借入の返済期間「5年→7年」で、毎年171万円が手元に残る

融資の話になると、
多くの経営者が気にするのは金利です。
0.1%でも下げたい。
その気持ちはよくわかります。
でも、同じくらい大切なのに、
見落とされがちな条件があります。
それが返済期間です。
今日は、長期運転資金の返済期間を
5年から7年に延ばすと何が変わるのか。
数字で見ていきます。

返済期間が2年延びると、いくら変わるのか

例えば、3,000万円を
長期運転資金として借りたとします。
(わかりやすくするため、
利息を除いた元金だけで計算します)
5年返済の場合。
毎月50万円、年間600万円の返済です。
7年返済の場合。
毎月約35.7万円、年間約429万円の返済。
差額は、
毎月約14.3万円、年間約171万円。
返済額が約3割減ることになります。
5,000万円なら、差はもっと大きくなります。
年間で約286万円。
月にすると約24万円。
新卒社員1人分の給与くらいのお金が、
毎月手元に残る計算です。
さらに、こんな見方もできます。
3,000万円を借りて5年経った時点。
5年返済なら、すでに完済しています。
7年返済なら、
まだ約857万円の借入が残っています。
裏を返すと、7年返済の会社の方が、
手元に約857万円多く現預金を持っている

ということです。

利益は1円も増えない。でも、お金は残る

ここで大事なことがあります。
返済期間を延ばしても、
売上は増えません。
利益も1円も増えません。
借入の返済は経費にならないので、
損益計算書にはそもそも出てきません。
だから、試算表や決算書を見ているだけでは
この差に気づきにくい。
でも、資金繰りにはそのまま効いてきます。
手元に残ったお金は、
採用や教育、広告などの将来への投資に回せます。
売上が落ちたときの備えにもなります。
中小企業にとって、
現預金は会社の体力そのものです。
ただし、一つ注意があります。
「それなら、とにかく長く借りればいい」
という話ではありません。
借りたお金は、いずれ返すお金です。
返済期間を延ばしても、
返す総額が減るわけではありません。
むしろ利息の分だけ増えます。
手元に余裕ができたからといって、
なんとなく使ってしまえば、
残るのは借入だけです。
借入が膨らめば、利息も返済も重くなり、
銀行からの評価も下がっていきます。
大切なのは、
浮いたお金を何に使うのかを決めておくこと。
そのためには、
損益計画とそれに連動した資金繰り表で、
いつ、いくら必要になるのかを
見えるようにしておく。
返済期間を延ばすのは、
その計画を実行しやすくするための手段です。

負債の減るペースは遅くなる。利息も増える

もちろん、いいことばかりではありません。
返済期間を延ばせば、
負債の減るペースは遅くなります。
年600万円ずつ減っていた借入が、
年429万円ずつしか減らなくなる。
支払利息の総額も増えます。
仮に金利2%で計算すると、
利息の差は期間全体で約60万円です。
(元金均等返済での概算)
ただ、ここをどう見るか。
約60万円の利息を多く払うことで、
5年目の時点で約857万円の現預金を多く持てる。
僕は、それ以上のメリットがあると考えています。
借金が早く減るのは、気持ちの上では安心です。
でも、会社を守るのは借金の少なさではなく、
手元にあるお金です。
借入が残っていても、
現預金があれば会社は回ります。
借入がゼロでも、
現預金がなければ会社は止まります。
こうした考え方は、
意外と誰も教えてくれません。
銀行から「期間を延ばしましょう」と
提案されることも、まずありません。
だからこそ中小企業こそ、
経営者自身が大切にすべき視点だと思います。

なぜ銀行は「運転資金は5年まで」と言うのか

では、なぜ銀行は運転資金の期間を
長くしたがらないのか。
少しだけ専門的な話をします。
銀行が言う運転資金は、
ざっくり言うと次の計算で出します。
売掛金+在庫−買掛金
商品を仕入れてから売上代金を回収するまでに、
立て替えておく必要のあるお金です。
この金額は、売上が落ちれば減ります。
景気や業績で大きく動く、不確実な数字です。
一方で、一度返済期間を決めて貸すと、
会社側には期限の利益が生まれます。
約束どおり返していれば、
期日まで一括返済を求められない権利です。
必要な運転資金が減っても、
貸したお金はすぐには戻ってこない。
だから銀行は、運転資金を長くても5年、
状況によっては3年程度に抑えたがるわけです。
信用保証協会の保証がつけば、
7年や10年になることもあります。
ただ、保証なし・無担保の
プロパー融資で7年を引き出せるのは、
銀行から高く評価されている会社の証と言えます。

7年を引き出せる会社の共通点

7年返済を実現している会社には、
いくつか共通点があります。
まず、お金に困っていないこと。
資金に余裕がない状態でお願いしても、
交渉の立場は弱くなります。
次に、純資産がしっかり積み上がっていること。
財務が安定していれば、
銀行も長期で貸すリスクが小さいと判断できます。
そして、複数の銀行と取引があること。
選択肢があれば、交渉の余地も生まれます。
決算書の中身だけではありません。
日々の入出金や預金など、
その銀行との取引ぶりも見られています。
一度断られても、あきらめる必要はありません。
決算の内容が良くなったとき。
支店長が代わったとき。
タイミングが変われば、
答えが変わることもあります。
僕自身も、顧問先の融資のたびに
毎回この交渉まで
踏み込めているわけではありません。
目の前の資金調達を優先して、
条件の話が後回しになることもあります。
だからこそ、これからは意識して
一緒に交渉していきたいと思っています。

次の融資面談で、ひと言添える

やることは、シンプルです。
次に長期の運転資金を借りるとき、
「返済期間は7年でご検討いただけますか」
と、ひと言だけ聞いてみてください。
通れば、毎年の資金繰りが大きく楽になります。
断られても、それは
今の自社が銀行からどう見られているか
を知る物差しになります。
利益を増やすのは、簡単ではありません。
でも、手元にお金を残す工夫は、
交渉ひとつでできることもあります。


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この記事を書いた人

新美 敬太のアバター 新美 敬太 代表税理士

「経営を楽しむ」という想いを大切に、日々経営者の皆さまと向き合っています。
税務・会計だけでなく、同じ目線で悩みや挑戦を共有しながら、一緒に考え、進んでいくことを大切にしています。
私自身も一人の経営者として、まだまだ成長の途中です。
だからこそ、うまくいくことも、迷う時間も、すべて含めて寄り添える存在でありたいと思っています。
経営の中にある楽しさや可能性を感じていただけるように。
これからも、皆さまと一緒に歩んでいきます。

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