会社が潰れるたった2つの条件

先日、ある経営者の方とお話ししていて、
こんな場面がありました。
「借入金、今いくらですか」
と聞くと、即答が返ってきます。
でも、「では、預金はいくらありますか」
と聞くと、少し言葉に詰まる。
売上と利益はすぐ答えられるのに、
現金純資産は答えられない。
こういう社長様は、実はとても多いです。
原因ははっきりしています。
会社が潰れる基準を、そもそも知らないからです。
潰したくない、破産したくないと思っていても、
どうなったら潰れるのかを知らなければ、
何を守ればいいのかも分かりません。
今日はその基準の話をします。

会社が潰れる基準は、実はたった2つしかない

「倒産する会社が多い」
「うちは大丈夫だろうか」
そういう不安を持つ経営者は多いです。
でも、会社が破産に追い込まれる基準は、
法律にはっきり書いてあります。
破産法第16条第1項です。
そこには、会社が破産できる条件が、
たった2つだけ書かれています。
支払不能か、債務超過か。
このどちらかに該当しない限り、
会社は破産できません。
逆に言えば、
この2つに近づかないように
数字をコントロールしていれば、
会社は絶対に潰れません。
まずはこの2つを、
正しく理解することが出発点です。

支払不能とは「手元にお金がない」ということ

支払不能とは、
支払うべき日に、支払うべき相手に、
継続的に支払うことができない状態を指します。
今月だけたまたま払えない、
という話ではありません。
これから先も、ずっと払えそうにない。
そういう状態です。
つまり、シンプルに言うと、
手元にお金がないということです。
「お金がなくなると会社は潰れる」
とよく言われますが、
それはまさにこの支払不能のことを指しています。

債務超過とは「資産より負債が多い」ということ

もう一つの基準が、債務超過です。
これは貸借対照表の話です。
資産を全部現金化しても、
負債を返しきれない状態。
資産より負債の方が多い状態、
つまり純資産がマイナスの状態を、
債務超過と呼びます。
整理すると、貸借対照表の
左上の現金と、右下の純資産
この2つの数字さえ意識していれば、
会社が潰れる基準からは自然と遠ざかります。
逆に言えば、経営でコントロールすべき数字は、
本当はこの2つだけなんです。

自己資本比率だけを見ていると、判断を誤る

経営の安全性を測る指標として、
自己資本比率がよく使われます。
自己資本比率が高ければ安全、
低ければ危険。
そう考えている経営者は多いです。
でも、破産法第16条をどれだけ読んでも、
「自己資本比率が何パーセント以下なら破産」
という基準はどこにも書いてありません。
本質は、率ではなく額です。
自己資本比率が高くても、
現金と純資産の額そのものが薄ければ、
ちょっとしたきっかけで現金は枯渇しますし、
純資産もすぐに債務超過へ転落します。
逆に、自己資本比率が低くても、
現金と純資産がたっぷり厚ければ、
会社は簡単には潰れません。
比率という「見た目のきれいさ」ではなく、
額という「実際の体力」を見る。
これが、破産から遠ざかるための
本当の物差しです。

借入金を気にする社長ほど、預金を見ていない

これも実際によくある場面です。

パターンA:借入金にばかり目が行く社長
「借入金、今いくらですか」と聞くと即答できる。
でも「預金はいくらですか」には答えられない。
借入金を減らすことが、
会社を守ることだと考えている。

パターンB:現金と純資産を厚くすることを優先する社長
借入金の額そのものより、
それを上回る現金純資産があるかを見ている。
必要なら借りて、現金を厚くする
選択もためらわない。

結果として、パターンAの社長は、
儲かった利益以上に借入金を
返してしまうことがあります。
自己資本比率を上げることが目的化してしまい、
手元の現金がむしろ薄くなっていく。
パターンBの社長は、
借入金そのものを敵視しません。
明日すぐ返す必要のないお金であれば、
借りてでも現金を厚くしておく方が、
会社を守ることになると分かっているからです。
借金は、それ自体が悪ではありません。
その借金を上回る
現金と純資産があるかどうか
が本質です。

守りすぎて、攻められなくなるのもリスク

ここまでは、潰れないための「守り」の話でした。
でも、実はもう一つ別のリスクがあります。
現金純資産も十分に厚いのに、
それでもなお投資や挑戦をせず、
守りに入ったままの会社です。
今の商品やサービスが、
この先もずっと同じ需要を
維持できる保証はありません。
設備も、車両も、いずれ古くなります。
新しいニーズに応えられなくなる日が、
必ず来ます。
だからこそ、体力があるうちに、
次の種をまいておく必要があります。
投資には当然、失敗のリスクが伴います。
でも、多少の失敗に耐えられるだけの
現金純資産があるなら、
そのリスクは取りにいくべきリスクです。
安全性を確保することと、
守りに入りすぎて機会を逃すこと。
この2つは、まったく別の話です。

伝え方が難しい、という正直な話

現金純資産の適正な水準は、
事務所として、数字としては把握できています。
業種や規模によって、
どれくらいの現金があれば安心なのか、
どれくらいの純資産が目安になるのか。
そこ自体は、お伝えできます。
正直に難しいのは、
その数字を経営者ご本人にとって、
腹落ちする形で伝えることです。
貸借対照表の構造や比率の話を
そのまま説明しても、
なかなか自分ごととして響きません。
専門用語を並べれば並べるほど、
かえって遠い話に聞こえてしまう。
ここは、僕自身もまだ試行錯誤しています。
数字を正しく伝えることと、
その数字を経営判断に使ってもらうことの間には、
まだ距離があると感じています。

まず見るべきは、この2つだけ

難しい話をしましたが、
見るべき数字はシンプルです。
今月の現金残高と、今月の純資産
まずはこの2つだけ、
答えられるようにしてみてください。
売上や利益は、すぐ答えられる方が多いです。
でも、現金残高純資産を、
即答できる経営者は驚くほど少ないです。
知らない数字は、意識にのぼりません。
月に一度、試算表を開いたときに、
この2つの数字だけを
確認する習慣をつけてください。
細かい増減を追う必要はなく、
先月より増えているか、減っているか
それだけで十分です。
破産する会社と、破産しない会社。
その差は、特別な経営手法の
違いではありません。
この2つの数字を、
日常的に見ているかどうか
の差です。


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この記事を書いた人

新美 敬太のアバター 新美 敬太 代表税理士

「経営を楽しむ」という想いを大切に、日々経営者の皆さまと向き合っています。
税務・会計だけでなく、同じ目線で悩みや挑戦を共有しながら、一緒に考え、進んでいくことを大切にしています。
私自身も一人の経営者として、まだまだ成長の途中です。
だからこそ、うまくいくことも、迷う時間も、すべて含めて寄り添える存在でありたいと思っています。
経営の中にある楽しさや可能性を感じていただけるように。
これからも、皆さまと一緒に歩んでいきます。

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