インボイス、また変わりました。外注費110万円で負担はいくら増える?

「インボイス、複雑すぎませんか?」
最近、顧問先との会話でよく出てくる言葉です。
「8割控除とか2割特例とか、もう何が何だか」
「食品の消費税の話も出ているし、
どうせまた変わるんでしょ」
10月から、インボイスのルールが
また一つ変わりました。
でも、何が変わったのかを説明できる経営者は、
多くないと感じます。 それも無理はありません。
ただ、今回の改正は一言でいえば、
実はシンプルです。
今日は、数字を一つだけ使って整理してみます。

変わったのは「下がり方」と「終わる時期」

まず、消費税の仕組みからです。
ざっくり言うと、消費税は引き算です。
お客さんから預かった消費税から、
自分が仕入れや外注で払った消費税を引く。
その残りを、国に納めます。
この「払った分を引く」ことを、
専門用語で仕入税額控除といいます。
ところが、インボイスが始まってから、
インボイスを出せない相手、
つまり免税事業者に払った消費税は、
この引き算に使えないルールになりました。
とはいえ、いきなりゼロにすると
影響が大きすぎる。
そこで、しばらくは
一部だけ引いていい
ことになっています。
これが経過措置です。
よく聞く「80%」という数字は、
「払った消費税のうち、80%までは引いていい」という意味です。
今回変わったのは、
この割合の下がり方と終わる時期です。
改正前は、80%から50%、そしてゼロへ。
2029年9月で終わる予定でした。
改正後は、80%から70%、50%、30%、
そしてゼロへ。
2026年10月から2年間が70%。
2028年10月から2年間が50%。
2030年10月から1年間が30%。
2031年10月以降はゼロです。
一気に下がるのではなく、なだらかになった。
そして、終わりが2年延びました。
なお、1つの免税事業者からの
仕入が年1億円を超える部分は、
経過措置の対象外になりました(改正前は10億円)。
ただ、中小企業で
ここに当てはまるケースは稀です。

110万円の外注費で考える

ここからは、数字で見てみます。
たとえば、ある会社が免税事業者のデザイナーに、
年間で税込110万円の外注をしているとします。
このうち、消費税にあたる部分は10万円です。
この10万円のうち、引き算に使える額はいくらか。
80%の時期なら、8万円。
70%なら、7万円。
50%なら、5万円。
30%なら、3万円。
そして最後は、ゼロ。
裏返すと、引けなかった分は
会社の負担
になります。
2万円、3万円、5万円、7万円、そして10万円。
10月からの差は、年間で1万円です。
数字だけ見れば、小さく感じるかもしれません。
でも、見ておきたいのは目の前の1万円ではなく、
ゴールがゼロだということです。
自社の免税事業者との取引額に置き換えれば、
影響はすぐに計算できます。
取引額が10倍なら、負担も10倍です。

制度は、もっとシンプルでいい

ここからは、税理士としての僕の本音です。
今回のように控除割合をなだらかにする配慮は、
小さな事業者を守るためのもので、
意味があると思っています。
ただ、インボイスは
当初の設計から何度も姿を変えています。
始まる前に、2割特例や少額特例が加わりました。
始まってからも、見直しが続いています。
そして今回は、80%の次が70%。
個人事業者向けの2割特例の次には、3割特例。
上限は10億円から1億円へ。
税率が変わる話が出れば、
またレジや会計の設定を見直すことになります。
おそらく、これからもまだ変わるでしょう。
一つひとつは善意の調整でもあります。
でも、積み重なると現場の負担になります。
専門家である僕たちでも、
追いかけ続けるのは簡単ではありません。
経営者の方が「複雑すぎる」と感じるのは、
当然だと思います。
制度は、もっとシンプルでいい。
そう思っています。
ただ、ここで嘆いていても制度は変わりません。
変わり続ける前提で、
細かいルールに振り回されないこと。
そのために、自分たちで
本質を押さえておく
ことが大事です。

でも、本質は税額ではない

80%か、70%か。
つい、この数字に目が行きます。
でも、本質はそこではありません。
これは控除率の問題ではなく、
取引先との関係と値決めの問題です。
免税事業者との取引について、
会社が取れる選択肢は、大きく三つです。

  • インボイスの登録をお願いする
  • 価格を見直す
  • 負担を受け入れて、そのまま続ける

どれが正解かは、会社によって違います。
その取引先とどれだけ長く付き合ってきたか。
代わりがいるのか、いないのか。
相手の事業規模や、登録した場合の負担はどうか。
一つだけ気をつけたいのは、
一方的に値下げを通知することです。
取引の条件によっては、
取適法(旧下請法)や独占禁止法の観点から、
問題になり得ます。
大事なのは、負担を「誰がかぶるか」ではなく、
「どう分け合うか」を話せる関係かどうかです。
制度が変わるたびに、取引先と率直に話せる。
その関係があれば、
この先ルールが何度変わっても慌てずに済みます。

まずは、免税事業者との取引を一覧にしてみる

では、何から始めればいいか。
まずは、免税事業者との取引を
一覧にしてみる
ことです。
取引先の名前。 年間の取引額。
インボイスの登録の有無。
これだけで十分です。
一覧にしてみると、 影響が大きい取引先と、
気にしなくていい取引先が、はっきり分かれます。
話し合うべき相手も、自然と見えてきます。
控除はなだらかに下がりますが、最後はゼロです。
猶予が延びたのは、
準備する時間が延びたということでもあります。
複雑な制度ほど、
自社の数字に落とすとシンプルになります。
制度は複雑でも、考えることはシンプルに。


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この記事を書いた人

新美 敬太のアバター 新美 敬太 代表税理士

「経営を楽しむ」という想いを大切に、日々経営者の皆さまと向き合っています。
税務・会計だけでなく、同じ目線で悩みや挑戦を共有しながら、一緒に考え、進んでいくことを大切にしています。
私自身も一人の経営者として、まだまだ成長の途中です。
だからこそ、うまくいくことも、迷う時間も、すべて含めて寄り添える存在でありたいと思っています。
経営の中にある楽しさや可能性を感じていただけるように。
これからも、皆さまと一緒に歩んでいきます。

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