「A事業は赤字だけど、
B事業が黒字だからトータルではプラスなんで」
そう言って、複数事業を持つ経営者の方が
少し安心した顔をすることがあります。
気持ちはわかります。
でも、僕はそのたびに少し心配になります。
「全体黒字」という見方が、
会社を少しずつ蝕む罠になることがあるからです。
今日は、成功している経営者ほど
赤字事業に妥協しない理由と、
不採算部門とどう向き合うべきかを整理します。
「全体黒字」という罠——補填の構造が組織を蝕む
複数事業を持つ会社では、事業別の損益を
きちんと把握していないケースが意外に多いです。
月次の試算表を見ても、
全社合計の数字しか出てこない。
それで「黒字だから大丈夫」と判断している。
これが、ドンブリ勘定の典型です。
黒字事業が赤字事業を補填している構造が続くと、
3つのことが起きます。
まず、意思決定が鈍くなります。
赤字でも「全体で見れば」と思えてしまうので、
問題を直視するタイミングが遅れます。
次に、黒字事業のモチベーションが下がります。
頑張って稼いだお金が
赤字の穴埋めに使われていると感じると、
黒字部門のスタッフの士気に影響します。
そして、キャッシュが静かに消耗します。
利益があるように見えても、
特定の事業がキャッシュを
食い続けている状態です。
数字で見る「小さな赤字」の破壊力
「月50万円くらいの赤字ならまだ許容範囲かな」
と思う経営者は多いです。
でも、数字で見るとイメージが変わります。
月50万円の赤字が続くと、
1年で600万円、3年で1,800万円です。
単純計算ですが、
これを黒字事業が補填し続けているという
構造を改めて見てください。
もう一つ、見落としがちな視点があります。
金融機関の目線です。
銀行や信用金庫は、融資の審査において
事業ごとの採算を意識します。
全体で黒字であっても、
特定の事業が慢性的な赤字を抱えていれば、
その事業への評価は厳しくなります。
赤字が続く事業に融資して回収できるのか、
という視点で見るからです。
経営者からすると「全体では問題ない」
と感じていても、
金融機関からすると赤字事業はリスク要因
として映ります。
資金調達の場面で、
思わぬ壁になることがあります。
成功している経営者が「不採算部門の切り捨て」を躊躇わない理由
僕が顧問先の経営者を見ていて感じるのは、
うまくいっている経営者ほど
不採算部門の切り捨てに迷いがない
ということです。
なぜか。
赤字に慣れると、撤退判断も甘くなるからです。
「もう少し様子を見よう」
「来期こそは黒字になる」
という思考が繰り返されるうちに、
傷口は広がり続けます。
1年我慢したものが、3年になり、5年になる。
加えて、赤字事業は
黒字事業のリソースを食います。
お金だけではありません。
経営者の時間、幹部の注意、スタッフの工数。
これらはすべて有限です。
赤字事業に引っ張られることで、
本来伸ばすべき事業への投資が後回しになります。
そして、過去への執着(サンクコスト)が
判断を遅らせます。
感情とメンツが、撤退を1年、2年先送りにします。
撤退を躊躇う気持ちはわかります。
でも、大企業だって同じことを繰り返しています。
ユニクロは野菜事業に参入し1年半で撤退、
ソニーはテレビ事業を分社化、
AmazonはFireフォンをわずか1年で諦めました。
成功している企業ほど、失敗と撤退の数も多い。
試して、判断して、切り捨てる。
それを繰り返すことで、勝ち筋が見えてくる。
撤退は敗北ではなく、
次の一手への資源の再配分です。
赤字事業との正しい向き合い方——改善か撤退かの判断軸
赤字だからといって、
すぐに切り捨てるのが正解とも限りません。
一点、補足しておきたいことがあります。
赤字事業が一概に悪いわけではない
ということです。
その事業があることで
他の事業の売上や利益が上がる、
いわゆるシナジー効果が
働いているケースもあります。
たとえば、単体では赤字でも、
その事業があることで顧客との接点が生まれ、
主力事業の受注につながっている
というケースです。
採算だけを切り取って判断するのではなく、
事業全体への影響も含めて考えることが大切です。
ただし、
シナジーを理由に赤字を放置するのは別の話です。
シナジーがあるなら、
それを数字で説明できるはずです。
「なんとなくあった方がいい気がする」は、
根拠になりません。
大事なのは、
「なぜ赤字か」を構造で分解することです。
赤字の原因は大きく3つに分けられます。
価格の問題か、コスト構造の問題か、
そもそも需要がない問題か。
そもそも、
事業とは反復・継続的に営利目的で行う活動です。
赤字が慢性的に続き、改善の見込みもないなら、
それはもはや「事業」として成立していない、
とも言えます。
構造的な赤字であれば、早めの撤退が最善策です。
撤退は失敗ではなく、経営判断
不採算部門を切り捨てることに、
後ろめたさを感じる経営者は多いです。
でも、撤退は「失敗」ではなく「経営判断」
だと思っています。
早期に撤退したことで、
残ったリソースを本業に集中させ、
その後に大きく伸びた会社を何社も見てきました。
逆に、撤退を先送りにし続けて、
黒字事業まで傾いてしまった
ケースも知っています。
感情が邪魔をして、決断が遅れることはあります。
でも、意識しているかどうかで、
判断のスピードは変わります。
撤退は、次のチャレンジへの
リソースを守る行為です。
不採算部門を切り捨てた先に、
会社の本当の強みが見えてくることがあります。
まず、自分の事業を「単体」で見てみる
今月、一度だけ
事業別・部門別の損益を単独で見てみてください。
全社合計ではなく、
事業ごとの数字を切り分けること。
補填込みの「全体黒字」ではなく、
それぞれの事業が単体で
成立しているかを確認すること。
もし赤字の事業があれば、
「なぜ赤字か」を一言で言語化してみてください。
価格なのか、コストなのか、需要なのか。
言語化できない赤字は、判断もできません。
まず現状を見ることが、最初の一歩です。
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