AIは壁打ちできる。でも、「やりましょう」とは言わない。

先日、ある経営判断について
自分自身でAIに相談してみました。
論点を整理して、選択肢を並べて、
メリットとデメリットを出してもらう。
そこまでは完璧でした。
でも最後に「どっちがいいと思う?」と聞くと、
「どちらにもメリットがあり、
状況によって異なります」
と返ってきました。
わかってる。
でも、それじゃない。
AIに相談するたびに、同じ壁にぶつかります。
情報は出てくれて、整理もしてくれる。
でも、最後の一言が出てこない。

この感覚、経営者の方なら
一度は経験があるのではないでしょうか。

AIが得意なこと、そして役割分担

AIは、情報を整理するのが圧倒的に速いです。
売上の推移、計画との乖離、市場の動向。
こうしたデータを読み解いて、
論点を整理することは得意です。
また、オープンクエスチョンで
頭の中を整理してくれたり、
膨大なデータと専門的な見解を踏まえて
導いてくたりもします。
壁打ち相手としても、優秀です。
うちの事務所でも、
AIはすでに欠かせない存在になっています。

使わない選択肢はないと思っているし、
使いこなせるかどうかが、
これからの差になると感じています。
AIは日々進化しています。
ハルシネーション(もっともらしい嘘をつく問題)も減ってきました。
今後もその精度は増すし、
利用度も信頼性も上がっていく
でしょう。
それでも、役割分担は明確になると思っています。
情報や数字を渡されるだけでは、人は動きません。
でも「この数字、一緒に乗り越えましょう」
と言ってくれる人には、感謝が生まれます。
技術的に完璧でも、「人がやっているから」
意味が生まれるものがある。

経営の「やりましょう」も、同じ構造です。

決算書の説明は、もうAIにできる

決算書を見て、前年比を説明する。
予実の乖離を整理して、その原因を示す。
こうした作業は、
すでにAIが担える領域に入ってきています。
だからこそ、私たちも
AIを積極的に取り入れています。
やれることはAIに任せる。
その分、人にしかできないことに集中する。

これが今の正直なスタンスです。
ただ、分析して説明するだけでは、
価値は下がっていきます。

もちろん大切な仕事だからやるべきです。
でも、それだけでは足りなくなっています。
本当に価値があるのは、その先です。

「やりましょう」の一言が、決断を動かす

例えば、こんな場面があります。
利益が出ていて、
設備投資を迷っている社長がいます。
「必要なのはわかってる。
でも大きな買い物だし……」
と止まっている状態です。
財務を見れば、返済余力も資金繰りも問題ない。
そのとき、「やりましょう。
キャッシュフローはこう動きます、
返済はこう回ります」
と根拠ごと背中を押せるかどうかです。
あるいは、売上が落ちて
縮小を考えている社長がいます。
守りに入っているけれど、
財務を見ると手元資金はまだある。
固定費の構造も悪くない。
「縮小より先に、ここに集中投下しましょう」と、
別の選択肢を示して
一緒に踏み出せるかどうかです。
分析はAIでもできます。
「売上が落ちています」
という事実の整理まではできる。
でも、そこから「だからこそ今です」
と言えるかどうか。
最終判断は、もちろん社長がします。
でも、その手前の「一言」に、
本当の価値があります。

その一言を、AIから言われても動かない

仮にAIが「やりましょう」と言ったとして
、その言葉で経営者は動くでしょうか。
おそらく動かないと思います。
同じ「やりましょう」でも、
自分の会社のことを長く見てきた
人間から言われる
のとでは、
受け取り方がまったく違います。
これはAIの能力の問題ではありません。
AIがすごくないという話でもない。
人は、人からの言葉に意味を求めます。
信頼関係があって、
一緒に考えてきた文脈があって、
専門的な見地もある。
そういう人間からの一言だから、
背中が押されるのです。
AI化が進むほど、逆説的に、
この価値は上がっていくと思っています。

正直に言うと、自分もまだ言えていない

ここは正直に書きます。
「やりましょう」は、勇気がいります。
最終判断は社長がするとはいえ、
その決断が成功するか失敗するかは
誰にもわかりません。
だから、この一言はいまでも
なかなか出てきません。
でも同時に、自分自身も経営者として、
この一言をずっと求めています。
税理士で、専門知識もある。
AIも使いこなしているつもりです。
それでも、自分の判断に
確信が持てないときがあります。
専門的な見地から背中を押してくれる人が、
自分にもいません。

そのもどかしさは、
顧問先の経営者と同じだと思っています。
経営者は、自社のことを誰より考えています。
やるべきことは、頭の中にあることが多い。
でも、一歩が踏み出せない。確証が持てない。
自信が持てない。
その「一歩」を一緒に踏み出してくれる人を、
多くの経営者が求めています。

今日できること

次にAIに経営の相談をするとき、
最後にこう聞いてみてください。
「あなたならどうする?」
AIをフル活用しながら、
それでも最後に感じる物足りなさがあるはずです。
その物足りなさが、
本当に必要としているもののサインです。
情報や分析ではなく、
自分の状況を知っていて、
一緒に考えてくれて、
最後に「やりましょう」と言ってくれるパートナー。
AIと上手に使い分けながら、
そういう存在を持てるかどうか。
それが、AI時代の経営の差になると思っています。


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この記事を書いた人

新美 敬太のアバター 新美 敬太 代表税理士

「経営を楽しむ」という想いを大切に、日々経営者の皆さまと向き合っています。
税務・会計だけでなく、同じ目線で悩みや挑戦を共有しながら、一緒に考え、進んでいくことを大切にしています。
私自身も一人の経営者として、まだまだ成長の途中です。
だからこそ、うまくいくことも、迷う時間も、すべて含めて寄り添える存在でありたいと思っています。
経営の中にある楽しさや可能性を感じていただけるように。
これからも、皆さまと一緒に歩んでいきます。

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