「企業の6割が赤字らしいですね」
「景気も悪いし、今は動かないほうがいいですかね」
経営者の方から、こんな声を聞くことがあります。
ニュースで強い言葉を見ると、
自社も危ないのでは、と感じる。
自然な反応だと思います。
でも、本質は
言葉ではなく、数字で確かめることです。
「6割赤字」
「景気が悪い」
「この業種は厳しい」
どれも、数字で確かめると見え方が変わります。
そして、経営を縮める理由は、
思っているほど多くないことに気づきます。
「6割赤字」の出どころ
出どころは、国税庁が毎年公表している
会社標本調査です。
最新の令和6年度分では、法人数は約300万社。
赤字の法人は約181万社。
割合は60.3%。
確かに6割です。
ただ、同じ資料には、こんな数字も並んでいます。
黒字の法人は約119万社で、過去最大。
赤字の割合も、ピークだった
平成21年度の72.8%から見れば、
むしろ下がっています。
倒産件数も並べてみます。
2025年は約1万300件。
2年連続で1万件を超えました。
赤字の会社が約181万社。
倒産は約1万件。
倒産統計は負債1,000万円以上が対象ですが、
それを踏まえても大きな差です。
赤字=倒産ではないことが、
はっきり見えてきます。
だから、まずやることはシンプルです。
気になる数字を見たら、
出どころの資料を一度見にいく。
見出しだけで判断しない。
これが、言葉に振り回されないための一歩目です。
赤字企業の多くは、売上1億円以下
赤字の中身も見ておきます。
日本の会社は、売上1億円以下の会社が
大きな割合を占めています。
この規模の会社では、利益を会社に残さず、
役員報酬として社長個人に
支払うケースが多くあります。
理由は、税率の差です。
会社の利益にかかる税金は、
中小企業でも、おおよそ2割強〜3割強。
一方、社長個人の税金(所得税+住民税)は、
所得が増えるほど税率が上がる累進課税です。
課税所得が数百万円程度なら、15〜30%程度。
さらに役員報酬には、給与所得控除もあります。
そのため、一定の水準までは、
役員報酬で受け取るほうが
会社と個人を合わせた税負担が軽くなるのです。
実際には、社会保険料も含めて判断します。
ただ、役員報酬は原則、
期の途中で変えられません。
売上が見込みを下回ると、
決算上は赤字になります。
こうした赤字は、額が限定的なことがほとんど。
例えば売上3,000万円の会社が、
1億円の赤字を出すことはありません。
「6割赤字」の中には、
税金を考えた結果としての赤字も、
多く含まれているのです。
ここで確かめたいのは、自社の決算です。
赤字なら、
それは役員報酬を含めて考えた結果なのか。
それとも、本業そのものの赤字なのか。
赤字か黒字かではなく、その理由を説明できるか。
ここを押さえるだけで、
数字への不安はかなり減ります。
「景気が悪い」に慣れすぎていないか
「景気が悪い」という言葉も、経営判断を縮めます。
日本は失われた30年と
言われる時代を過ごしてきました。
その中で、
「景気が悪いのが当たり前」という感覚が、
多くの経営者に染みついているように感じます。
では、数字ではどうか。
同じ会社標本調査では、
日本の法人全体の所得金額は約102兆円。
5年連続で増え、過去最高です。
もちろん、物価高や人手不足で
苦しい会社もあります。
ただ、すべての会社が
同じ状況にあるわけではありません。
それなのに、言葉に押されて、
採用は、もう少し様子を見よう。
設備投資は、来期に回そう。
値上げは、言い出しにくい。
一つひとつは慎重な判断に見えます。
でも、慎重と委縮は違います。
慎重は、数字を根拠に動くタイミングを選ぶこと。
委縮は、言葉に押されて動かないこと。
委縮は、目に見える形では起きません。
会社は静かに縮んでいきます。
だから一度、
「景気が悪いから」で止めている判断はないか
を振り返ってみてください。
その根拠が自社の数字なのか、
世の中の空気なのか。
空気が理由なら、
もう一度テーブルに戻していい判断です。
「この業種は今よくない」という思い込み
「うちの業界は今、厳しいから」
業種ごとの話も、同じです。
会社標本調査を業種別に見ると、
令和6年度分で所得金額の
増加率が最も高かったのは、料理飲食旅館業。
前年から64.6%の増加です。
コロナ禍で最も厳しいと言われた業種でも、
利益を大きく伸ばしている会社がある。
どんな時代にも、どんな業種にも、
うまくいっている会社は必ずあります。
だから見るべきは、
業界の平均ではなく、業界の上位。
伸びている会社は、
何を売り、誰に売り、いくらで売っているのか。
平均を見て一喜一憂するより、
上位を見て学ぶほうが、ずっと前に進めます。
判断の軸は、自社の数字
ここまで見てきたように、
言葉と数字には、ズレがあります。
数字に強い経営者は、ニュースの言葉を一度疑い、
出典・母数・定義を確かめます。
そして、最後に確かめるべきなのは
自社の数字です。
日本の6割が赤字でも、自社が黒字なら黒字。
景気がよくても、自社の数字が悪ければ
手を打つ必要がある。
赤字が続けば、手元のお金も減っていきます。
世の中の平均は、
自社の状況を何も語っていません。
具体的には、毎月の試算表で
売上・利益・手元のお金の3つを確認する。
年に一度の決算ではなく、
毎月見ることが大切です。
自社の数字が手元にあれば、
ニュースに揺れても、判断の軸はぶれません。
うまくいっている会社に目を向ける
自社の数字で、現在地を知る。
うまくいっている会社で、行き先を知る。
この二つがそろうと、
言葉に流されない判断ができます。
気になる数字を見たら、まず出どころを確かめる。
「景気が悪いから」と止めている判断があれば、
自社の数字で見直してみる。
そして、同じ業種で
うまくいっている会社を一社探してみる。
どれも、今日から始められることです。
一社見つけたら、
何が違うのか。
どこにお金と時間を使っているのか。
そこに、縮まずに動くためのヒントがあります。
どんな時代でも、うまくいっている会社はある。
縮まずに、そこへ向かっていきましょう。
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