経営の出口を決めないまま走っていませんか

「純資産がかなり積み上がってきたんですけど、
これって良いことですよね?」
経営者からよくこういう相談を受けます。
もちろん、悪いことではありません。
でも、僕はいつも聞き返します。
「最終的に、この会社をどうしたいですか?」
出口によって、今やるべきことはまるで違います。
純資産を積み上げることが正解の場合もあれば、
むしろ逆が正解の場合もある。
出口を決めないまま走り続けると、
気づいたときに取り返しがつかない状況に
なっていることがあります。

出口は4つある

法人を経営していくにあたって、
いつかは必ず「会社をどう終わらせるか・どう引き継ぐか」
という局面が来ます。
その出口は、大きく4つです。

  1. 廃業——会社を計画的にたたんで終わる
  2. M&A——第三者に会社を売却する
  3. 事業承継——息子や従業員に引き継ぐ
  4. 上場(IPO)——株式を公開して成長を続ける

この出口がないと、長期の戦略は立てられません。
5年後・10年後に自分がどこへ向かうのかが見えていないと、
事業計画も、財務戦略も、採用も、
すべてがその場しのぎになっていく。
出口は「終わりの話」ではなく、今の経営判断の根拠です。

税理士として、ここが最も大事だと思っている

顧問税理士として経営者に関わる立場から正直に言うと、
この出口設計こそが、
経営において最も大事な部分だと思っています。
でも、緊急性がない
今日売上が立たなくなるわけでも、
明日資金繰りが詰まるわけでもない。
だから後回しになります。
その結果、取り返しのつかない状況になって苦労しているケースを
これまで何度も見てきました。
純資産が気づいたら5億を超えていた。
後継者に渡そうとしたら億単位の税負担が発生することがわかった。
でも、もう時間がない。
本来であれば、こうした
出口を早い段階から一緒に設計する
のも税理士の仕事だと思っています。
うちの事務所でも、まだ十分にできているとは言えません。
それでも、意識しているかどうかで、
経営者に提供できる価値はまったく変わってきます。
このような重要性を顧客に伝え、一緒に考えること
税理士の大切な役割だと思っています。

事業承継なら、長期の対策が必須

事業承継を考えているなら、
早く動けば動くほど選択肢が広がります。
例えば、会社が好調で毎年2,500万円の利益を出し続けると、
20年で純資産は単純計算で5億円増えます。
純資産が増えるほど株価も上がり、
承継のコストが膨らんでいく。
株価が5億円になった会社を息子や従業員に渡したいとします。
今すぐ贈与すると贈与税は約2億7,000万円
相続まで待っても相続税は約1億9,000万円(子1人の場合)。
どちらにしても、億単位の個人での税負担が発生します。
では対策はどうするか。
シンプルな一例が、役員報酬を上げて会社の利益を圧縮することです。
利益を年500万円程度に抑えられれば、
20年経っても純資産の増加は約1億円。
最後は退職金で使い切ることも現実的な水準になります。
ただし、役員報酬を上げると毎年の所得税・社会保険料の負担も増えます。
それでも、個人資産に早く移すことで長期資産運用が可能になる
というメリットがあります。
税負担を払いながらでも、個人の金融資産として積み上げていく戦略です。

非上場株のままだと、相続時にお金が動かせない

ここで見落としがちな論点があります。
会社の純資産を積み上げても、個人資産に移しても、
いずれ相続は発生します。それは同じです。
ただ、大きな違いがあります。
個人の金融資産であれば、相続税の支払いに充てることができます。
現金や預金があれば、税金を払えます。
一方、非上場株式のままだと、それが難しい。
非上場の株が何億円あっても、すぐに現金化できないからです。
その場合は、相続時に税を支払えるだけの
生命保険で備えておくという手段なども必要になってきます。
事業承継は、こうした複合的な対策を
長期にわたって組み合わせる必要があります。
だからこそ、早めに動くことが大切です。

M&Aなら、利益を最大化する方向へ

M&Aは、事業承継と真逆の発想が必要です。
M&Aの売却価格は、
簡単に言うと「会社の利益の何倍か」で決まります。
利益が大きいほど、売却価格が上がる構造です。
つまり、役員報酬を上げて利益を削ると、
売却価格も下がってしまう。
M&Aを出口に考えるなら、 利益を最大化しながら
会社の収益力を高めていくことが基本戦略になります。
純資産を積み上げることも評価に加わりますが、
「稼げる会社かどうか」が買い手の最大の関心事です。

廃業・上場はどうか

廃業は、倒産ではありません。
計画的に会社をたたむ、れっきとした経営判断のひとつです。
負債を残さず、資産を整理して、
キャッシュを手元に残しながらきれいに終わらせる。

それも立派な出口です。
上場(IPO)を目指すなら、
利益・内部管理体制・ガバナンスの整備が求められます。
財務の透明性と成長性が問われる世界であり、
経営の在り方そのものが変わっていきます。
いずれの出口も、事業計画と連動しています。
どの出口を選ぶかによって、
採用・投資・財務戦略のすべてが変わってきます。
出口は終わりではなく、経営全体の設計図の起点です。

「まだ先の話」が一番危ない

目先の節税に走る人も多いですが、
出口戦略を考えることの方が、大きな意思決定です。
「出口なんてまだ先の話」 そう思っている経営者は多いです。
でも、本質はこうです。
出口を仮置きするだけで、今日の財務判断が変わる。
役員報酬をどう設定するか。
純資産をどこまで積み上げるか。
保険をどう活用するか。
これらすべてが、出口の選択と連動しています。
緊急性がないから後回しになる。
でも、後回しにし続けた結果、 選択肢がなくなってから気づく。
そのパターンを、何度も見てきました。

今日の一歩目

難しいことは何もありません。
今日一つだけやってみてください。
自分の出口を、一つ仮置きしてみる。
廃業・M&A・事業承継・上場。
どれが一番近いイメージか。
「なんとなくこれかな」で構いません。
その一つの仮置きが、
明日からの経営判断を少しずつ変えていきます。


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この記事を書いた人

新美 敬太のアバター 新美 敬太 代表税理士

「経営を楽しむ」という想いを大切に、日々経営者の皆さまと向き合っています。
税務・会計だけでなく、同じ目線で悩みや挑戦を共有しながら、一緒に考え、進んでいくことを大切にしています。
私自身も一人の経営者として、まだまだ成長の途中です。
だからこそ、うまくいくことも、迷う時間も、すべて含めて寄り添える存在でありたいと思っています。
経営の中にある楽しさや可能性を感じていただけるように。
これからも、皆さまと一緒に歩んでいきます。

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