「来期の売上目標、いくらにしますか?」
こう聞くと、多くの経営者の方は
すぐに数字が出てきます。
「3億円」「前年比110%」など、具体的です。
でも、続けてこう聞くと、
答えに詰まる方がとても多いです。
「1年後、現預金はいくら残したいですか?」
売上目標はすぐ出るのに、
現預金目標はすぐ出ない。
これ、実はかなり
危険なサインだと僕は思っています。
売上や利益は、あくまで手段です。
本質は、会社をどれだけ
強くしていけるかにあります。
会社が潰れる理由は、たった2つしかない
会社が倒産する原因は、
突き詰めると2つしかありません。
支払不能と債務超過です。
直接的に会社を潰すのは、支払不能だけです。
では債務超過は関係ないかというと、
そうではありません。
債務超過になると、銀行融資が受けにくくなる。
融資が受けにくくなると、
いざという時にお金を借りられない。
結果として、支払不能に陥りやすくなる。
つまり債務超過は、
支払不能を引き起こす要因の一つなのです。
直接の原因と、間接の原因。
ここを分けて理解しておくと、
何を見ればいいかがはっきりします。
法人の最終目標は、結局「現預金」である
会社を強くするということは、
現預金と純資産を厚くしていくことだと、
よく言われます。
でも、もう一段踏み込んで考えると、
法人経営の最終目標は、
結局現預金を増やすことに行き着きます。
利益が出ていても、現預金が減っている。
売掛金が回収できていない、
在庫が積み上がっている、
借入の返済が利益を上回っている。
利益が出ているのに、手元のお金は減っていく。
これでは、経営として何かがおかしいのです。
もっと言えば、会社をいつか辞める時、
つまり出口の場面。
廃業するにしても、譲渡するにしても、
最後に手元に現預金が残っているかが、
すべてを物語ります。
帳簿上の利益がどれだけ立派でも、
現預金が残っていなければ、意味がありません。
そして、もし債務超過の状態であれば、
この最終目標はそもそも達成できません。
資産より負債の方が大きいということは、
全部現金化しても、
現預金がプラスで残らないということだからです。
だからこそ、純資産を厚くすることと、
現預金を厚くすることは、
セットで考える必要があります。
現預金は「時間を買う」ためにある
なぜ現預金が大事なのか。
それは、不測の事態が起きたときの
時間を買うためです。
取引先の急な倒産。
災害。
売上が急に落ち込む局面。
こうした事態が起きても、手元に現金があれば、
多少の赤字が続いても持ちこたえられます。
逆に現金が薄いと、
ちょっとした逆風ですぐに
資金繰りが苦しくなります。
目安として見てほしいのは、
月当たり支出額の3〜6ヶ月分。
これくらいの現預金があると、
赤字が出ても慌てずに
対処できる経営に近づきます。
そしてこれは、金融機関から見ても同じです。
銀行は決算書のいろいろな指標を見ますが、
結局のところ一番見ているのは、
現預金がしっかりあるかどうかだったりします。
収益性の指標、効率性の指標、
いろいろありますが、
最後に会社を守るのは現預金です。
純資産は「信用」そのもの
もう一つの軸が、純資産です。
純資産がマイナスになる、
つまり債務超過になると、
銀行からの融資は一気に厳しくなります。
資金調達ができないと、成長投資もできない。
それが、さらに利益を増やせない
悪循環につながります。
しかも、債務超過の状態は、
帝国データバンクなどを通じて、
取引先や仕入れ先にも
伝わってしまうことがあります。
「この会社、危ないかもしれない」と見なされれば、
ビジネスそのものが停滞してしまう。
逆に、純資産がしっかり積み上がっている会社は、
多少の赤字が出ても揺らぎません。
銀行交渉も、追加融資もスムーズになります。
目標から逆算すると、やるべきことが自動的に決まる
多くの経営計画は、「売上→利益」
という順番で考えます。
でも、本来はこの逆です。
「目標純資産→必要な利益→必要な売上」
という順番で考えるのです。
簡単な例で見てみます。
1年後、純資産を今より
1,000万円増やしたいとします。
増資をしない前提なら、
必要なのは税引後利益1,000万円です。
法人税などをおおよそ3割と見ると、
税引後利益は税引前利益の7割。
なので、税引前利益は「1,000万円 ÷ 0.7」で、
約1,430万円。
ここに固定費(人件費や家賃など)を足します。
仮に固定費が年間3,000万円だとすると、
1,430万円 + 3,000万円 = 必要な粗利 4,430万円
この粗利を、粗利率で割れば、
必要な売上高が出ます。
仮に粗利率が40%だとすると、
4,430万円 ÷ 40%
= 必要な売上高約1億1,075万円
つまり、
純資産目標 → 税引前利益 → 粗利 → 売上
という流れで、目標売上が
自動的に導き出されるということです。
これはあくまで一つの考え方であり、
計算方法の一例です。
法人税率も固定費構造も会社によって違います。
ただ、この逆算の型を知っているかどうかで、
経営計画の質はまったく変わってきます。
売上目標だけを立てている会社は、
純資産目標を見失ったまま、
「とにかく借金を減らす」ことだけに
意識が向きがちです。
その結果、必要な現預金まで取り崩してしまう。
これは、よくある失敗パターンです。
BS思考はそれ以上に大切だと感じています。
うちの事務所では、資金繰り表の
活用を大事にしています。
過去の資金繰りを振り返るだけでなく、
精緻な損益計画と連動させた
将来の資金繰りを一緒に見ていく。
これを続けていると、経営者の中に、
少しずつ逆算思考が育っていく実感があります。
「来期の利益が、半年後の現預金に
どうつながるか」が見えてくると、
自然と数字の見方が変わってくるのです。
まず、この数字から決めてみてください
来期の売上目標を立てる前に、
一つだけやってみてください。
「1年後、現預金をいくら残したいか」を、
一つの数字で決める。
それだけで、見える景色が変わります。
そしてもし可能であれば、
精緻な損益計画と、それに連動した
資金繰り表を作ることをお勧めします。
売上や利益は、現預金という
最終目標に近づくための手段にすぎません。
そして最終的には、
BS(貸借対照表)を自分の言葉で読める経営者を
どれだけ増やしていけるかということは僕自身、
大切にしたいテーマです。
強い会社をつくる経営計画は、
ここから始まります。
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