先が読めない経営者ほど、経営計画を持っている

「先のことなんて誰にもわからないのに、
計画って意味あるんですか?」
「うちは先が読みにくいから、
経営計画を立てるのは難しいです。」
経営計画のご相談を受けていると、
こう聞かれることがよくあります。
正直、この質問には毎回同じことを思います。
先のことがわかるなら、計画なんて要らない。
わからないからこそ、必要なんです。

計画の本質は「当てる」ことじゃない

計画というと、
「未来を予測すること」だと思われがちです。
だから「予測できないなら意味がない」となる。
でも、本質はそこじゃありません。
経営学者ドラッカーは、
未来を予測しようとすることを
夜、ライトをつけずに
田舎道を運転するようなものだ
と表現しました。
前を照らさずに運転しても、
事故が起きるだけです。
一方でドラッカーはこうも言っています。
未来を予測する最良の方法は、
それを創造することだ。
計画とは、当てるものではなく、
自分がつくりたい未来を、先に決めてしまうこと。
そのための基準を持つことなんです。

250年先が見えていたわけじゃない

計画というと、
「見通しが立っている人が立てるもの」
というイメージもあります。
でも、そうとも限りません。
パナソニックの創業者・松下幸之助は、
1932年、まだ会社が小さかった頃に、
250年計画を社員の前で発表しています。
250年を10節に分け、
1節25年を
建設10年・活動10年・貢献5年に分ける。
正直、当時の松下幸之助に、
250年後の景色が見えていたはずがありません。
戦争も、高度成長も、
その先の時代も、誰にもわかりません。
それでも計画を立てた。
見えているから立てるのではなく、
見えていないからこそ、基準を先に置く。
これは、僕たちの1年の経営計画にも
そのまま当てはまる話だと思っています。

気付きは、対話の中で生まれる

ある社長との面談で、こんな場面がありました。
「今期、思ったより利益が出なかったんです」
とその方はおっしゃいました。
僕はすぐに理由を説明せず、こう聞きました。
「期首に立てた計画、覚えていますか?」
「……あ、そういえば売上はほぼ計画通りでした」
「では、何が違ったんでしょうね」
しばらく考えたあと、
その方は自分で気づかれました。
「そうか、人を採用したタイミングが
計画より早かった。
だから固定費が先に増えたんですね」
僕は答えを教えたわけではありません。
計画という基準があったから、
ご本人が自分でズレに気づくことができた。
これがうちの提供したい
価値の一つだと思っています。
答えを渡すことより、気付きの時間を作ること。
計画がなければ、この対話は成立しません。
「なんとなく厳しかった」で終わっていたはずです。

PDCAのCheckは、計画がないと機能しない

計画を持たずに経営している会社を、
何社も見てきました。
そういう会社の面談は、だいたいこうなります。
「今月、忙しかったですね」
「来月は少し落ち着きそうです」
数字は動いているのに、
その数字が良いのか悪いのかを測る物差しがない。
一方、計画がある会社の面談はこうです。
「今月、計画より150万円下振れています」
「広告費を計画通り使ったのに、
反響が想定の半分でした」
同じ「忙しい月」でも、
後者は次の一手にすぐつながります。
計画とは、
Doの結果を「良い・悪い」に変換する物差しです。
物差しがなければ、
Doをどれだけ繰り返しても、
Checkは始まりません。
ただ忙しく動いているだけで、一年が終わります。

ズレを、翌日には見えるようにする

稲盛和夫氏がJALを再建したときの話は有名です。
倒産直後のJALは、
計画を発表しては未達を繰り返していました。
計画はあっても、実行する仕組みがなかった。
稲盛氏が持ち込んだのは、
路線ごと、便ごとに、
翌日には採算がわかるという管理の仕組みでした。
ズレを1ヶ月後や半年後に知るのではなく、
翌日に知る。
これによって、社員一人ひとりが
自分の数字と計画とのズレに、
日々向き合うようになった。
JALはその後、
わずか2年8ヶ月で再上場を果たしています。
大きな組織でなくても、この考え方は同じです。
計画より良かったときも、悪かったときも、
ズレに気づくのが早いほど、打てる手も増える。
上振れも下振れも、
失敗のサインではなく、
現実を見るための材料です。

正直に言うと

うちの事務所も、毎年計画通りにはいきません。
やろうとしていた新サービスが、
形にならないまま止まったこともあります。
コロナのように、
計画のどこにも書いていなかった
事態が起きたこともあります。
それでも、計画があったから、
「何が想定と違ったのか」を
その都度、振り返ることができました。
もし計画がなければ、
頓挫したことにも、コロナのせいにしたことにも、
理由をつけて終わっていた
と思います。

ズレを、気付きに変える

計画と実績がズレるのは当たり前です。
大事なのは、当てることじゃない。
ズレから何を学ぶか。
松下幸之助も、稲盛和夫も、
未来が見えていたわけじゃありません。
やったのは、
先に基準を置いて、ズレを見続けたことだけです。
今期の数字を、まだ決めていないなら、
今日、ひとつだけ決めてください。
今期、いくらで着地したいか。
そして月に一度、その数字と現実を並べてみる。
合っているかどうかは関係ありません。
ズレた場所にこそ、次の一手が隠れています。

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この記事を書いた人

新美 敬太のアバター 新美 敬太 代表税理士

「経営を楽しむ」という想いを大切に、日々経営者の皆さまと向き合っています。
税務・会計だけでなく、同じ目線で悩みや挑戦を共有しながら、一緒に考え、進んでいくことを大切にしています。
私自身も一人の経営者として、まだまだ成長の途中です。
だからこそ、うまくいくことも、迷う時間も、すべて含めて寄り添える存在でありたいと思っています。
経営の中にある楽しさや可能性を感じていただけるように。
これからも、皆さまと一緒に歩んでいきます。

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