失敗はない、フィードバックがあるだけ

お客様からのメッセージに、
返信が遅れてしまうことがあります。
ひどいときは、返信そのものを忘れてしまう。
そのたびに「またやってしまった」
と自己嫌悪に陥っていた時期がありました。
でも、あるとき気づいたんです。
本質はそこじゃない、と。
「失敗はない、フィードバックがあるだけ」
コーチングを学ぶ中で出会った、
NLP(神経言語プログラミング)の言葉です。
返信を忘れた。それは失敗ではなく、
「通知の仕組みが足りていなかった」
というフィードバック
です。
自己嫌悪で終わるのではなく、仕組みを直す。
それだけのことです。
この言葉に出会ってから、
組織のマネジメントにも同じ考え方が使える
と思うようになりました。

「失敗」と呼んだ瞬間、人は止まる

失敗という言葉には、
「終わり」のニュアンスがあります。
失敗した。それで完結する。
そこから先に思考が続きにくくなる。
でも、フィードバックと言い換えると
意味が変わります。
「何かが起きた。そこから何かが判明した。
次に活かせる情報がある。」
失敗は過去の話で、変えられません。
フィードバックは未来への情報で、使える。
同じ出来事でも、どちらの言葉で捉えるかで、
その後の行動がまるで変わります。
そして、組織の中でリーダーが
どちらの言葉を使うか
が、
チームのチャレンジ量を直接左右します。
「あの上司に報告すると失敗扱いされる」
と感じた瞬間、人は報告を遅らせ、
隠し、最終的には挑戦しなくなります。

フィードバックとして捉えるとは、具体的にどういうことか

たとえば、スタッフが新しい提案をした。
やってみたが、うまくいかなかった。
このとき、上司の最初の一言で次が決まります。「
「なんでこうなったの?」と聞く上司のもとでは、
スタッフは原因の説明に全力を使います。
頭の中は「どう言い訳するか」で埋まり、
その場を乗り越えることが目的になります。
上司のもとを離れた後に残るのは、
怒られた記憶と、
次はやらないでおこうという感覚です。
「改善策は何だと思う?」と聞く上司のもとでは、スタッフは次をどうするかを考え始めます。
自分で答えを出そうとするから、
当事者意識も生まれる。
上司のもとを離れた後に残るのは、
次やってみようという意欲です。
起きた出来事は同じです。
でも組織に残るものがまったく違う。
この差が、半年・一年のスパンで、
チームのチャレンジ量として出てきます。

経営者・管理職が無意識にやっている「失敗の固定化」

意図していなくても、
失敗を固定化してしまう言動があります。
本人は気づいていないことがほとんどです。
言葉で固定化するケースはわかりやすいです。
「なんでこうなったの?」は
原因を断定させる問いになり、
「次はちゃんとやって」は
改善のヒントがゼロのまま終わる言葉です。
どちらも悪意はない。
でも受け取った側には、
責められたという記憶だけが残ります。
やっかいなのは沈黙で固定化するケースです。
何も言わない、特に反応しない。
このとき本人は一人で
「やっぱり失敗だったんだ」と結論を出します。
言葉より、沈黙の方が深く刺さることがあります。そして最も気づきにくいのが
空気で固定化するケースです。
言葉は「大丈夫だよ」と言っている。
でも表情やトーンが「なんでやねん」になっている。
人は言葉よりも非言語の情報を
優先して受け取るので、
言葉だけ変えても伝わらないことがあります。
一貫性がなければ、スタッフは混乱し、
結局「失敗だと思われている」
という結論に落ち着きます。

聞き方が、組織をつくる

リーダーの仕事の中で、
これほど軽視されているのに、
これほど重要なものはない
と思っているものがあります。
それが、聞き方です。
コーチングを学ぶ中でNLPに出会い、
コミュニケーションを介する仕事や組織において、言葉の使い方がいかに相手の思考を左右するかを
改めて実感しました。
「なんで?」と「改善策は何だと思う?」は、
意味がまったく違います。
「なんで?」と聞かれた瞬間、
人は過去に向かいます。
言い訳を探し、どう説明すれば
怒られないかを考え始める。
「改善策は何だと思う?」と聞かれた瞬間、
人は未来に向かいます。
次にどうすればいいかを考え、
自分で答えを出そうとする。
この積み重ねがチームの空気をつくります。
「ミスをしても、次をどうするかを
一緒に考えてもらえる」という感覚が広がると、
報告が早くなり、相談が増え、
自分から動く人が増えていく。
聞き方は、テクニックではありません。
「この人はどこを見ているか」が、
言葉ににじみ出るものです。

だからこそ聞き方を変えることは、
自分のマネジメントの
姿勢を変えることでもあります。

「改善策が生まれる仕組み」をつくる

税理士法人しんこう会計では、このカルチャーを
仕組みとして定着させようとしています。
その一つが、委員制度です。
品質管理・ミス防止から
業務改善・効率化まで、
横断的なテーマで委員を置き、
専門知識や経験年数に関わらず
委員を任せています。
その分野に詳しいからではなく、
当事者として改善を考える立場に
立ってもらうことに意味がある
と思っているからです。
狙いは、ミスが起きたとき
「失敗で終わらない」構造をつくること
です。
担当委員を中心に改善策を出す流れを
あらかじめ決めておくことで、
ミスが発生した瞬間から「次どうするか」
が動き始めるように設計しています。
一つのミスを、チーム全体の
仕組み改善につなげたい。
そういう意図で回しています。
ただ正直に言うと、まだ完璧に
機能しているわけではありません。
言葉ではフィードバックと言いながら、
自分の表情や反応で「失敗だ」
と伝えてしまうことがまだあります。
それでも意識しているかどうかで、
組織の空気は確実に変わってきます。
「失敗を責めない文化」は、
宣言するものではなく、
日々の反応と仕組みで積み上げるものです。

今日、言葉を一つ変えてみる

次にスタッフのミスを聞いたとき、
最初の一言を変えてみてください。
「なんで?」ではなく、
改善策は何だと思う?
それだけでいい。
フィードバックとして受け取る文化は、
大きな制度や研修より、
日々の小さな問いの積み重ねでできています。
チャレンジする組織は、
そういうところからつくられます。


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この記事を書いた人

新美 敬太のアバター 新美 敬太 代表税理士

「経営を楽しむ」という想いを大切に、日々経営者の皆さまと向き合っています。
税務・会計だけでなく、同じ目線で悩みや挑戦を共有しながら、一緒に考え、進んでいくことを大切にしています。
私自身も一人の経営者として、まだまだ成長の途中です。
だからこそ、うまくいくことも、迷う時間も、すべて含めて寄り添える存在でありたいと思っています。
経営の中にある楽しさや可能性を感じていただけるように。
これからも、皆さまと一緒に歩んでいきます。

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