混乱は、組織が進化する前ぶれ

顧問先の経営者と話していると、
こうした悩みをよく耳にします。
「新しいやり方を試すと、
最初はうまくいかないことがありますよね」
新しい制度を入れた。
新しいメンバーが増えた。
業務フローを変えた。
そのたびに、現場では小さな戸惑いや意見のズレが生まれます。
経営者はそれを見て、
「これで大丈夫だろうか」と不安になる。
変化のときに生まれるこうした戸惑いを、
多くの人は「良くないサイン」だと感じます。
でも、僕はそう思っていません。
もちろん、準備不足による混乱は減らす必要があります。
ただ、変化の過程で生まれる戸惑いや試行錯誤まで、
悪いものと捉える必要はないと思っています。

混乱を「悪いこと」だと感じてしまう理由

組織が変化するとき、
多くの経営者や管理職が目指すのは
「混乱を起こさないこと」です。
決め事はできるだけ一度で固める。
やり方はブレさせない。
スタッフを不安にさせない。
気持ちはよくわかります。
静かで安定した組織の方が、
働く人にとっても安心できるように見えるからです。
でも、この発想には一つ盲点があります。
変化と混乱は、切り離せないという点です。
新しいやり方を導入すれば、
最初のうちは今までのやり方とぶつかります。
役割分担が変われば、
誰が何をやるのか、一時的に曖昧になります。
これは必ずしも失敗ではなく、
変化の過程では自然に起こり得る現象です。

混乱は、進化の途中で起きる

富士フイルムの話をご存知でしょうか。
主力だった写真フィルムの需要は、
デジタル化によって2000年から2010年の間に
約10分の1にまで縮小しました。
会社の存続そのものが危ぶまれる状況でした。
そこで富士フイルムは、写真事業の構造改革を進める一方、
写真フィルムで培った技術を生かし、
化粧品やヘルスケア、半導体材料などへ
事業領域を広げていきました。
当時は、「なぜフィルム会社が化粧品を作るのか」と、
意外に感じた人も多かったのではないでしょうか。
でも、その試行錯誤の先に、現在の富士フイルムがあります。
ヘルスケア、エレクトロニクス、イメージングなど、
複数の領域で事業を展開する企業へと変わりました。
JALの再建も、変化に伴う戸惑いを乗り越えた事例の一つです。
2010年、JALは会社更生法の適用を申請し、経営破綻しました。
稲盛和夫氏の下で「JALフィロソフィ」を軸とした
意識改革や経営改革が進められ、
新しい考え方を浸透させる過程では社内の抵抗もありましたが、
破綻から2年8カ月後の2012年9月に再上場を果たしています。
混乱は、変わろうとしているときに起きやすいものです。
何も変わらない組織では、そもそも混乱すら起きにくいのです。
大切なのは、混乱をなくすことではなく、
その混乱がなぜ起きているのかを見極めることです。

混乱への向き合い方で、組織の受け取り方は変わる

同じ変化でも、伝え方によって
スタッフの受け取り方はまったく違います。

パターンA:完成形だけを伝える組織
「新しいやり方はこれで進めます」
「来月からこの体制に変更します」

パターンB:調整期間があることも伝える組織
「まずはこの形で始めますが、実際に動かしながら調整していきます」
「慣れないことも出てくると思うので、そのときは一緒に整理しましょう」

パターンAは、決定事項をはっきり伝えている分、頼もしく見えます。
でも、実際にうまくいかない場面が出てきたとき、
スタッフは「聞いていた話と違う」と感じます。
このギャップが、本当の意味での不安を生みます。
パターンBは、最初から
不確実性や調整期間があることを共有しています。
だから実際にうまくいかない場面が来ても、
「ああ、これがそうか」と受け止められます。
起きることは同じでも、
構えがあるかどうかで、受け取り方はまったく違うのです。

混乱は「起きてから考える」ものではない

ここが一番伝えたいところです。
混乱への向き合い方は、
混乱が起きてから決めるものではありません。
起きる前提で、心構えを共有しておくものです。
防災と少し似ています。
起きてから対応を考えるのと、
あらかじめ起こり得ることを想定しておくのとでは、
実際に問題が起きたときの動き方が変わります。

変化の前に、伝えておけること

難しいことをする必要はありません。
今、組織で変わろうとしている部分を、
一つ思い浮かべてください。
そして、その変化についてメンバーにこう伝えてみてください。
「これから慣れないことも出てくると思う。
そのときは一緒に整理しよう」
と。
混乱が起きてから説明するのではなく、
起きる前に、心構えを渡しておく。
それだけで、組織の変化への向き合い方は変わります


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この記事を書いた人

新美 敬太のアバター 新美 敬太 代表税理士

「経営を楽しむ」という想いを大切に、日々経営者の皆さまと向き合っています。
税務・会計だけでなく、同じ目線で悩みや挑戦を共有しながら、一緒に考え、進んでいくことを大切にしています。
私自身も一人の経営者として、まだまだ成長の途中です。
だからこそ、うまくいくことも、迷う時間も、すべて含めて寄り添える存在でありたいと思っています。
経営の中にある楽しさや可能性を感じていただけるように。
これからも、皆さまと一緒に歩んでいきます。

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