以前、新しい事業を
始めようとしたことがあります。
セミナーに参加して、LPも作りました。
でも、結局は頓挫しました。
かかったお金は数十万円。
使った時間は数十時間。
当時は「やってしまった」と思いました。
振り返ると、理由ははっきりしています。
人員もリソースもまだない中で、挑戦が早すぎた。
そして、一人で進めようとしていた。
新しいことは、組織として進めなければいけない。
この経験で、それがよく分かりました。
「ミスをしないように」
そう伝えている組織は多いと思います。
でも、本質は少し違います。
失敗なんてない。
あるのはフィードバックだけです。
「失敗」と呼んだ瞬間に、人は止まる
赤ちゃんが歩けるようになるまでを
思い浮かべてみてください。
立ち上がって、転ぶ。
また立ち上がって、また転ぶ。
何十回、何百回と繰り返します。
でも、誰もそれを「失敗」とは呼びません。
赤ちゃん自身も見守る親も
「歩くのに向いていない」とは思わない。
転ぶたびに、重心の置き方や足の出し方を
体が覚えていく。
転ぶことは、歩けるようになるための情報です。
「失敗」は、そこで終わる言葉。
「フィードバック」は、次につながる言葉。
起きた出来事は同じでも、
どう意味づけするかで次の行動が変わります。
大人になるほど、私たちは転ぶことを
「失敗」と呼ぶようになります。
そして、転ばないように、
立ち上がること自体をやめてしまいます。
「失敗はない」という言葉の系譜
エジソンの言葉として、
よく知られているものがあります。
「失敗したのではない。
うまくいかない方法を見つけただけだ」
本人の発言かどうかは諸説ありますが、
多くの人が引用してきた言葉です。
この考え方を、一つの「前提」として
体系化したものがあります。
1970年代のアメリカで、
リチャード・バンドラーと
ジョン・グリンダーが生み出した
NLP(神経言語プログラミング)です。
NLPには、ものの見方の土台となる
「前提」がいくつかあります。
「失敗はない、フィードバックがあるだけ」は、
その代表的な一つです。
この考え方は、その後コーチングや
人材育成の世界にも広がりました。
僕もコーチングを学ぶ中で出会い、
大切にしている言葉です。
時代も分野も違うのに、
同じところにたどり着いている。
それだけ、意味づけを変えることの力は
普遍的なのだと思います。
ミスは「うまくいかない方法」を教えてくれる情報
仕事のミスも同じです。
例えば、申告書の数字に
誤りが見つかったとします。
原因をたどると、いろいろなことが見えてきます。
確認の順番に抜けがあった。
担当が変わったときの引き継ぎが不十分だった。
繁忙期で、時間の見積もりが甘かった。
どれも、ミスが起きなければ
気づけなかったことです。
ミスは、今のやり方のどこに穴があるかを
教えてくれる情報です。
ところが、ミスを
「悪いこと」「あってはならないこと」として扱うと、
この情報は手に入りません。
早く終わらせたい。なかったことにしたい。
そうなると、原因を深く見る前に
話が閉じてしまいます。
お客様との関係も同じだと感じています。
信頼を左右するのは、ミスがあったかどうかより、
そこから何を変えたかです。
同じことが起きないように仕組みを変えた。
その姿勢が伝わると、
むしろ信頼が深まることもあります。
フィードバックは隠された瞬間に消える
フィードバックには、一つ弱点があります。
表に出てこなければ、
存在しないのと同じだということです。
ミスが報告されなければ、組織は何も学べません。
では、なぜミスは隠れるのか。
本人の性格や責任感の問題ではないと、
僕は思っています。
原因は、ミス=失敗として扱う空気です。
報告したら責められる。評価が下がる。
そう感じる場所では、
誰でも言い出しにくくなります。
僕自身、これまでミスは何度もしてきました。
冒頭の新規事業だけではありません。
だから、ミスをした人を責められる立場ではない。
そう思っています。
そして、上が自分のミスを話せる組織ほど、
報告は上がってきやすくなります。
報告してくれた人への最初の一言は、
「ありがとう」でいいと思います。
言いにくいことを言ってくれたこと自体が、
組織にとって貴重なフィードバックだからです。
ここは僕自身も、意識し続けている途中です。
受け取って変えたとき、初めてフィードバックになる
ただし、「失敗はない」は甘やかしではありません。
ミスをしても気にしなくていい、
という意味ではありません。
フィードバックは、
受け取って、何かを変えたときに
初めて意味を持ちます。
振り返りで大事なのは、
「誰のせいか」ではなく、
「次どうするか」「仕組みで防げないか」
という問いです。
人を責めても、仕組みは変わりません。
仕組みが変わらなければ、
別の人が同じミスをします。
同じミスを何度も繰り返すのは、
フィードバックを受け取れていない
というサインです。
次のミスを「何が分かった?」で迎える
難しいことは必要ありません。
次にメンバーからミスの報告を受けたら、
責める前に、まず「報告ありがとう」。
そのあとに、「何が分かった?」
と聞いてみてください。
その一言で、ミスは失敗から
フィードバックに変わります。
失敗しない組織より、失敗から学べる組織。
長く強いのは、間違いなく後者だと思っています。
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