「人のせい」にする組織、しない組織

「洗い物、今日中にやるって言ってたよね」
共働きの夫婦の間で、こんなやり取りを
聞いたことはないでしょうか。
直接「なんでやってないの」
とは言っていない。
でも、「言ってたよね」の一言に、
相手の落ち度がしっかり滲んでいる。
これ、実はかなりよく聞く話です。
役割分担はちゃんと決まっているし、
お互い納得しているはずなのに、
何かあると、こういう言い方が出てくる。
「あの人、いつもこうなんだよね」
そう片付けたくなります。
でも、性格の問題と言い切ってしまう前に、
少し立ち止まって考えたいことがあります。
気になって調べてみたら、面白いことが分かりました。
人のせいにするのは、性格の問題ではなく、
人間の初期設定かもしれない

ということです。

「人のせいにする」は人間の初期設定

心理学の世界に、
自己奉仕バイアスという言葉があるそうです。
成功したときは自分の実力のおかげ、
失敗したときは環境や他人のせい。
この帰属のクセは、
特別な性格の人だけに起きるものではなく、
自尊心を守るための、
人間に共通した認知の仕組みだと
説明されています。
実際、スポーツ選手を対象にした研究でも、
勝った選手は負けた選手より、
結果を自分の実力に結びつけやすいことが
分かっているそうです。
一万人以上のアスリートを対象にした
研究でも、同じ傾向が確認されているとのこと。
だとすると、「あの人は人のせいにする人だから」
という捉え方自体、
少し違うのかもしれません。
性格の問題として片付けている限り、
対策のしようがないからです。
本質は、誰にでも起きうる現象を、
組織としてどう扱うか
という話なのだと思います。

家庭では関係修復で終わる話が、組織では止まらなくなる理由

家庭内なら、この現象は
そこまで大きな問題になりません。
気まずい空気が流れても、翌日には話して、
関係が修復されることがほとんどです。
関わっている人数が少ないからです。
でも、組織ではそうはいきません。
人数が増えるほど、
「誰が担当していたか」が曖昧になります。
担当が曖昧なまま何かトラブルが起きると、
関係者全員が
「自分の担当ではない」
と思える余地が生まれます。
この余地があるかぎり、
自己奉仕バイアスは自然に働き続けます。
結果、原因究明ではなく、
責任の押し付け合いが始まる。
これが続くと、報告や相談そのものが
上がってこなくなります。
問題が大きくなってから発覚する。
これが、組織における「人のせいにする」の本当の怖さです。

役割とルールを決める

この現象を防ぐ一つ目の手段は、
役割とルールを、事前に決めておくことです。
よくある場面を、二つ並べてみます。

パターンA:役割が曖昧な組織
トラブルが起きたとき、
「それ、自分の仕事だと思っていませんでした」
という言葉が出てくる。
誰も嘘をついているわけではありません。
本当に、そう思っていたんです。
役割が曖昧だと、
こうした認識のズレがそのまま
言い訳として機能してしまいます。

パターンB:役割とルールが明確な組織
「この判断は、誰が最終責任を持つか」
「何をもって完了とするか」
これが事前に決まっている組織では、
トラブルが起きたときの会話が変わります。
「担当外だった」ではなく、
「どこで判断がズレたか」
という話になります。
役割とルールは、
犯人を決めるためのものではありません。
「自分の担当ではなかった」が
成立しにくい状態を作るためのもの
です。
そうしておくことで、
人のせいにする必要そのものが、
自然と減っていきます。

カルチャー構築

ただ、役割とルールだけでは
カバーしきれない場面があります。
想定していなかった事態が起きたとき、
ルールに書かれていないことは、
結局また誰かのせいにされやすいからです。
ここで支えになるのが、
カルチャーです。
カルチャーとは、ルールが及ばない場面での
判断の拠り所になるものだと、僕は捉えています。
「うちの場合、こういうときはこう考える人が多いよね」
という共通認識があれば、
ルールにない事態でも、
誰かを責める前に、まず状況を一緒に見る、
という動きが生まれやすくなります。
この共通認識のもとになるのが、
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)です。
ただ、MVVというと、きっちり言語化して、
全員が暗唱できる状態をイメージされるかもしれません。
でも、そこまで厳密でなくても大丈夫です。
「うちは、こういうことを大事にしている組織だよね」
というニュアンスが、なんとなく全員に伝わっていれば、
それで十分に機能します。
MVVについては、以前このnoteでも詳しく書いたので、
興味があれば読んでみてください。
記事は下記です↓
「MVVは会社の存在理由。でも中身は意外と軽くていい」

言い訳ではなく、判断が生まれる組織へ

うちの事務所にも、
明文化したMVVがあります。
それでも、何か問題が起きたとき、
誰かを責める前に、まず状況を一緒に見る。
この動きが、
まだ全員に根付いているとは言えません。
MVVはあっても、それが判断の軸として
機能している状態、つまりカルチャーと呼べる状態には、
まだ育てきれていない
と感じています。
それでも、役割とルールを決め、
判断の軸となるMVVを持つこと。
この二つが揃えば、トラブルが起きたときの会話は、
確実に変わります。
「誰のせいか」ではなく、
「どこで判断がズレたか」を話せる組織へ。
そこを目指して、
今日も一歩ずつ進めていければと思います。


YouTube「にいみ税理士のお悩み相談室

YouTube / にいみ税理士のお悩み相談室

日々の会計・税務・経営支援の現場でよくあるお悩みを解決!
さらに、節税のポイント、資金繰り、事業計画のヒントなどをわかりやすく解説しています。
気になる方は、ぜひチャンネル登録もよろしくお願いします!

よかったらシェアお願いします
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

新美 敬太のアバター 新美 敬太 代表税理士

「経営を楽しむ」という想いを大切に、日々経営者の皆さまと向き合っています。
税務・会計だけでなく、同じ目線で悩みや挑戦を共有しながら、一緒に考え、進んでいくことを大切にしています。
私自身も一人の経営者として、まだまだ成長の途中です。
だからこそ、うまくいくことも、迷う時間も、すべて含めて寄り添える存在でありたいと思っています。
経営の中にある楽しさや可能性を感じていただけるように。
これからも、皆さまと一緒に歩んでいきます。

目次