先日、スタッフとの会話の中で
W杯の話が出ました。
森保監督が試合後に残した「想定外も想定内」
という言葉に触れ、業務との共通点を
自分なりに言語化してくれたのです。
さらに、組織の中での
自分の在り方まで考えてくれました。
これを聞いて、素直に嬉しかった。
と同時に、「組織の強さって、
こういうところから生まれるんだ」
という実感がありました。
今日はこの話を起点に、
想定外と組織について書いてみます。
想定外が起きたとき、何が試されているか
開業してから7年。
想定通りに進んだことの方が、
少ないかもしれません。
採用がうまくいかない時期。
クライアントとの関係が想定と違った場面。
業務の仕組みが追いつかなくなった瞬間。
焦る、慌てる、苛立つ。
それ自体は、正直、自然な反応だと思っています。
問題はその後です。
心理学では、同じストレス状況に直面しても、
それをどう解釈するかによって
感情反応が変わることが知られています。
「アプレイザル(認知的評価)」
と呼ばれる考え方です。
「これは脅威だ」と捉えるか、
「これは対処できる課題だ」と捉えるか。
その解釈の違いが、次の行動を分けます。
これはリーダーだけでなく、
組織の一人ひとりに当てはまる話です。
「想定外を想定内にする」とは、
何も起きないようにすることではありません。
何かが起きたときに、
次の一手を冷静に考えられる状態でいることです。
でも、これが本当に難しいのです。
組織の中での「見せ方」が、空気をつくる
ハーバード・ビジネススクールの
エイミー・エドモンドソン教授が提唱した
「心理的安全性」という概念があります。
チームメンバーが、
失敗や懸念を安心して発言できる環境のことです。
Googleが社内調査
「プロジェクト・アリストテレス」で
「高いパフォーマンスを出すチームに
共通する最大の要因」として特定したことで、
世界的に広まりました。
この心理的安全性を左右する要因の一つが、
周囲の反応です。
エドモンドソン教授の研究では、
想定外の事態や失敗に対して、
動揺・批判的な反応が返ってくると、
メンバーは報告や発言を
避けるようになることが示されています。
逆に言えば、一人ひとりが
冷静に反応できる組織は、
それ自体が心理的安全性を高める環境になります。
今回スタッフが自分の気づきを
話してくれたこと自体、この心理的安全性が
機能しているひとつの表れだと思っています。
上に立つ人間が動揺すると、
チーム全体が止まります。
逆に、落ち着いた反応が返ってくると、
周囲は「大丈夫なんだ」と動けます。
感情を持たないことが大事なのではなく、
見せ方を意識できるかどうかが大事です。
私自身、日常的に焦る場面も、
不安になる瞬間も、普通にあります。
それでも、常に意識はしています。
焦っているときでも、不安なときでも、
それを組織の中でどう見せるかだけは、
意識するようにしています。
意識しているかどうかで、
チームへの伝わり方は確実に変わってきています。
「今うまくいっている」ときこそ、余白を設計する
順調なとき、人はリスクを考えにくくなります。
これは自然な心理です。
でも、組織の本当の強さは、
何かが起きたときに初めてわかります。
工学や経営学の世界に、「冗長性」
という概念があります。
システムの一部が機能しなくなっても
全体が止まらないよう、
意図的に余裕や代替手段を
設計しておくという考え方です。
航空機のエンジンが複数あるのも、
重要なサーバーがバックアップを持つのも、
この発想です。
組織の人員設計も、
同じ原理で考えることができます。
うまくいっている組織、優秀な人が多い組織ほど、
あえて人員や業務に余白を持たせています。
ギリギリで回している組織は、
一人抜けただけで止まります。
ただ、余白を持たせるには
経営として成り立つ設計が前提です。
人員を増やせば当然、人件費は上がります。
余白があっても収益構造として回るかどうか。
ここを先に設計しておかないと、
余白は単なるコスト増になってしまいます。
「何かあっても回る」を基準にしながら、
同時に「その状態でも経営が成り立つか」
を問い続けることが、
経営判断としての余白設計です。
余白は無駄ではありません。
余白こそが、想定外への備えそのものです。
「想定外が起こる前提」で動くと、組織はどう変わるか
心理的安全性の研究が示すように、
想定外に備えている組織には共通点があります。
情報が上がりやすいのです。
なぜか。
リーダーが慌てない。
組織全体が慌てない。
だからスタッフが報告しやすい。
報告が早いから、対処も早くなる。
逆に、何か起きるたびに周囲が動揺する組織では、
スタッフは「報告して怒られるくらいなら、
自分でなんとかしよう」
と抱え込みます。
その結果、問題が大きくなってから発覚します。
冗長性の観点でも同じです。
余白のある組織は、一人が抱え込まなくていい。
だから問題が小さいうちに共有される。
普段の「準備と対話」が、
いざというときの底力になります。
そして、これはリーダーだけの話ではありません。
組織の一人ひとりが「想定外は起こるもの」
という前提で動いているかどうか。
その積み重ねが、組織全体の耐性をつくります。
想定外が起きてから考えるのではなく、
起きる前提で動く。
それが、組織を強くする
唯一の方法だと思っています。
自分の「見せ方」を一度確認してみてください
難しいことは何もありません。
今日一つだけ、考えてみてください。
想定外が起きたとき、自分はどう見えているか。
慌てていないか。
苛立ちが顔に出ていないか。
周囲は、そこをちゃんと見ています。
冷静でいることは、才能ではなく
組織の中で身につける技術です。
一人ひとりがその意識を持つことで、
組織全体の空気が変わっていきます。
そして、今回スタッフが
こういう話をしてくれたこと自体、
心理的安全性が機能している
証拠だと思っています。
話せる環境があるから、気づきが生まれる。
気づきが共有されるから、組織が育つ。
そのサイクルこそが、
想定外に強い組織の正体だと感じています。
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