AIで効率化しても、会社のお金は増えない

先日参加したセミナーで、
「アメリカの企業は、
売上の5%をAIに投資している」
という話を聞きました。
売上3億円の会社なら、1,500万円。
なかなかの金額です。
気になって調べてみると、
世界の大企業を対象にした調査では、
売上の約1.7%という数字でした。
5%には届きませんが、
それでも前の年から倍増しています。
数字はさておき、海外ではすでに
AIに売上の何%を投資するか
という発想で考えている。
では、日本はどうなのか。
今日は、AIへの投資の
考え方について書いてみます。

日本と海外、AI投資の差

まず、国全体で見てみます。
2025年に、AI企業へ民間から投資されたお金は、
アメリカが約2,859億ドル。
日本は約11億ドルでした。
アメリカは日本の約260倍。
桁が2つ違います。
ただ、面白いのはここからです。
大企業でAIを「使っている」割合は、
日本が87%、アメリカが90%。
ほとんど変わりません。
差が出たのは、成果です。
「期待を大きく上回る効果があった」
と答えた会社は、 アメリカが38%に対して、
日本は9%。 約4倍の差です。
使っている割合は同じ。
でも、成果は大きく違う。
この差は、どこから来るのか。
僕は、投資の「中身」の違いだと考えています。

守りの投資と、攻めの投資

投資には、大きく分けて2種類あります。
守りの投資と、攻めの投資です。
家計で例えてみます。
電気代を下げるために、
省エネのエアコンに買い替える。
これが守りの投資です。
出ていくお金を減らすための投資。
一方、収入を上げるために、
資格の勉強にお金を払う。
これが攻めの投資です。
入ってくるお金を増やすための投資。
どちらも大切です。
ただ、守りの投資には限界があります。
電気代は、どれだけ頑張っても
ゼロより下にはなりません。
攻めの投資には、その上限がありません。
会社のAIに置き換えると、こうなります。
守りのAI投資は、
請求書の入力や議事録を、AIに任せること。
攻めのAI投資は、AIを使って、
これまでできなかったサービスを始めること。
たとえば工務店なら、
打ち合わせのその場で完成イメージと
概算見積りを出して、成約率を上げる。
飲食店なら、外国語での案内や
予約対応をAIに任せて、
これまで取りこぼしていたお客様を取り込む。
ドラッカーは、
企業の目的は顧客の創造だと言いました。
そして、そのための基本的な機能は
マーケティングと
イノベーションの2つだけだ、とも。
コスト削減は、そのどちらにも入っていません。
AIも、顧客を生み出す方向に使えているか。
攻めの投資とは、そういうことだと思います。
日本企業のIT投資は、昔から守りが中心で、
アメリカは攻めの割合が高いと言われてきました。
AIでも、同じことが起きているように見えます。

聞こえてくるのは、効率化の話ばかり

実際、いろいろなセミナーに出たり、
経営者の方の話を聞いたりしていても、
出てくるのは効率化の話がほとんどです。
素晴らしい事例も、たくさん聞きます。
でも、よく聞くとその多くは
今やっている作業を、AIにやってもらう内容。
守りの投資です。
もちろん、効率化は悪いことではありません。
うちの事務所でも、面談の文字起こしから
議事録をつくるところから始めました。
ただ、ここで一つ、
経営者として冷静に見ておきたいことがあります。
効率化しても、固定費は変わらない。
AIで作業時間が月20時間減ったとします。
でも、スタッフの給料は同じ。
事務所の家賃も同じ。
そこに、AIの利用料が上乗せされます。
固定費は、むしろ上がるのです。
だから、効率化で終わらせるなら、
空いた時間で、どう価値を生み出すか
まで決めておかないといけません。
お客様との面談を増やすのか。
新しいサービスの準備に充てるのか。
そこまで決めて、はじめてお金が返ってきます。

でも、本質は「最初からAIで価値を生み出す」こと

ここまで書いて、思うことがあります。
効率化して、時間を空けて、
その時間で価値を生み出す。
この順番は、正しいけれど遠回りです。
でも、本質は最初からAIで価値を生み出す
という発想なのではないかと。
「この作業をAIに任せられないか」ではなく、
「AIがあれば、お客様に何を新しく届けられるか」から考える。
経済学者のシュンペーターは、
イノベーションを新結合と呼びました。
新しい技術そのものではなく、
技術と、商品や売り方や市場との
新しい組み合わせが価値を生む、
という考え方です。
AIも同じで、
自社の強みとAIをどう組み合わせるかが、
攻めの出発点になります。
さっきの工務店の例でいえば、
見積り作業を楽にするところから入るのか、
「その場で見積りが出る」という価値から入るのか。
同じAIでも、出発点が違うと、
たどり着く場所がまったく変わります。
中小企業は、大企業のように
大きな予算は出せません。
でも、意思決定は速い。
小さく試して、価値になったものを広げる。
これは、むしろ中小企業の方が得意なはずです。
うちの事務所も、今はまだ効率化が中心です。
最初からAIで価値をつくる発想は、
これからの課題だと思っています。

「減らすもの」ではなく「増やすもの」を書く

今、会社で払っているAIの利用料を
並べてみてください。
その横に、「これで何が減ったか」ではなく、
「これで何が増えたか」を書いてみる。
お客様の数なのか。
提案の数なのか。
新しいサービスなのか。
何も書けなければ、 それはまだ守りの投資です。
AIは、使うかどうかの時代から、
AIで何を生み出すかの時代に入っています。


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この記事を書いた人

新美 敬太のアバター 新美 敬太 代表税理士

「経営を楽しむ」という想いを大切に、日々経営者の皆さまと向き合っています。
税務・会計だけでなく、同じ目線で悩みや挑戦を共有しながら、一緒に考え、進んでいくことを大切にしています。
私自身も一人の経営者として、まだまだ成長の途中です。
だからこそ、うまくいくことも、迷う時間も、すべて含めて寄り添える存在でありたいと思っています。
経営の中にある楽しさや可能性を感じていただけるように。
これからも、皆さまと一緒に歩んでいきます。

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