サブスクは信頼関係。単発は売ればいい?

先日、飲食店社長と雑談していて、
こんな話になりました。
「飲食店とか家電なんて、
一回来てもらって満足してもらえれば、
それで成立する商売ですよね」
たしかに、飲食店も家電も、
単発で完結する取引です。
一方、毎月払い続けるサブスクは違います。
一回の満足だけでは、続いてもらえません。
このとき、社長との話はここで終わりました。
でも、後で考えてみると、
何かが引っかかっていました。

単発は「売れればいい」でも成立する

本質は、満足度の話ではありません。
本質は、関係が続くことを
前提にしているかどうか
です。
飲食店で一度食事をする。
家電を一台買う。
これらは、極端に言えば売れればいい取引です。
一点、一回、誰かの手に渡る。
それで契約は終わり。
極論、次に同じ人が来てくれなくても、
その一回の取引だけを見れば成立します。
単発取引は、一回の満足で完結する側面と、
一回売れればいいという側面、
両方を持っています。
ただし、ここで一つ思い出したことがあります。
別の場面で、飲食店を経営する方が、
こう言っていました。
「一見さんだけだと、
うちみたいな店は正直厳しいです。
リピーターがついてくれて、初めて回るので」
一回ごとの取引は単発でも、
経営そのものは単発では成立しない。
リピーターという、形を変えた継続契約が、
単発ビジネスの裏側には必ず存在するのです。
本当の意味で「単発でいい」ビジネスは、
実はほとんど存在しないのかもしれません。

サブスクは「次も選ばれる」が前提

一方、サブスクは違います。
一度契約してもらって終わり、ではありません。
毎月、選ばれ続けることが前提です。
Netflixのような動画配信
ジムの月会費
コーヒーや洗剤の定期便
勤怠管理や経理ソフトのようなSaaSツール。
どれも共通しているのは、
一度契約したら終わりではないという点です。
先月良かったから、来月も自動的に続く。
そう思われた瞬間から、
少しずつ解約は近づいてきます。
一回の満足では足りない。
先月良くても、今月見るものがなければ、
解約されます。
サブスクとは、一度きりの取引ではなく、
続けてもらうことを約束するモデル
です。
だからこそ、サブスクで本当に大事なのは、
最初の満足ではなく、信頼関係の継続です。

パターンで見る、単発とサブスクの発想の違い

同じ「良いものを提供する」でも、
発想がまったく違います。

パターンA:単発ビジネスの発想
「今回、満足してもらえればいい」
「売れれば、それで完結」
「次に会わなくても、取引は成立する」

パターンB:サブスクビジネスの発想
「今月も、選ばれ続けなければいけない」
「一度の満足では、契約は続かない」
「次も会うことを前提に、関係をつくる」

パターンAは、一点集中の発想です。
その瞬間の価値を最大化すればいい。
パターンBは、継続の発想です。
その瞬間の価値だけでなく、
次も選んでもらえるかを、常に問われます。
どちらが良い悪いという話ではありません。
ただ、求められている姿勢がまったく違うんです。

サブスクが多い今の時代は、実は大変な時代

サブスクという言葉は、
便利で気軽なイメージで語られがちです。
でも、事業者側から見ると、
サブスクが多い時代は、実は厳しい時代です。
理由は単純です。
逃げ場がないからです。
単発取引なら、一度の取引がうまくいけば、
それで完結します。
でも、サブスクは終わりません。
今月良くても、来月また問われる。
来月良くても、再来月また問われる。
常に選ばれ続けなければいけない緊張感が、
ずっと続きます。
これは、事業者にとって、
決して楽なモデルではありません。

だからこそ、価値あるものだけが残る

でも、この厳しさには意味があります。
選ばれ続けなければいけないからこそ、
本当に価値を出し続けられるものだけが残ります
一度きりの満足で売り切れるものは、
極端な話、質が多少落ちても、
売り切ってしまえば関係ありません。
でも、サブスクはそうはいきません。
質が落ちれば、次の月、選ばれなくなる。
これが積み重なると、
サブスクが多い社会は、
淘汰が起きやすい社会
になります。
生き残るのは、
継続的に信頼を積み上げられるところだけです。
これは、経営の安定にもつながります。
一度きりの売上を追いかけるより、
信頼関係でつながる顧客を積み上げるほうが、
長期で見たときの経営基盤は強くなります。
社会全体で見ても、
質を維持し続けられる事業者だけが残る構図は、
悪いことではないと僕は思っています。

税務顧問業も、実はサブスクです

ここまで書いてきて、
気づいた方もいるかもしれません。
税務顧問業も、サブスク型のビジネスです。
顧問契約は、一度の申告書作成で終わりません。
毎月、毎年、選ばれ続けることが前提です。
一度きちんとした申告書を出せば、
それで信頼が続くわけではありません。
毎月の対応、相談への向き合い方、
一つひとつの積み重ねが問われます。
正直、うちの事務所も、
すべての顧問先に対して
毎月しっかり信頼を積み上げられているか
と聞かれると、まだ課題はあります。
忙しい時期は、対応が
事務的になってしまうこともある。
それでも、単発の申告代行ではなく、
継続的な信頼関係を前提にした顧問業
であることを、僕たちは強く意識しています。
だからこそ、しんこう会計は、
組織テーマとして、
信頼関係構築」に置いています。

今の取引先を、サブスクの目で見直す

最後に、一つだけ提案です。
今ある取引先を、思い浮かべてみてください。
その関係は、単発ですか。
それともサブスクですか。
単発だからといって、
信頼関係を考えなくていいわけではありません。
一回の取引でも、
次も選ばれるかどうかは、必ず問われています。
もしそれが本来は継続すべき関係なら、
一回の満足で終わらせていないか、
見直す価値があります。
逆に、毎月、毎年、
当たり前のように続いている取引先ほど、
その信頼関係が、
実はどれだけ積み重ねられてきたものか、
一度立ち止まって見る価値があります。
サブスクの本質は、便利さではありません。
続けてもらうに値するかどうか
それを問われ続けることです。


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この記事を書いた人

新美 敬太のアバター 新美 敬太 代表税理士

「経営を楽しむ」という想いを大切に、日々経営者の皆さまと向き合っています。
税務・会計だけでなく、同じ目線で悩みや挑戦を共有しながら、一緒に考え、進んでいくことを大切にしています。
私自身も一人の経営者として、まだまだ成長の途中です。
だからこそ、うまくいくことも、迷う時間も、すべて含めて寄り添える存在でありたいと思っています。
経営の中にある楽しさや可能性を感じていただけるように。
これからも、皆さまと一緒に歩んでいきます。

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