Jリーグが開幕した年、僕は小学生でした。
ドーハの悲劇も、初のワールドカップ出場も、
リアルタイムで見てきた世代です。
だからこそ分かります。
「優勝を目標にする」と言えるだけで、
どれだけの成長か。
正直に言うと、今回も
「優勝はさすがにないだろう」と思っていました。
決勝トーナメントで勝ったことは、一度もない。
相手も、格下とは言えない国ばかり。
でも、選手は誰一人ブレませんでした。
聞かれるたびに、「目標は優勝」。
その言い続ける姿を見ているうちに、
こちらの気持ちが変わっていきました。
「もしかしたら、ワンチャンあるかも」
気づけば、ブラジル戦にも
本気で期待している自分がいました。
これ、実は経営でもよく見る場面です。
目標は、達成する前に「周りを動かす」
これ、ちょっとした洗脳です。
本人たちが本気で言い続けると、
見ている側まで本気になってくる。
結果は、決勝トーナメント1回戦敗退。
順位だけで言えば、過去2大会より後退しました。
それでも、大会中の景色は明らかに違いました。
ただ、これは
根拠のない目標ではありませんでした。
選手が海外へ渡り、厳しい環境で力をつける。
協会も、その挑戦を後押しする。
「優勝」という言葉の裏には、
何年もかけて積み上げてきた準備がありました。
遠くのミッションと、目の前の合言葉
実は、日本サッカー協会には
「2050年までにワールドカップで優勝する」
という長期のミッションがあります。
2005年に掲げられた約束です。
これだけ遠いミッションだけを見ていても、
人は動けません。
目の前の一歩が見えないからです。
そこでJFAは、今大会に向けて
「最高の景色を
2026 FOR OUR GREATEST STAGE」
という合言葉を掲げました。
2050年という遠い旗と、
今大会の目の前の合言葉。
この二段構えが、選手たちの
「目標は優勝」というブレない言葉
を支えていたのだと思います。
経営でも、これは同じ構造です。
遠い経営理念だけを掲げても、
社員の日々の行動には結びつきません。
逆に、目の前の数値目標だけを追っていても、
何のためにやっているのか見失いがちです。
遠いミッションと、今期の合言葉。
この両方があってはじめて、
組織は迷わず前を向けます。
顧問先のある社長も、同じことをしていました。
社員10名ほどの会社で、
朝礼のたびに「業界no.1を目指す」
と言い続けていた方です。
正直、最初は僕も
「なかなか強気だな」と思って聞いていました。
売上規模から見ても、
簡単な話ではなかったからです。
でも、半年経つ頃には、
社員の方から「〇〇のために、こうしたい」
という提案が増えていました。
目標そのものは、まだ達成していません。
それでも、組織の動き方は
明らかに変わっていました。
「優勝を目指す」は、結果より先に効いている
目標は、達成して初めて意味が出る。
そう思われがちです。
でも実際は逆です。
目標を口にした瞬間から、効果は始まっています。
経営学に、
BHAG(Big Hairy Audacious Goal)
という考え方があります。
実現確率は低くても、あえて大胆な目標を掲げる。
それによって組織が一つにまとまり、
行動が変わっていく、という理論です。
今回の日本代表は、まさにこれでした。
選手が「優勝」と言い続けたことで、
チームの基準が上がった。
プレーの強度が上がった。
そして僕ら観客まで、
本気で応援するようになった。
これは、結果が出る前、
すでに起きていたことです。
大きくなった会社は、例外なく大きな目標を掲げていた
これ、日本の大企業を見ても、
同じことが起きています。
ホンダの本田宗一郎氏は、
まだオートバイを1台世に出したばかりの頃から、
「世界一のオートバイメーカーになる」
と言い続けていました。
ソフトバンクの孫正義氏も、
社員がアルバイト2人しかいなかった創業初日に、
「売上高を、豆腐屋のように1兆、2兆と数える会社にする」
とぶち上げたと言われています。
ユニクロの柳井正氏も、
「非常識と思えるほどの高い目標」を掲げることを、
創業当初から社内で徹底してきました。
共通しているのは、
どの会社も、目標を掲げた時点では、
その規模にまったく届いていなかったことです。
ただ、誤解してほしくないことがあります。
大きな目標を掲げれば、
必ず大きくなるわけではありません。
掲げただけで終わった会社も、
実際にはたくさんあります。
目標は、成長のための必要条件であって、
十分条件ではない。
それでも、大きく成長した会社を振り返ると、
例外なく大きな目標を掲げていた。
これも、動かしがたい事実です。
選手の「優勝」という言葉も、
同じ構造の入り口に立っていたのだと思います。
目標を下げた瞬間、そこが天井になる
もし選手が「ベスト16でも十分」
と言っていたら、どうだったでしょう。
おそらく、そこが
本当に天井になっていたと思います。
人も組織も、
口にした目標より上には、なかなか行けません。
経営でも、これは日常的に起きています。
期首の目標設定で、
「去年並みでいいか」
と経営者が口にした瞬間、
社員の頭の中の天井も、同じ高さに設定されます。
逆に、
「今期は前期比130%を目指す」
と言い切った会社は、
達成できるかどうかは別として、
社員の動き方の総量が変わります。
見積もりの取り方、提案の出し方、
会議での発言の量。
すべて、掲げた目標の高さに引っ張られます。
目標を下げることは、
安全策ではなく、成長の蓋をする行為です。
言葉が、周りを巻き込む力になる
今回、僕が一番驚いたのはここです。
選手たちの「優勝」という言葉に、
最初は半信半疑だった観客まで、
巻き込まれていきました。
経営でも、これは起きます。
先ほどの社長も、
最初は社員から
「またそんなこと言って」
という空気で見られていたそうです。
それでも言い続けた結果、
今では社員の方が先に
「no.1になるには、これが必要ですよね」
と言うようになった。
取引先にも、同じ言葉を伝え続けたことで、
「あの会社は本気だ」
という評価に変わっていったそうです。
目標は、社内文書に書くものではなく、
口に出し続けるものです。
一度言って終わりでは、浸透しません。
何度も、同じ言葉で、言い続ける。
そこに、周りを巻き込む力が生まれます。
口にしてみること
難しいことはありません。
次のミーティングで、一度でいいので、
自分の目標を、
恥ずかしがらず声に出してみてください。
「今期、業界no.1を目指します」
そんな一言で構いません。
言った瞬間から、周りの見る目は変わり始めます。
結果は、その後についてきます。
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