MVVは会社の存在理由。でも、中身は意外と軽くていい。

「MVVなんて、うちには必要ない」
正直に言うと、昔はそう思っていました。
ミッション、ビジョン、バリュー。
なんかの宗教じゃあるまいし、
そんなもの仕事と関係ない、と。
掲げたところで、売上が上がるわけでもない。
現場の仕事は、
目の前のお客様と数字で回っている。
そう思っていました。
でも、事務所経営をする中で、
考えが変わりました。
以前、「戦略より人が先。”組織ありき”の経営をやめない理由」

という記事の中で、
「戦略は変わっていい。
でも、根幹だけはブレない」
と書きました。
その根幹にあたるのが、MVVです。
また、「抽象度は、その人の得意分野への通り道になる」

という記事では、抽象度を上げて任せるほど、
ミッションやビジョンが濃く必要になる

という話も書きました。
指示を細かく出している間は、
実はMVVがなくても組織は一応回ります。
でも、任せる範囲を広げた瞬間、
向かう方向を示すものがないと、
みんなバラバラに動き始めます。
今日は、その「向かう方向を示すもの」
そのものを、正面から掘り下げます。

MVVの言語化とは、「自分の頭の外に出す」作業

MVV(ミッション、ビジョン、バリュー)
の本質は、「どんな会社にしたいか」を
自分の頭の外に出す作業
です。
頭の中にあるだけでは、
それは「なんとなくの想い」でしかありません。
経営者本人ですら、
本当は言語化できていないことが多い。
「良い会社にしたい」
「お客様に喜んでもらいたい」
そう思っていても、
じゃあ具体的にどういう会社なのか、
と聞かれると、答えに詰まる。
これは、決めていないのと同じです。
正直、うちも簡単には言葉になりませんでした。
ミッションである「経営を楽しく、スマートに」
という一文にたどり着くまで、
何度も書き直しています。
きれいな言葉を並べるのは簡単です。
でも、それが本当に自分たちの実感と
一致しているか
を確かめる作業は、
地味で時間がかかります。
納得できる言葉になるまで、
しっくりこない期間がしばらく続きました。
そして、決めていないものは、
当然メンバーには伝わりません。
言語化していない方向性は、
存在しないのと同じ
です。

理念を最初に決めた経営者たち

ドラッカーは、企業経営でまず問うべきは
「我々の事業は何か」だと言っています。
パナソニック創業者で、「経営の神様
と呼ばれる松下幸之助氏も、
若い頃に「水道哲学」を打ち出し、
良い品を安く大量に届けることこそ事業の使命だ、と定義しました。
どちらも、細かい経営判断より先に、
「何のためにこの事業をやるのか」を決めています。
京セラやKDDIの創業者で、
日本航空(JAL)の再建も手がけた稲盛和夫氏は、
社員一人ひとりのベクトルが揃っていないと、
どれだけ優秀な人が集まっても力が分散する、
と語っています。
逆に方向が揃えば、力は掛け算になる。
この話を知ったとき、腑に落ちました。
うちがなんとなく感じていた
「決めないと、みんな別の方向を向く」
という感覚は、
自分だけの思い込みではなかったんだ、と。

言葉を選ぶときに意識したこと

うちの事務所にも
ミッション・ビジョン・バリューがあります。
正直に言うと、みんなで毎朝読み上げるとか、
壁に貼って唱和するとか、
そういうことはしていません。
それでも、この方向性から
ズレたことはしていない、という感覚があります。
たとえばバリューの一つに、
「いつでも、楽しむ気持ちで!」
という言葉があります。
ミッションにも「経営を楽しく」
という言葉を入れていますが、
これは偶然ではなく、意図的にそろえたものです。
うちのMVVは、難しい言葉や
抽象的な概念語をできるだけ使わず、
シンプルで前向きな単語だけで組み立てています。
「楽しく」「学ぶ」「行動する」。
凝った表現より、誰でも意味がわかって、
口に出しやすい言葉を選びました。
ちなみに「スマート」という言葉には、
クラウド会計やAIを活用して、
効率的でかっこよく仕事をする
という意味も込めています。
正直、メンバーがこの言葉を
日常的に意識しているとは思いません。
暗唱できるわけでも、常に頭にあるわけでもない。
それでも、
シンプルで前向きな言葉だけで固めたことで、
「難しいことは考えなくていい」
「前向きな姿勢でいよう」
という空気が、
無意識のうちに根底に浸透している
感覚があります。
意識して守っているというより、
自然とその方向に体が動いている
という状態に近いです。
これは偶然ではなく、
言葉が思考を作り、
思考が行動を作った
結果だと思っています。

MVVは、経営者自身のための言語化でもある

MVVは、メンバーに向けたものだと
思われがちです。
でも、実は一番効くのは、
経営者自身に対してです。
言語化するという作業は、
自分がどんな会社にしたいかを
自分自身に問い直す作業
でもあります。
なんとなく「良い会社にしたい」
で止まっていた考えを、
具体的な言葉に変える。
時間がかかっても、迷いながら決めても、
それでも一度言葉にしたことで、
日々の判断が少しずつ楽になりました。

「意識高い系」で終わらせるか、判断基準にするか

MVVが機能しない会社の多くは、
掲げただけで終わっています。
額縁に入れて、飾って、それで満足してしまう。
でも本当に大事なのは、
その言葉を、実際の判断にどれだけ使えるかです。
迷ったときに、その言葉に立ち返れるか。
守れない瞬間があったとして、
そこに気づいて戻ってこられるか。
それができて初めて、MVVは機能し始めます。
「宗教じゃあるまいし」
と思っていた僕が言うのもおかしな話ですが、
今は、MVVは会社の存在理由そのもの
だと思っています。
そう聞くと大げさに聞こえるかもしれませんが、
中身は「楽しくやろう」「誠実にやろう」
というくらいの、
拍子抜けするほどシンプルな言葉でいいんです。
難しく考えず、
素直に「どうありたいか」を言葉にしてみる。

それだけで十分、始められます。


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この記事を書いた人

新美 敬太のアバター 新美 敬太 代表税理士

「経営を楽しむ」という想いを大切に、日々経営者の皆さまと向き合っています。
税務・会計だけでなく、同じ目線で悩みや挑戦を共有しながら、一緒に考え、進んでいくことを大切にしています。
私自身も一人の経営者として、まだまだ成長の途中です。
だからこそ、うまくいくことも、迷う時間も、すべて含めて寄り添える存在でありたいと思っています。
経営の中にある楽しさや可能性を感じていただけるように。
これからも、皆さまと一緒に歩んでいきます。

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