組織が大きくなるほど、言葉の解釈はバラけていく

「明日、早めに来てください」

そう伝えたら、Aさんは8時に来た。
Bさんは9時に来た。
どちらも悪意はない。遅刻でもない。
でも、ズレた。
こういうことが、組織の中では毎日起きます。
この小さなズレが積み重なると、
プロジェクトの遅延になり、
顧客へのミスになり、
メンバー間の不信感にもなっていきます。
思い当たる節、ありませんか。
「ちゃんと言ったのに、伝わっていなかった」
「聞いていたつもりだったけど、意図が違った」
「なんでそういう解釈になるの……」
こうした場面を、マネジメントの問題や
個人の資質に帰着させてしまうことがあります。
でも、本質は違います。
これはコミュニケーションの構造的な問題です。

組織が大きくなるほど、ズレも大きくなる

人が増えると、組織の推進力は上がります。
できることが増える。
カバーできる範囲が広がる。
これは間違いない。
でも同時に、認識のズレも
静かに広がっていきます。
そして今の時代、
このズレはさらに生まれやすくなっています。
フレックス勤務、リモートワーク、
多様なバックグラウンドを持つメンバー。
働き方も、育ってきた環境も、
仕事への価値観も違う人たちが、
同じ組織の中にいます。
「これくらいは当たり前」が通じにくい時代です。
以前なら暗黙の了解で済んでいたことが、
今は言葉にしないと伝わらない。
それ自体が悪ことではありませんが、
このズレ出てくると、
組織の力をじわじわと削いでいったります。

ズレの正体——伝える側と受け取る側は、見ている景色が違う

ここが本質だと思っています。
伝える側は、文脈ごと持っています。
「早めに来て」と言うとき、
その人の頭の中には理由がある。
「今日は朝から準備があるから」
「8時には全員揃っていてほしいから」
——そういう背景が、言葉の裏にある。
でも受け取る側は、言葉だけを受け取ります。
背景は届いていない。
だから「早め」を自分の基準で解釈するしかない。
これは油断でも、不注意でもありません。
人間の認知の構造上、避けられないことです。
伝える側が「ちゃんと言った」と思っていても、
受け取る側の頭に浮かんでいる絵は
別物かもしれない。
この非対称性を前提に置くことが、
ズレを防ぐ第一歩です。

確認会話とは何か

この問題への対処として、
鉄道・航空・医療の現場では
確認会話」という手法が導入されています。
ミスが許されない現場で、
長年使われてきたコミュニケーション技術です。
ポイントは3つ。

①言い換えて確認する
「〇〇ですね」と繰り返すだけでは足りません。
「つまり、〜ということですね」と自分の言葉で言い換えることで、
解釈のズレが表面に出てきます。

②結果を返して確認する
「〜するとこういう結果になりますが、
よろしいですか?」と、
具体的な行動の結果まで言語化して確認します。
行動のイメージを揃える作業です。

③違和感を感じたら主体的に確認する
「念のため確認なのですが……」と、
受け取る側から積極的に確認しにいく。
違和感を流さない文化をつくることが大事です。

要するに確認会話とは、
「言った・聞いた」で終わらせず、
お互いの頭の中の絵を一致させるプロセスです。

ズレを減らす3つのアプローチ

確認会話の文化に加えて、
組織全体でズレを減らす手段があります。

共通言語をつくる
「早め」「なるべく」「できれば」
——こういう曖昧な言葉が組織内に多いほど、
解釈はバラけます。
よく使う言葉の定義を揃えておくだけで、
ズレはかなり減ります。
「早めとは何時か」を決めておく、
例えばそれだけのことです。

ツールを統一する
情報の在り処が人によって違う組織は、
認識がそろいません。
メールで伝えた人、チャットで伝えた人、
口頭だけで伝えた人
——これが混在すると、
誰が何を知っているかが見えなくなります。
どこに書けば全員に届くかを統一することが、
ズレを防ぐインフラになります。

文字に残す
これは、うちの事務所でも実感していることです。
口頭でのやりとりは、雰囲気で読まれます。
「たぶんこういう意味だろう」という補完が入る。
でもチャットなどの文面に残すと、
そのズレが減る印象があります。
お客様とのやりとりでも同じです。
電話で話したあとに、
内容をチャットや文面で送る。
これだけで確認の精度が上がります。
文字は、解釈の余白を狭めてくれます。

できている組織は、実は少ない

確認会話を組織的に取り組んでいるかといえば、
できている組織は多くありません。
それどころか、ズレが日常的に起きていても、
そもそも「ズレている」と
気づいていないケースがほとんど
です。
うまくいかない原因を、
個人の能力や姿勢に求めてしまう。
構造の問題だと認識されないまま、
同じズレが繰り返される。
だからこそ、MVVやクレドが大切と言われます。
組織の共通の価値観や言葉を明文化することは、
ズレを防ぐカルチャー形成の根幹です。
仕組みの前に、
土台となる共通認識が必要だということです。
うちもまだカルチャーとして
根付いているとは言えません。
チャットに残す習慣は自然と育ってきましたが、
共通言語の整備やツールの統一は道半ばです。
ただ、こうして言語化することで、
自分自身の組織づくりへの意識も
少しずつ変わってきています。

今日できること

難しいことは何もありません。
今日、指示を出したあとに
一言添えてみてください。
「どう理解しましたか?」
これだけです。
相手の返答を聞いて、
頭の中の絵が合っているかを確認する。
ズレていたら、そこで揃える。
確認会話は、習慣です。
一度やるだけでは根付きません。
でも続けると、組織の空気が少しずつ変わります。
伝えた、では足りない。
伝わった、を確認する。
それが、ズレに強い組織をつくる第一歩です。


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この記事を書いた人

新美 敬太のアバター 新美 敬太 代表税理士

「経営を楽しむ」という想いを大切に、日々経営者の皆さまと向き合っています。
税務・会計だけでなく、同じ目線で悩みや挑戦を共有しながら、一緒に考え、進んでいくことを大切にしています。
私自身も一人の経営者として、まだまだ成長の途中です。
だからこそ、うまくいくことも、迷う時間も、すべて含めて寄り添える存在でありたいと思っています。
経営の中にある楽しさや可能性を感じていただけるように。
これからも、皆さまと一緒に歩んでいきます。

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