金を売ったら、いくら税金がかかるか知っていますか

「実家の金、そんな値段になってるんですか」
最近、こう驚かれることが増えました。
親や祖父母から譲り受けた金の指輪やネックレス。
昔の記憶にある値段のまま、
なんとなく大した金額には
ならないだろうと思っていた。
でも実際に査定してみると、
想像より一桁多い金額が出てくる。
でも、本質はそこではありません。
査定額が上がった分だけ、
税金の影響も大きくなっている

ということです。
今日はそこを、価格の推移と計算例で整理します。

この30年で、金はどれだけ値上がりしたのか

驚かれる理由は、単純です。
価格が、桁違いに上がっているからです。

30年前(1996年頃):1gあたり1,000円台
20年前(2006年頃):1gあたり2,000円台
10年前(2016年頃):1gあたり4,000円前後
2023年頃:1gあたり1万円前後(初めて1万円台へ)
2025年9月:1gあたり2万円を突破
現在(2026年7月):1gあたり23,000〜24,000円前後
(2026年1月には一時30,000円を超え、過去最高値を記録)

昔買った金ほど、含み益が大きくなっている。
含み益が大きいということは、
それだけ税金の影響も大きいということです。

金の売却益は「譲渡所得」になる

金を売って出た利益は、
給与や事業の利益とは別枠で計算されます。
これを譲渡所得といいます。
不動産や車を売ったときと同じ枠組みです。
ただし、ここが誤解されやすいところです。
「別枠で計算」というのは、
申告書自体が別になるという意味ではありません。
計算した譲渡所得の金額を、
給与所得や事業所得と
同じ一枚の確定申告書に合算して
まとめて申告します。
「金の申告は別途どこかでするもの」ではなく、
毎年の確定申告の中に組み込むものです。
そして、これは会社員でも、
年金を受け取っている方でも同じです。
「サラリーマンだから年末調整で終わり」
「年金生活者だから申告は関係ない」
ということはありません。
金の売却で利益が出た時点で、
誰であっても確定申告の対象になります。
ただ、売った金額の
すべてに税金がかかるわけではありません。
買った時の金額を差し引いた差額にかかります。
相続で受け継いだ金など、
買った時の金額がわからないケースもあります。
その場合は、売却額の5%
取得費として計算するという
ルールになっています。
これを知らずに申告すると、
本来より多く税金を払ってしまうことになります。

保有期間5年がボーダーライン

ここが一番押さえてほしいポイントです。
金は、買ってから売るまでの
期間で扱いが変わります。
5年以内の売却(短期譲渡所得)
5年超の売却(長期譲渡所得)
短期は、譲渡益をそのまま課税対象にします。
長期は、譲渡益の半分だけを課税対象にします。
計算例で見てみます。
10年前、1gあたり4,000円のときに
100g購入したとします。
購入額は40万円。
現在の相場、1gあたり23,000円で売却すると
売却額は230万円。
譲渡益は230万円-40万円=190万円。
ここから特別控除50万円を引いて、140万円。
保有期間は10年、5年超なので1/2課税です。
140万円 × 1/2 = 70万円
これが、他の所得に上乗せされる課税対象額です。
もし5年以内の売却だったら、
140万円がそのまま課税対象です。
同じ利益でも、70万円分の差が出ます。
なお、相続した金の所有期間は、
相続した人が買った時からではなく、
亡くなった方が買った時点から通算します。
相続税と所得税は別物なので、
ここを混同しないよう注意が必要です。
先ほどの計算にも出てきましたが、
譲渡益からは年間50万円の特別控除
を引くことができます。
ただし注意点があります。
この50万円は、金だけの枠ではありません。
他の資産の譲渡所得と合算して、
年間50万円が上限です。

税率は「誰の所得と合算されるか」で決まる

先ほどの70万円という数字。
これは単独で税額が決まるわけではありません。
他の所得と合算した金額に、
税率をかけて計算します。
つまり、同じ70万円でも、
人によって実際の税額はまったく違います。
いくつかパターンで見てみます。
(復興特別所得税は考慮せず、概算です)

会社員の場合(給与所得のみ、他の課税所得300万円)
70万円を加えず300万円のときの所得税は、
約20.3万円。
70万円を加えて370万円にすると、約31.3万円。
差額は約11万円
住民税10%(7万円)を加えると、
金の売却で増える税負担は合計約18万円です。

・個人事業主の場合(他の課税所得700万円)
70万円を加えず700万円のときの所得税は、
約97.4万円。
70万円を加えて770万円にすると、
約113.5万円。
差額は約16万円
住民税7万円を加えると、合計約23万円です。

・年金生活者の場合(他の課税所得100万円)
70万円を加えず100万円のときの所得税は、
約5万円。
70万円を加えて170万円にすると、8.5万円。
差額は約3.5万円
住民税7万円を加えると、合計約10.5万円です。

同じ「70万円が課税対象」でも、
税負担は10万円台から20万円台まで
幅があります。
その人の他の所得の水準によって決まるからです。
「金の税金がいくらか」は、
金の話だけでは決まりません。

200万円超の売却には支払調書が出る

金地金業者は、200万円を超える売却
があった場合、
税務署に支払調書を提出する義務があります。
黙っていればわからない話ではなく、
そもそも情報が税務署に届く仕組みに
なっているということです。
事業として売買していると扱いが変わります。
ここまでは、資産として保有していた
金を売った場合の話です。
一方で、繰り返し売買している、
事業として金の取引をしている
という実態があると、譲渡所得ではなく
事業所得や雑所得として扱われることがあります。
この場合、5年ルールや1/2課税は使えません。

相場ではなく、まず取得日を確認する

難しいことは何もありません。
金を売る予定がある方は、
まずいつ、いくらで買ったかを確認してください。
それだけで、税額が数十万円単位で変わります。
そして、その利益は
確定申告という一つの申告書の中で、
給与や事業の所得と一緒に扱われます。
別扱いだと思って後回しにしないこと。
これが、一番の対策です。


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この記事を書いた人

新美 敬太のアバター 新美 敬太 代表税理士

「経営を楽しむ」という想いを大切に、日々経営者の皆さまと向き合っています。
税務・会計だけでなく、同じ目線で悩みや挑戦を共有しながら、一緒に考え、進んでいくことを大切にしています。
私自身も一人の経営者として、まだまだ成長の途中です。
だからこそ、うまくいくことも、迷う時間も、すべて含めて寄り添える存在でありたいと思っています。
経営の中にある楽しさや可能性を感じていただけるように。
これからも、皆さまと一緒に歩んでいきます。

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