「合名会社って、今もあるんですか?」
顧問先からそう聞かれたのは、
取引先の登記を確認したときのことでした。
会社の種類なんて、
株式会社と合同会社くらいしか知らない。
そう思っている経営者は多いです。
でも実は、会社には4種類あります。
そしてその背景には、「法人とは何か」
という根本的な話があります。
今日はその全体像を整理します。
会社は「営利を目的とした法人」である
まず前提として、会社とは営利法人です。
営利とは何か。
利益を出して、出資者に分配すること。
これだけです。
慈善活動でも社会貢献でもなく、
利益の追求が目的というのが、会社の定義です。
そしてこれは、税法の設計とも直結しています。
法人の行動はすべて、
営利目的が前提として扱われます。
わかりやすい例が、
役員や関連会社への貸付金です。
法人がお金を誰かに貸した場合、
無利息では認められません。
なぜか。
法人がお金を貸すという行為は、
利息という利益を得るための行為のはず
だからです。
無利息で貸すということは、
得られるはずの利益を放棄している。
税務上はこれを問題にします。
「利益を出すべき法人が、
なぜ利益を捨てているのか」という見方です。
交際費課税も同じ発想です。
利益を使って関係者を
優遇する行為には制限がかかる。
「なぜこんなルールが?」と感じる税制の多くは、
営利目的という前提を
起点に考えると腑に落ちます。
会社には4種類ある。でも知らなくて問題ない
今回の記事は、法律用語も出てきます。
ただ、経営者として会社の構造を理解するうえで、
これくらいは知っておく価値があります。
深いところまでは不要です。
全体像をつかむだけで十分です。
会社法上、会社は以下の4種類です。
- 株式会社
- 合同会社
- 合名会社
- 合資会社
多くの経営者が日常で触れるのは上の2つだけ。
実務上は、それで問題ありません。
ただ、取引先の登記や契約書で
下の2つを見かけることはあります。
知っておくと、そのとき慌てずに済みます。
4種類の違いは「責任の範囲」と「所有と経営の分離」
4種類を分けているのは、主に2つの軸です。
① 責任の範囲:有限か無限か、直接か間接か
まず「有限・無限」について。
- 有限責任:出資者(株主)は、出資した金額までしか責任を負わない
- 無限責任:会社の債務に対して、個人財産で無限に責任を負う
次に「直接・間接」について。
- 直接責任:債権者が社員(出資者)に対して直接、支払いを請求できる
- 間接責任:債権者はまず会社に請求する。出資者への直接請求はできない
4種類を整理するとこうなります。
株式会社:有限責任・間接責任
合同会社:有限責任・直接責任
合資会社:有限+無限(混在)・直接責任
合名会社:無限責任・直接責任
この違いは、融資の場面でも出てきます。
たとえば合同会社は有限責任ですが、
直接責任という構造上、
金融機関から「出資者が誰で、
どういう関与をしているか」も
株式会社以上に確認されるケースがあります。
また、株式会社に比べて決算公告の
義務がなく情報開示が少ないため、
初めての融資では詳細な
説明を求められることもあります。
② 所有と経営の分離
株式会社は、出資者(株主)と
経営者(役員)を分けることができます。
出資だけして経営に
関わらない株主がいても成立する。
所有と経営の分離が前提の設計です。
一方、合同会社は出資者=経営者という構造です。
出資した全員が原則として経営に関わります。
共同経営に向いている反面、
意思決定や持分の扱いで
トラブルになりやすい面もあります。
複数人で合同会社を立ち上げる場合は、
この点を事前に整理しておく必要があります。
なぜ合名会社・合資会社は減ったのか
かつては、合名会社・合資会社も
広く使われていました。
家族経営や同族経営が中心だった時代、
無限責任・直接責任も当然の前提でした。
でも現代では、
無限責任を負ってまで選ぶ理由が少ない。
2006年の会社法改正で合同会社という選択肢が
整備されたことも大きいです。
今も新設されるケースはゼロではありませんが、
積極的に選ぶ理由は限られます。
実質2択。株式会社か合同会社か
現実的な選択肢は2つです。
- 株式会社:登記費用約25万円〜。信用力が高く、資金調達・上場にも対応できる
- 合同会社:登記費用約10万円〜。設立コストが低く、小規模・少人数に向いている
どちらを選ぶべきかは、
事業の規模感・共同経営の有無、
将来の資金調達計画によって変わります。
この点は別記事で詳しく扱います。
番外編:「会社」以外の法人も存在する
会社法上の4種類以外にも、法人は存在します。
それぞれ別の法律に根拠を持ち、
設立要件や税務の扱いも異なります。
- 税理士法人:無限責任・直接責任。税理士2名以上で設立する専門家法人。弊所もこの形態です。社員税理士は個人財産で連帯責任を負う構造になっています
- 医療法人:有限責任・間接責任。クリニック・病院が使う形態。設立に都道府県の認可が必要
- 一般社団法人:有限責任・間接責任。非営利型と普通型で課税関係が変わる。使い方の幅が広い
- NPO法人:有限責任・間接責任。収益事業以外は原則非課税
これらは会社ではありません。
ただ、取引先や契約相手として
出会う機会は十分あります。
「これは何の法人か」をざっくり判断できると、
実務上の安心感が違います。
自社の法人形態を、一度言語化してみる
「うちは株式会社です」と言える経営者は多い。
でも「なぜ株式会社にしたのか」
を答えられる人は意外と少ないです。
設立時に税理士や司法書士に勧められたまま、
という場合も多いです。
今日一つだけやってみてください。
自社の法人形態が4種類のどれで、
なぜその形態なのかを、一文で説明してみる。
それだけで、法人と税務への
解像度が少し上がります。
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