税務調査で外注費が給与とされる境界線

「この人、業務委託でお願いしているので、
外注費で処理してます」
経営者の方から、よくこう聞きます。
契約書もちゃんと交わしている。
請求書ももらっている。
だから大丈夫だと思っている方が多いです。
でも、税務調査で外注費は、
かなり高い確率で見られる項目です。
そしてここが一番の落とし穴なのですが、
契約書の名前が「業務委託契約書」
であることは、判断材料になりません

本質は、契約書の文言ではなく、
実態が外注なのか雇用なのかです。
今日は、この「外注費か給与か」の判定基準を
実際の調査の視点も交えて整理します。

なぜ外注費は税務調査で見られるのか

理由はシンプルです。
「外注」として処理するか
「給与」として処理するかで、
会社が払う税金の額が変わってくる
からです。
同じ人に、同じ金額を払っていても、
外注費として処理すれば、
会社の税負担は軽くなります。
給与として処理すべきものだった場合、
会社側に追加の税負担が発生します。
つまり、外注費として処理するだけで、
会社側が得をする形になってしまう

だからこそ調査官は、
「本当にこれは外注なのか、実質は給与ではないか」
という目で必ず見てきます。

判定を分けるのは「契約」ではなく「働き方の実態」

税務署が外注費を給与だと判定するとき、
見ているのは契約書ではありません。
その人が実際にどう働いているかです。
この判定基準は、
消費税法基本通達1-1-1に示されているもので、
主に見られるのは次の5つです。

① 指示の細かさ(指揮命令関係の有無)
会社側が「何時から何時まで働いて」
「この手順でやって」と細かく指示しているか。
指示が強いほど、雇用に近いと判断されます。

② 他の人に任せられるか(代替性の有無)
その業務を、契約している
本人以外がやってもいいか。
「他の人に頼んでもいい」となっていれば
外注らしさが強い。
「必ず本人がやること」となっていれば、
雇用に近づきます。

③ 道具は誰が用意しているか(作業用具の負担)
パソコンや作業道具を会社が用意しているか、
本人が自分で用意しているか。
会社が用意しているほど、雇用寄りに見られます。

④ やり直しのリスクを誰が負うか(危険負担)
途中でミスやトラブルが起きたとき、
その責任を負うのは本人か会社か。
本人が責任を負う契約になっているほど、
外注らしさが強まります。

⑤ お金の払い方(報酬の性質)
「時間単価×稼働時間」で支払っているか、
「仕事の成果」に対して支払っているか。
時給的な支払い方は、
雇用に近いと見られやすいです。

大事なのは、この5つを個別に見るのではなく、
総合的に判断する
という点です。
一つ該当したら即アウト、
というものではありません。
ただ、時間拘束が強く、指示も細かく、
道具も会社が用意している

というように該当項目が重なるほど、
雇用に近いと判断されやすくなります。

同じ「業務委託」でも、扱いはまったく違う

同じ「業務委託契約」という言葉でも、
実態次第で結果は大きく変わります。
二つの場面を並べてみます。

パターンA:給与と判定されやすいケース
毎日9時から18時まで、
会社のオフィスに来てもらう。
会社支給のパソコンを使い、
上司が細かく作業指示を出す。
報酬は「月20万円」で固定。
体調不良で休んでも、
他の人が代わりに来ることはない。

パターンB:外注として認められやすいケース
納期と成果物だけを取り決める。
作業する場所も時間も本人の裁量。
道具は本人が用意し、進め方も本人に任せている。
報酬は成果物の納品に対して支払う。
本人が難しければ、
別のスタッフに引き継いでもらっても
よい契約になっている。
パターンAは、契約書に「業務委託契約書」
と書いてあっても、実態は雇用です。
パターンBは、実態として外注の要件
を満たしています。
契約書の文言をどれだけ整えても、
実態が伴っていなければ意味がありません。

給与と判定されると、何が起きるか

もし調査で「これは実質、給与だ」と判定されると、
影響は一つでは済みません。
まず、天引きし忘れていた税金を、
まとめて会社が払うことになります。

給与を払うとき、会社は本人の代わりに
所得税の一部を天引きして、
国に納める義務があります。
外注費として処理していると、
この天引きをしていません。
給与だったと判定されると、
天引きしていなかった分を、
まとめて追加で払うことになります。
さらに、この「天引きし忘れ」には、
ペナルティとして不納付加算税がかかります。

調査で指摘された場合は、
本来納めるべきだった税額に対して、
原則10%が上乗せされます。
つまり、追加で払う税金そのものに、
罰金のようなものが上乗せされるということです。
加えて、外注先に払った金額に
含まれていた消費税分を
会社の納税額から差し引く扱い(仕入税額控除)も
使えなくなります。
これは、外注費には消費税がかかり、
給与には消費税がかからない
という前提があるからです。
外注費として処理していた間は、
支払った金額の中の消費税分を
会社が納める消費税から
差し引くことができていました。
ところが給与だったと判定されると、
そもそも消費税がかからない
支払いだったことになるため、
この差し引きが認められなくなります。
その分、会社が納める消費税が
まるごと増えることになります。
天引きし忘れの追徴、そこにかかるペナルティ、
消費税の負担増。
複数の負担が重なって発生する
これが、外注費が給与だと判定されると
「痛い」と言われる理由です。

契約書は、実態を裏付ける材料の一つにすぎない

大事なのは、契約書を作ったあとの運用です。
指示の出し方、報酬の決め方、道具の準備。
日々の働き方が、契約書の内容と一致しているか。
ここまで見ないと、本当の意味で外注として
認められる状態にはなりません。
契約書は、実態を裏付けるための
一つの材料にすぎません。

指示の出し方を、一つだけ見直す

外注契約を結んでいる相手が一人でもいれば、
次の一点だけ確認してみてください。
その人への指示の出し方は、
「何を」お願いしているか、
それとも「どう」やるかまで指示しているか。
「どう」まで細かく指示している場合は、
契約の名前に関わらず、
雇用に近い実態になっている可能性があります。
そこに気づけるだけで、
税務リスクへの向き合い方は変わってきます。


YouTube「にいみ税理士のお悩み相談室

YouTube / にいみ税理士のお悩み相談室

日々の会計・税務・経営支援の現場でよくあるお悩みを解決!
さらに、節税のポイント、資金繰り、事業計画のヒントなどをわかりやすく解説しています。
気になる方は、ぜひチャンネル登録もよろしくお願いします!

よかったらシェアお願いします
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

新美 敬太のアバター 新美 敬太 代表税理士

「経営を楽しむ」という想いを大切に、日々経営者の皆さまと向き合っています。
税務・会計だけでなく、同じ目線で悩みや挑戦を共有しながら、一緒に考え、進んでいくことを大切にしています。
私自身も一人の経営者として、まだまだ成長の途中です。
だからこそ、うまくいくことも、迷う時間も、すべて含めて寄り添える存在でありたいと思っています。
経営の中にある楽しさや可能性を感じていただけるように。
これからも、皆さまと一緒に歩んでいきます。

目次