「あの人、なんか合わないんですよね」
経営者や管理職の方から、こういう相談をよく受けます。
チームの中に、どうしても馴染めない人がいる。
一緒に仕事をすると、なぜかストレスがたまる。
たいてい、
「相性が悪い」「性格が合わない」で片付けられます。
でも、僕はこの説明に、
ずっと違和感を持っていました。
本質は、好き嫌いではありません。
その人の「正しさ」を、自分が許せるかどうか。
これが、人間関係の本当の分かれ目です。
「合わない」の正体は、好き嫌いじゃない
「合わない」という言葉は便利です。
理由を深く考えなくていい。
でも、少し立ち止まって考えてみてください。
なぜ、その人と合わないと感じるのか。
多くの場合、そこには具体的な出来事があります。
期限ギリギリまで動かない。
細かい報告をしてこない。
自分のやり方を曲げない。
これらは、性格の不一致ではありません。
その人が「これが正しい」と思っているやり方が、
自分の「正しさ」とぶつかっているだけです。
正しさを実行すれば、誰かに迷惑がかかる
ここで、少し場面を並べてみます。
パターンA:期限ギリギリまで粘るタイプ
「最後まで粘って、質を上げたい」という正しさを持っている。
本人にとっては、それが誠実な仕事の仕方です。
でも、周りは「早めに共有してほしい」と感じています。
パターンB:早めに動いて、こまめに共有するタイプ
「早く手をつけて、不安要素を早く消したい」
という正しさを持っている。
本人にとっては、それが安心できる進め方です。
でも、周りからは
「拙速に見える」「準備不足に見える」
と感じられることもあります。
どちらも、間違っていません。
それぞれが、自分の正しさを実行しているだけです。
でも、正しさを実行するということは、
必ずどこかで誰かに迷惑をかけるということでもあります。
自分が正しいと思う行動が、
相手にとっては負担になる。
これは、避けられない構造です。
課題の分離という考え方
心理学の世界に、アドラー心理学という考え方があります。
その中心にある概念の一つが、課題の分離です。
簡単に言うと、
「これは誰の課題か」を分けて考える、という発想です。
相手がどう仕事を進めるか。
相手が何を正しいと思うか。
これは、相手の課題です。
自分がコントロールできるものではありません。
一方で、
その進め方を自分がどう感じるか、
どう対応するか。
これは、自分の課題です。
「合わない」と感じたとき、
多くの人は、相手の課題にまで踏み込んで、
「変えよう」「正そう」としてしまいます。
でも、変えられるのは、自分の受け止め方だけです。
自分も、誰かに迷惑をかけている
ここが、一番大事なところです。
相手の正しさに迷惑していると感じるとき、
見落としがちなことがあります。
自分も、誰かの迷惑になっているという事実です。
僕自身、正直に言うと、
「早く決めて、早く進めたい」
という正しさが強いタイプです。
これは、スピード感を持って仕事を進める上では、
悪くない特性だと思っています。
でも、この正しさを実行するとき、
慎重に検討したいスタッフを、
急かしてしまっていることがあります。
本人は「まだ考えたい」と思っているのに、
僕が先に動いてしまう。
これは、僕の正しさが、
誰かの負担になっている瞬間です。
相手を「合わない」と感じる前に、
自分もまた、誰かにとっての「合わない人」である。
この自覚があるかどうかで、
人間関係の見え方は変わってきます。
嫌いな人はいない。でも苦手な人はいた
僕自身、
嫌いな人というのは、今までいたことがありません。
これは強がりでもきれいごとでもなく、本当にそうなんです。
ただ、苦手な人は、いました。
正しさが自分と大きく違う人。
一緒に仕事をすると、なぜかやりづらさを感じる人。
以前の僕は、この苦手さを
どう扱えばいいか分かりませんでした。
苦手だから距離を置く。
そんなことも、正直ありました。
でも、組織をつくっていく中で、
「これは好き嫌いではなく、正しさの違いなんだ」
と捉えられるようになってから、変わりました。
苦手だと感じる相手は、
自分と違う正しさを持っているだけ。
そう思えるようになると、
苦手さは消えなくても、許せるようになる。
好きになる必要はありません。
でも、許せると、関係は驚くほど楽になります。
判断基準を「好き嫌い」から「許せるか」に変える
では、どう考えればいいのか。
好き嫌いという感情の基準ではなく、
許せるかどうかという基準に置き換えてみてください。
好き嫌いは、コントロールしにくい感情です。
理由もなく、合わないと感じることもあります。
一方、許せるかどうかは、判断です。
「このやり方は自分と違うけど、許容できる範囲か」
「これは、譲れないラインを越えているか」
この判断は、意識すれば変えられます。
組織づくりで大事なのは、
全員に自分と同じ正しさを求めることではありません。
違う正しさを持つ人同士が、
どこまでなら許容し合えるかを
すり合わせていくことです。
採用のときも、評価のときも、
チーム編成のときも同じです。
「好きか嫌いか」で判断すると、
似たタイプばかりが集まる組織になります。
「許せるか許せないか」で判断すると、
違うタイプが共存できる組織になります。
合わないと感じたら
チームの中に、合わない人がいる。
それは、悪いことでも、
組織として失敗しているわけでもありません。
違う正しさを持った人間が集まれば、
自然に起きることです。
今日、もし誰かに対して「合わないな」と感じたら、
一度だけ、こう考えてみてください。
これは好き嫌いなのか、それとも正しさの違いなのか。
そして、
自分の正しさもまた、誰かの迷惑になっていないか。
相手を裁く前に、まず自分を振り返る。
それだけで、見え方は変わってきます。
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