先日、東京商工リサーチが
2026年度上半期(4〜9月)の
企業倒産を発表しました。
件数は5,373件。
前年同期比3.8%増で、5年連続の増加。
13年ぶりの高水準です。
昨日の記事↓で、最低賃金は上がり続け、
『最低賃金1,177円。追われる会社は生き残れない』

人件費は固定費として積み上がっていく
という話を書きました。
その流れは、もう倒産の数字に表れています。
「うちは黒字だから大丈夫」
そう思っている方も多いと思います。
でも、本質は利益が
出ているかどうかではありません。
現預金が続くかどうかです。
人件費・物価・金利、3つの圧力が同時に来ている
今回の倒産データを見ると、
会社を苦しめている圧力は大きく3つあります。
1つ目は、人件費です。
「人手不足」関連倒産は240件で、
過去最多を更新しました。
内訳は、「人件費高騰」が130件、
「従業員退職」が67件、「求人難」が43件。
中でも人件費高騰が半分以上を占めています。
2つ目は、物価です。
「物価高」倒産は436件で、円安局面で最多。
中東情勢による原油高、
一時1ドル157円台まで進んだ円安。
仕入れも、エネルギーも、
あらゆるものが上がっています。
3つ目は、金利です。
日銀は9月、政策金利を
1.25%程度に引き上げました。
31年ぶりの水準で、
今後も利上げを続ける方針です。
一方で、コロナ禍のゼロゼロ融資を
受けた後の倒産は、3年連続で減少しています。
つまり、倒産の理由が変わったということです。
「コロナの借金が返せない」から、
「毎月のコスト増に耐えられない」へ。
そして今、よく聞くようになった言葉が
「賃上げ疲れ」です。
上げなければ、人が辞めていく。
上げれば、資金が続かない。
どちらを選んでも苦しい、挟み撃ちの状態です。
「人にかかるお金」は、給与だけでは終わらない
人件費の話をすると、
多くの方は最低賃金や昇給を思い浮かべます。
でも、実際に上がっていくのは
給与だけではありません。
まず、最低賃金。
昨日書いたとおり、
毎年50円台で上がり続けています。
次に、定着のための賃上げ。
最低賃金に合わせるだけでは、
人は残ってくれません。
辞めてもらわないための上乗せが必要になります。
さらに、環境整備。
働きやすい職場づくり、福利厚生、設備、教育。
選ばれる会社であり続けるにも、
お金がかかります。
そして、採用費。
人が採れない中で、
1人を採るためのコストも上がっています。
どれも、一度始めたら止めにくいものです。
つまり、どれも「来年もかかるお金」です。
だからこそ、少しずつの対応では追いつきません。
昨日書いたように、
圧倒的な利益と人件費の構造を変える、
抜本的な変化が必要です。
そして、その変化も計画に落とし込まなければ、
実行できません。
倒産は損益ではなく、資金繰りで起きる
ここで、改めて押さえておきたいことがあります。
会社は赤字で潰れるのではなく、
現預金がなくなって潰れるということです。
人件費・物価・金利。
この3つの圧力は、
どれも毎月の現預金を削ります。
給与は毎月、必ず出ていく。
仕入値が上がれば、先に払うお金も増える。
金利が上がれば、利息の支払いも重くなる。
一方で、値上げや構造改革の効果は、
交渉や準備を経て、遅れて入ってきます。
先に出ていくお金と、後から入ってくるお金。
この時間差が、現預金を少しずつ削っていきます。
例えば、こんな場面です。
決算書は黒字。
でも、給与日が近づくと、
通帳の残高を何度も確認してしまう。
損益の数字と、手元の感覚が合わない。
多くの場合、この違和感の正体は資金繰りです。
手元現預金は「未来の固定支出」の6か月分
では、どれくらいの現預金があれば安心なのか。
僕がいつもお伝えしている目安は、
固定支出の6か月分です。
ただし、大事なポイントがあります。
その固定支出は、
過去ではなく未来で計算することです。
例えば、去年の固定支出が
月800万円だったとします。
6か月分なら4,800万円。
手元に5,000万円あれば、
足りているように見えます。
でも、来年はどうでしょうか。
最低賃金の上昇、定着のための賃上げ、
環境整備や採用費、利上げ後の利息。
これらを織り込んで、
固定支出が月900万円になるとしたら。
必要な現預金は5,400万円です。
去年の数字では足りていても、
来年の数字では足りない。
顧問先でも、過去の決算書を見て
「半年分はあるから大丈夫」
と考える方は少なくありません。
でも、上がり続ける時代に
過去の数字で安心するのは、
一番危ない判断だと思っています。
精緻な損益計画とそれに連動した資金繰り表
では、未来の固定支出はどう出すのか。
勘や感覚では出せません。
人にかかるお金の上昇。
仕入れ値や物価の動き。
金利と返済。
そして、値決めの見直しや
AI・仕組みへの投資といった抜本的な変化。
これらをすべて織り込んだ
精緻な損益計画とそれに連動した資金繰り表。
これがあって初めて、
「6か月分あるか」
「変化に投資できる余力があるか」
が判断できます。
損益計画だけでは、資金の流れは見えません。
資金繰り表だけでは、
なぜそうなるのかが見えません。
2つが連動して、
はじめて未来の現預金が見えるようになります。
来年の固定支出で、6か月分を引き直す
最後に、一つだけ
やってみてほしいことがあります。
来年の人件費、採用費、家賃、利息、返済。
来年の見込みで固定支出を出し、
今の手元現預金が何か月分あるかを確認してみる。
6か月に届かないなら、
それは今すぐ危ないという意味ではありません。
変化に向けた手を、
いつ打つかを決めるタイミングだということです。
倒産のニュースは、
どこか遠い話に聞こえるかもしれません。
でも、その多くは突然ではなく、
現預金が少しずつ削られた結果です。
数字で未来を見ておくこと。
それが、上がり続ける時代を乗り切る
一番の備えだと思っています。
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