こんにちは、しんこう会計事務所の新美です。
今日は、内部留保の話をします。
ニュースや記事で、こういう論調をよく見ます。
「企業の内部留保は過去最高。
これを賃上げや投資に回せば
景気は良くなるはずだ」
でも、私はこれを見るたびに思います。
「それ、内部留保=現金みたいに扱ってない?」と。
たぶん中小企業の社長も、
同じ感覚の人が多いはずです。
数字の上では内部留保が増えていても、
自由に動かせるお金の話とは別。
これが現場の実感です。
今日はそのズレを、
できるだけシンプルに整理します。
内部留保と現預金は、そもそも見ているものが違う
まずここを分けないと話がややこしくなります。
貸借対照表で言えば、
現預金は左上の「資産の部」に載っています。
これは文字通り、今あるお金です。
一方で、いわゆる内部留保は、
貸借対照表の右下「純資産の部」
にある繰越利益剰余金
のことを指して語られることが多いです。
そしてここがややこしいのですが、
「内部留保」は実は正式な会計用語ではありません。
にもかかわらず、まるで正式な言葉のように、
定義が曖昧なまま
メディアでも日常でも使われています。
だから「内部留保=会社に現金が貯まっている」
みたいな、中途半端な誤解が生まれやすい。
これはある意味、当然です。
なぜ「利益」はあるのに「お金」はないのか。黒字倒産と同じ原理
ここが一番大事です。
利益が出ているのに資金が苦しい。
これ、黒字倒産と同じ原理です。
会計上の利益と、現金の増減はズレます。
だから、繰越利益剰余金が増えていても、
通帳の残高が増えていないことは普通に起きます。
社長の“あるある”で言うと、
原因はだいたいこのへんです。
・売上は伸びている。でも入金は来月、再来月。
つまり、利益は出ているのに、
お金はまだ入っていない。
・在庫が増えた
つまり、お金が在庫に変わった。
・設備投資をした
支払いは今。
でも会計上は数年に分かれて費用になる。
・借入の元本返済をしている
元本返済は経費になりません。
利益と連動せず、現金だけが減っていきます。
・税金を払う
利益が出るほど、現金は出ていきます。
ここは容赦ないです。
このようなズレの積み重ねで、
内部留保は増えているのに現預金が増えない、
という状態が起きます。
経営では、現預金の重要度が圧倒的に高い
僕は、経営目線では
現預金の方が圧倒的に大事だと思っています。
特に中小企業は、なおさらです。
現預金がないと支払いができません。
支払いができないと、会社は止まります。
投資も同じです。
チャンスが来たときに
「内部留保はいくらあるから」
と投資を決めることは、実際ほとんどありません。
最後は、手元の現預金の状況で決まります。
外部環境が変わったときもそうです。
取引先の都合、採用のズレ、
原価の上昇、急な設備トラブル。
中小企業は一撃の影響が大きい。
だから、優先順位としてはまず現預金。
ここが薄いと、経営の判断が全部小さくなります。
じゃあ内部留保は意味ないのか。そういう話でもない
ここも誤解してほしくないんですが、
内部留保が意味ないわけではありません。
繰越利益剰余金が厚い会社は、
対外的な見え方が良くなります。
自己資本比率も上がりやすい。
安定感が出る。
与信にも影響します。
ただ、ここも単純化されやすい。
銀行も「内部留保が厚いからOK」とは見ません。
内部留保が厚くても、
中身が回収できない売掛や、
過剰在庫だらけなら評価は落ちます。
逆に、内部留保がまだ薄くても、
現金の回りが良くて、
今後の利益見通しが立っている会社は、
銀行評価が良いことも普通にあります。
内部留保が薄い=信用がない、とは限りません。
結局、銀行が見ているのは
「過去の数字」だけじゃなくて、
その会社の資金の回り方と、
これからの利益の見通しです。
中小企業は「出口」で、純資産の正解が変わる
ここは、あまり語られないけど大事です。
中小企業の場合、
最終的に会社をどうするか(出口)で、
純資産をどれくらい厚くしていくべきか
の方向性が変わります。
たとえば、外部に会社を売る(M&A)なら、
基本的には
純資産が厚い方が分かりやすく評価されやすい。
これはイメージしやすいと思います。
一方で、親族や従業員に承継する場合は、
純資産が厚ければ厚いほど良い、
とは言い切れません。
純資産が厚すぎることで、
別の負担が出る場面もあります。
ただし、
だからといって薄ければ薄いほど良い、でもない。
薄すぎると、
融資面でも取引面でも不利になったり、
そもそも事業の安定性が落ちます。
結局ここは、
出口に合わせたバランスの話になります。
この論点は深いので、
別の記事でちゃんと書きます。
内部留保を増やすことと、現預金を残すことは別の設計
メディアの言葉に引っ張られて、
「内部留保があるなら放出できるはず」
みたいに考えるのは危ないです。
内部留保と現預金は、そもそも別物です。
貸借対照表の左右で、見ているものが違う。
そして、経営の優先順位はこうだと思っています。
まず、現預金が残る仕組みを作る。
その結果として、繰越利益剰余金が積み上がる。
内部留保を増やすことと、
現預金を残すことは別の設計。
ここを混ぜてしまうと、
経営の舵取りを見失います。
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