うちの事務所がマネーフォワードを中心に
クラウド会計を導入したのは、
7年前の開業時期でした。
当時考えていた理由は、大きく3つ。
でも、この読みは半分当たって、
半分はまだ道半ばです。
でも、本質はここではありません。
問うべきなのは、普及が進むかどうかより、
クラウド会計の次に何が来るのか、
ということです。
7年前と同じように、
また一つ、判断のタイミングが来ている。
そう感じています。
なぜクラウド会計を選んだのか
1つ目の理由は、単純な予測でした。
紙の帳簿や、ローカルに
インストールする会計ソフトは、
いずれクラウドに置き換わっていく。
そう考えていました。
2つ目は、効率化です。
銀行口座やクレジットカードの明細を
自動で取得し、仕訳を提案してくれる。
この機能だけで、記帳にかかる時間は
かなり削減できます。
3つ目が、ブランディングです。
「クラウド会計特化」という打ち出し方は、
当時としては珍しい打ち出し方でした。
開業したばかりの事務所にとって、
何かに特化していることは、
選ばれる理由になります。
当時は、この3つが同じくらいの重みでした。
どれか一つが突出していたわけではありません。
この読みは、半分当たって、
半分はまだ道半ばです。
個人事業主のクラウド会計利用率は、
2025年時点でおよそ38%。
思ったより低い数字です。
一方で、「クラウド会計」という言葉自体の認知は、
この数年で明らかに広がりました。
各社の広告や営業活動が、
その認知を後押ししてくれた実感があります。
普及率としてはまだ低い。
でも、広がっていく市場だという
見立ては変わっていません。
クラウド会計がもたらしたのは「速さ」だった
導入してすぐに実感したのは、速さでした。
以前は、月末にまとめて通帳を見ながら、
一つひとつ仕訳を入力する。
そんな場面が当たり前でした。
クラウド会計にしてからは、
取引が発生した時点で、
ほぼリアルタイムに近い形で
データが反映されます。
この速さを支えているのは、
金融機関やクレジットカードとの連携です。
口座やカードの明細データを自動で取り込み、
仕訳の候補まで作ってくれる仕組みのことです。
以前は、通帳のコピーや領収書を
毎月集めてもらうこと自体が一苦労でした。
資料が揃わなければ、記帳も進みません。
この資料回収が、
実はスピードのボトルネックになっていたケースは多いです。
連携によって、
その資料回収の手間そのものがなくなった。
これが、速さの土台になっています。
これは間違いなく便利です。
でも、よく考えると、
変わったのは「入力の速さ」だけでした。
数字が速く集まるようになった。
でも、その数字をどう読むか、
どう判断するかは、
以前とあまり変わっていません。
クラウド会計は、
入力の自動化を実現しただけだった。
これが、最初の数年で見えてきた実態です。
次に来るのは「判断の支援」
ここ数年で、クラウド会計まわりのツールに、
資金繰りの予測や異常値の検知といった機能を
うたうものが増えてきました。
今のペースで入出金が続いた場合に、
数か月後の残高を示してくれる。
いつもと違う金額の支出があったとき、
「通常と傾向が異なります」と知らせてくれる。
そういう触れ込みの機能です。
ただ、正直なところ、
うちが導入している経営分析ソフトは、
そこまで勝手に
はじいてくれるわけではありません。
数字は見せてくれますが、
資金繰りの予測や異常値の検知を
自動でやってくれるわけではない。
AIを使って分析をかける、
という動きを、今まさに進めている途中です。
つまり、システムが判断材料を出してくれる、
という段階に、業界全体としては
差しかかっているものの、
実際にそれを使いこなすところまでは、
まだ発展途上ということです。
出てきた予測やアラートを、
顧問先にどう伝え、どう活かすか。
その一歩先を担うのは、結局のところ人です。
集計のツールから、判断を支援するツールへ。
クラウド会計は、
その境目に来ていると感じます。
そして、その支援をどう使いこなすかが、
これからの税理士に問われている部分です。
これからは「ブランディング」が強くなる
3つの理由のうち、
これから重みを増していくのは、
ブランディングだと思っています。
普及率がまだ38%程度ということは、
裏を返せば、
差がつきやすい領域だということです。
うちの事務所は、
開業当初はマネーフォワードと合わせて、
freeeも一部で使っていました。
ただ、業務の効率を考えたときに、
複数のソフトに対応する体制よりも、
一つに絞り込んだ方がいい。
そう判断して、今は
マネーフォワード導入率100%です。
この判断が、思いがけない形で効いています。
「マネーフォワードを使いたいので、
対応できる税理士を探している」
という問い合わせが、少なくないのです。
クラウド会計は、
効率化の手段であると同時に、
どの事務所を選ぶかという
判断材料にもなっています。
ツールを一つに絞り込むことが、
結果として、事務所の輪郭をはっきりさせる。
これは、導入当初は狙っていなかった効果です。
AIが得意なこと、人にしか出せない価値
判断の支援まで踏み込んできたAIですが、
すべてを任せられるわけではありません。
数字のパターンを検知することは、AIが得意です。
資金繰りの予測も、異常値の検知も、
人がやるより速く、正確にできます。
でも、その数字が何を意味するのか、
その先どう動くかを決めるのは、人の仕事です。
うちの事務所が大事にしているのは、
答えを渡すことではなく、
経営者自身が
気付きを得る時間を提供することです。
AIが出す予測やアラートは、
その気付きのきっかけにはなります。
でも、気付きそのものを引き出す関わり方は、
人にしかできません。
判断の支援という領域に
向き合い始めるかどうかで、
数年後の差は大きくなると思っています。
まず、自社の状況を棚卸しすることから
難しいことをする必要はありません。
まず、自社の経理データで、
今、何が自動化できているかを
一度確認してみてください。
入力だけが自動化されているのか。
それとも、資金繰りの予測や異常値の検知まで、
使いこなせているのか。
その差を知ることが、
クラウド会計の次を考える、
最初の一歩になります。
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