「今年は利益が出ました。ただ、来年は正直読めなくて」
決算が近づくと、こういう相談が増えます。
利益が出た年は、もちろん嬉しい。
でも、その裏で来年の資金繰りを心配している経営者は多いです。
良い年と悪い年の波が激しい会社ほど、この不安は大きい。
「どうにか税金を減らせないか」 その気持ちはよくわかります。
でも、本質はそこじゃありません。
大事なのは、税金を減らすことではなく、
利益の波を整えることです。
繰延節税とは何か
先に言葉の整理をしておきます。
繰延節税とは、
今年の利益をあえて減らし、
備品購入や共済などを使って翌年以降にずらすことです。
たとえば、1年目に800万円を先に経費として使い、
その分を2年目の利益として戻す。
1年目の利益を圧縮し、2年目で回収するイメージです。
税金そのものが消えるわけではありません。
払うタイミングを後ろにずらすことで、
税率の山を平らにする仕組みです。
800万円の壁。税率が10%変わるライン
法人税には、段階があります。
ざっくり言うとこうです。
800万円までは、税率がおおむね23%。
800万円を超えた部分には、33%がかかる。
※正確には地方税などを含めた実効税率ベースのイメージです。
会社ごとに多少前後します。
この10%の差が、けっこう効きます。
利益が800万円を超えた瞬間、そこから上は重くなるのです。
だから、毎年の利益を800万円あたりに寄せると、
税負担は軽くなる。
ここが、繰延節税の出発点です。
2年で80万円。利益の波がもたらすコスト
具体的に見てみます。
2年間の利益合計が同じ1,600万円の会社で、
波の有無だけを変えてみます。
パターン①:波あり 1年目 1,600万円/2年目 0円
1年目の税額: 800万円 × 23% = 184万円
800万円 × 33% = 264万円 合計 448万円
2年合計:448万円
パターン②:平準化 1年目 800万円/2年目 800万円
各年の税額: 800万円 × 23% = 184万円
2年合計:368万円
①と②の差額は、約80万円。
2年合計の利益はまったく同じ1,600万円です。
それでも、波があるかどうかで80万円違う。
この80万円、何に使えたでしょうか。
スタッフのボーナス原資。
小さな設備投資。
広告費の一押し。
使えたはずのお金が、静かに税金で消えているわけです。
繰延節税は「先送り」ではなく「安全弁」
繰延節税に対して、
「結局いつか税金を払うんだから、意味ないのでは?」
と言う人がいます。
半分正しい。
たしかに単年で見れば、先送りです。
でも中小企業は、業績が不安定であることがほとんど。
好調な年もあれば、急に悪くなる年もあります。
繰り延べた利益は、不調期の赤字を埋める原資になります。
好調な年に利益を寄せ、不調な年に戻す。
複数年で見れば、税率差のぶん確実に手元に残る。
つまり繰延節税は、利益の波をならすための安全弁です。
代表的な手段としては、
オペレーティングリースや倒産防止共済などがあります。
どれを使うかは、会社の規模や資金繰りによって変わります。
ここは顧問税理士と個別に詰める領域です。
銀行評価という、もう一つの効果
平準化には、税金以外の効果もあります。
それが、金融機関からの見え方です。
銀行は、決算書を3期分並べて会社を見ます。
毎年コンスタントに黒字を出している会社と、
利益が乱高下している会社。
同じ累計利益でも、
安定している会社のほうが融資は通りやすいです。
理由はシンプルです。
銀行は返済能力を見ていて、
その判断は「最悪の年でも返せるか」で決まる。
波が激しい会社は、悪い年を基準に見られてしまう。
利益の平準化は、そのまま「借りやすさ」につながります。
ただし、本末転倒にならないために
ここまでメリットを書いてきましたが、注意点もあります。
まず大前提として、事業への投資が最優先です。
また、繰延節税はキャッシュが一度出ていく仕組みです。
保険や共済、リース。
どれも、お金を払って将来戻す形になります。
商品の選び方を間違えると、
「税金は減ったけど、手元現金がきつくなった」
ということが起きます。
これでは本末転倒です。
それから、もう一つ。
「節税商品ありき」で入ると、たいてい失敗します。
必要なのは、まず自社の利益の波を見ること。
波があるのか、ないのか。
あるなら、どのくらいの金額を、何年スパンで整えたいのか。
節税商品は、経営の平準化
という目的があって初めて生きるツールです。
今日できること
難しいことは何もありません。
今日、一つだけやってみてください。
直近3〜5年の決算書を並べて、利益の推移を眺める。
それだけです。
きれいに揃っているなら、平準化はできています。
波が激しいなら、そこが整える余地です。
波があるとわかったら、次は顧問税理士と話してみる。
「この波、整えられますか?」
それだけで、来年の景色が少し変わるはずです。
節税は、目的ではなく結果です。
目的は、会社を安定して長く続けること。
まずは自社の波を見ることから、始めてみてください。
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