拠として機能してきたのは、
それ自体に特別な力があったからではなく、
偽造するのが割に合わないくらい
手間がかかったから、
信頼されてきただけとも言えます。
でも、本質はここにあります。
証拠として信頼されていたのは
「紙があるかどうか」ではなく、
「偽造するのが割に合うかどうか」だった、
ということです。
その前提が、静かに崩れ始めています。
税務顧問の仕事は、証憑を疑うことではない
税理士という仕事は、
顧客との信頼関係を前提に成り立っています。
僕たちは、顧客、つまり納税者側の
代理人として業務を受託しています。
目の前にある領収書が
本物かどうかを疑い、調べる。
これは、現時点では
まったく想定していない仕事です。
そもそも、偽造という
違法行為や脱税を前提に考え始めたら、
きりがありません。
すべての領収書を疑ってかかるようなやり方は、
現実的でもありませんし、
信頼関係の上に成り立つ税務顧問
という仕事の本質からも外れます。
ただ、それが
簡単にできてしまう時代になったことは、
事実として受け止める必要があります。
簡単に偽造できるということは、
いずれ税務署側も何かしらの
対応をしてくる可能性がある、
ということでもあります。
今すぐではなくても、この変化は
視野に入れておくべきだと思っています。
一番現実的なのは、偽造による脱税より経費精算の不正
このリスクが実際に牙をむくとしたら、どこか。
偽造による脱税よりも、
社内の経費精算不正の方が、
はるかに現実的だと考えています。
理由はシンプルです。
大手企業であっても、
経費精算はいまだにアナログ運用のところが多い。
そもそも、店舗が発行する証憑は
紙しか存在しないケースがほとんどです。
紙の領収書を写真で撮って提出する。
このフローそのものに、
偽造が入り込む隙があります。
実際、ある経費精算プラットフォームは、
2025年9月に検出した
不正書類の約14%がAI生成だった
と報告しています。
前年はゼロだった数字です。
急増、という言葉がふさわしい変化だと思います。
疑う仕組みより、不正できない仕組みに乗る
だからといって、経理担当者に
「もっと領収書を疑え」と言うのは違います。
性善説を前提にした信頼関係は、
変える必要はありません。
変えるべきなのは、証憑そのものの流れ方です。
証憑が発行された時点で
オンライン・クラウド上に記録され、
そのまま経費精算システムに連携される。
この仕組みに乗ってしまえば、
そもそも紙で偽造が入り込む余地自体が
なくなります。
疑う力を鍛えるのではなく、
疑う必要がない仕組みに乗る。
これが、これからの経費精算に
求められる発想だと思っています。
紙をやめる、ここから
自社の経費精算が、今も
紙の領収書を写真に撮って提出し、
経理担当者がそれを目視でチェックする
という流れに頼っているなら。
ここに、偽造が入り込む隙が生まれています。
一度、クラウド型の経費精算ツールへの
切り替えを検討してみてください。
クレジットカードや電子決済の
利用明細をシステムに直接連携させれば、
そもそも紙の写真を経由する工程自体をなくす
ことができます。
人が撮った画像を、人が目視で確認する。
この工程がなくなれば、AIで作られた画像が
入り込む余地もなくなります。
「今のところ困っていないから」
という理由だけで先延ばしにするには、
少し危うい時代に入ってきています。
紙が信頼されなくなる前に、仕組みを変えておく。
それが、これからの経費精算における
一番の防御策だと思っています。
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