スポーツ観戦でスタジアムに行ったものの、
何が起きているのか、よくわからなかった。
そんな経験はないでしょうか。
歓声が上がる。
周りが立ち上がる。
でも、なぜ盛り上がっているのかがわからない。
一方で、事前にネットや新聞でチームの状況や
注目選手を調べてから行くと、
同じ試合が格段に面白くなります。
現場は一番リアルです。
でも、現場に行けば全部わかる、
というわけではありません。
むしろ、現場の価値を何倍にもしてくれるのは、
現場の外の情報です。
現場に行っただけでは、わからない
スタジアムには、
テレビでは味わえないものがあります。
空気感。音。熱量。選手との距離の近さ。
五感で受け取る情報は、圧倒的です。
でも、スタジアムにいても
見えないものがあります。
このチームが今、順位争いのどこにいるのか。
あの選手が最近、調子を落としていること。
この試合が、シーズンの中で
どんな意味を持つのか。
こうした背景は、現場にいるだけでは
入ってきません。
事前情報があると、現場の見え方が変わります。
あの選手の一本のヒットに、なぜ球場が沸くのか。
それを知っているかどうかで、
同じ場面から受け取れるものがまったく違う。
同じものを見ていても、持っている情報によって、
見えるものは変わるのです。
斜陽と言われるテレビ中継の価値
最近は「テレビ離れ」という言葉もよく聞きます。
それでも、スポーツ中継には
中継の強みがあります。
リプレイ。別アングルの映像。
選手やチームのデータ。解説者の一言。
テレビ中継は、現場では取れない情報を集めて、
編集して、届けてくれるメディアです。
スタジアムの最前列にいても、
今のプレーをスローで見返すことはできません。
ネットには、速報性と深掘りがあります。
新聞には、整理された背景と文脈があります。
メディアごとに、得意な情報が違う。
どれが優れている、という話ではありません。
どのメディアも、
情報を取りにいく手段の一つです。
ビジネスには、中継も事前情報も用意されていない
スポーツには、誰かが情報を集めて
届けてくれる仕組みがあります。
でも、ビジネスにはそれがありません。
現場は、現場で見えている情報だけで判断して、
仕事が進んでいくことがよくあります。
たとえば、こんな場面です。
取引先との打ち合わせに、
相手の会社の最近の動きをほとんど調べずに臨む。
話してみると、相手は新しい事業を始めていて、
こちらの提案はかみ合わなかった。
少し調べれば、ホームページや
ニュースに出ていた情報です。
これは、誰かの怠慢というより、構造の問題です。
目の前の仕事に集中しているほど、
現場の外の情報は入ってこなくなります。
経済学には、情報の非対称性
という言葉があります。
立場によって、持っている情報が
違う状態のことです。
組織の中にも、この非対称性は
あちこちにあります。
現場の人は、事実を持っている。
でも、全体像や背景は持っていないことが多い。
一方で、上の立場の人は、
現場にいないことが多い。
だから、全体は見ていても、
現場の事実を持っていない。
どちらも、片方の情報しか持っていないのです。
でも、本質は「情報は取りにいくもの」
ここで大事なのは、誰かが情報を
届けてくれるのを待たないことです。
スポーツなら、テレビ局が
中継をつくってくれます。
でも、ビジネスでは、
誰も自分のために中継をつくってくれません。
情報は、取りにいくものです。
現場の人は、現場の外の情報を取りにいく。
現場にいない人は、現場の情報を取りにいく。
幸い、今は取りにいく手段がたくさんあります。
打ち合わせ前の事前情報は、
ネット検索やAIを使えば短時間で集められます。
相手の会社の概要、業界の動き、最近のニュース。
数分の準備で、現場の見え方は変わります。
クラウドの会計ソフトや共有ツールを使えば、
離れた場所にいても数字や進捗を見にいけます。
いわば、自分専用のリアルタイム中継です。
AIは、散らばった情報を
整理して意味づけしてくれる、
解説者のような役割も果たしてくれます。
ただし、どれも置いてあるだけでは
意味がありません。
ツールは、取りにいく人がいて初めて機能します。
一つのメディアだけでは、偏る
もう一つ、気をつけたいことがあります。
一つのメディアだけに頼ると、
見え方が偏ることです。
テレビだけ。ネットだけ。AIだけ。
どれか一つに頼ると、
そのメディアが得意な情報しか入ってきません。
特にネットやAIは、
自分の関心や
問いの立て方に寄った情報が集まりやすい。
便利な分、気づかないうちに偏ります。
そして、現場だけでも、やはり偏ります。
現場で見たものは、たしかにリアルです。
でも、それは一つのアングルから見た景色です。
スタジアムに行くと、
イヤホンでラジオ中継を聞きながら
試合を観ている人がいます。
目の前の熱量は、現場で。
プレーの解説は、ラジオで。
チームの背景は、事前に読んだ記事で。
一つひとつのメディアには偏りがあっても、
重ねれば全体が見えてくる。
そして、その中心にあるのは、やはり現場です。
いろいろな情報を組み合わせた現場が、
最強なのです。
僕自身も、ここはまだできていません。
気づくと、使い慣れたツールや、
いつも見ている情報源ばかりに頼っている。
意識していないと、
情報の取り方は少しずつ狭くなっていきます。
次の現場の前に、一つだけ調べていく
難しいことをする必要はありません。
次の打ち合わせや会議の前に、
普段使わない情報源を一つ、当たってみる。
相手の会社のホームページ。
業界のニュース。
あるいは、関係する部署の担当者への一言。
そして、現場に行ったら、
現場でしか取れない情報を取りにいく。
相手の表情。空気感。言葉の温度。
事前に取りにいく情報と、
現場でしか取れない情報。
その両方を持って現場に立つ人が、
一番よく見えている人です。
冒頭の、なぜ歓声が上がったのか
わからなかったスタジアム。
少し情報を取りにいってから行けば、
あの瞬間、周りと一緒に立ち上がれたはずです。
ビジネスの現場も同じです。
情報は、待っていても来ません。
取りにいった人にだけ、
現場は本当の姿を見せてくれます。
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