「顧問料は払ってるけど、説明だけなんですよね」
こんな話を、経営者の方からよく聞きます。
ちゃんと仕事はしてもらっている。
報告もきちんと来る。
でも、何かが足りない。
これ、専門家に対する
不満に限った話じゃないと思っています。
広告代理店、制作会社、コンサル、士業。
どんなサービスにも、同じ構造の不満があります。
行き着くのは「アドバイスがない」ということ。
でも、もう少し踏み込んで考えると、
問題は「否定ばかりされる」ことでも、
「仕事が雑」なことでもありません。
作業は完璧なのに、思考が止まっていることです。
付加価値の正体は「情報」ではなく「思考」
サービスを受ける側が本当に求めているのは、
正確な作業や、丁寧な報告だけではありません。
どうすれば良くなるのか。
どうすれば前に進められるのか。
つまり「次、どうするか」です。
一方で、多くのサービス提供者がやっているのは、
「頼まれたことを、正確にやる」
「現状を、正確に報告する」
ことです。
これ自体は、間違っていません。
むしろ、これができない会社の方が多いです。
でも、受け手が本当に欲しいのは、
正確な作業の先にある一手です。
作業は完璧なのに、そこで思考が止まっている。
これが、多くのサービスに対する
不満の正体だと思っています。
「代行する」か、「一緒に考える」か
わかりやすく、二つのパターンで比べてみます。
パターンA:頼まれたことを、正確にやって終わる
「ご依頼の通り、対応しました」で終了。
パターンB:頼まれたことをやった上で、問いを投げる
「これ、どう見ますか?」「次、どう動きます?」
パターンAは、正確な仕事です。
パターンBは、正確な仕事に、
もう一言加えただけです。
でも、受け手の頭の中で起きることは
まったく違います。
パターンAの後、相手は「終わった」で完結します。
パターンBの後、相手は「考える」が始まります。
ここで大事なのは、
サービス提供者が答えを出すことではありません。
受け手自身が、
次の一手を考えるための
材料と問いを渡すことです。
判断の主体は、あくまで受け手側です。
サービス提供者の仕事は、
専門性を相手の言葉に翻訳し、
その思考を引き出す問いを投げること。
答えを渡すのではなく、考える入り口を渡す。
この違いが、対価に見合う
価値を生めるかどうかを分けます。
なぜ「作業」で止まってしまうのか
ここで一つ、
提供する側の事情も正直に書いておきます。
多くのサービス提供者にとって、
「依頼されたことを正確にやる」ことが
自分の仕事の範囲だという意識があります。
これは、ある意味で正しい姿勢でもあります。
勝手に踏み込みすぎるのも問題です。
でも、そもそも「一緒に考える」
「問いを投げる」ところまで、
踏み込む訓練を受けていない提供者が
多いのも事実です。
対価=作業の対価、という無意識の線引きが、
どこかにあるのだと思います。
でも、本質はそこじゃありません。
サービスの価値は、「代行」ではなく「伴走」にある
サービスの本当の価値は、
作業を正確にこなすことではなく、
受け手が自分で次の一手を考えられるように、
翻訳し、問いを投げることです。
作業を代行するだけなら、
極端な話、精度が上がれば上がるほど、
いずれ機械や仕組みに置き換わっていきます。
でも、「一緒に考える」ことは、
簡単には置き換わりません。
経営学やマーケティングの世界に、
「サービス・ドミナント・ロジック
(S-Dロジック)」
という考え方があります。
ざっくり言うと、
価値は提供者が一方的に作るものではなく、
提供者と受け手が一緒になってつくるもの、
という発想です。
これまでの「モノを渡して終わり」という発想から、
「一緒に価値をつくる(価値共創)」
という発想への転換とも言われています。
まさに、パターンBがやっているのはこれです。
答えを渡すのではなく、
受け手と一緒に価値をつくる。
これができるかどうかが、
「作業係」で終わるか、
「意思決定のパートナー」
になれるかの分かれ目だと思っています。
うちの事務所も、まだ発展途上です
正直に書きます。
これは、税理士業界に限った話でも、
他社の話でもありません。
うちの事務所自身、まだうまくできていません。
うちには、二つのプランがあります。
スタンダードプランは、数字の説明が基本。
社外CFOプランは、数字の先、
次の一手を一緒に考えるところまで
踏み込む設計です。
この二つを分けているのは、
「説明で終わる」ことが悪いのではなく、
それが必要な場面もあるからです。
でも、これがきれいに機能しているかというと、
正直まだまだです。
どこまでがスタンダードで、
どこからが社外CFOなのか。
この線引きが、実はかなり難しい。
そして、踏み込む側の質を、
担当者によらず
均一に保つのも簡単ではありません。
「一緒に考える」というのは、
マニュアル化しにくい仕事です。
これは、どの業界のサービスでも、
同じ難しさを抱えているのではないかと思います。
次の場面で、変えられること
難しいことをする必要はありません。
次に誰かに何かを頼まれたとき、
あるいは自分がスタッフや
取引先に何かを渡すとき、
最後に一言、これを付け加えてみてください。
「これ、どう見ますか?」
答えを出す必要はありません。
問いを投げるだけでいい。
相手が自分で考える一歩を後押しする。
それだけで、その仕事の質は変わり始めます。
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