「これ、社用車にできますか?」
経営者の方から、こういう相談を
受けることがあります。
対象は、いわゆる高級車。
フェラーリのようなスポーツカーのこともあれば、
外車のセダンのこともあります。
こういう相談を受けたとき、
僕がまず考えるのは「高いか安いか」
ではありません。
見ているのは、その車をどう使う予定か、
それだけです。
「高いから危ない」は思い込みです
高級車の経費化というと、
なんとなく「税務調査で狙われそう」
というイメージがあります。
でも、実際のところ、
高いから否認される、というルールはありません。
本質は、高級車かどうかではなく、
事業でどう使っているかです。
これは以前、ブランド品の経費判断について
書いたときと、まったく同じ結論になります。
減価償却の仕組みと、誤解されやすいポイント
高級車を購入すると、
その金額を一括で経費にはできません。
減価償却という形で、
耐用年数に応じて経費化していきます。
普通乗用車の法定耐用年数は6年です。
ただし、定率法という償却方法を選ぶと、
初年度から数年にかけて、
償却できる金額が大きくなります。
ここでよく誤解されるのが、
「初年度に一気に経費化できる」という感覚です。
実際は、耐用年数に応じて償却していくだけで、
魔法のように税金が消えるわけではありません。
高額な車を買えば、それだけ資金は出ていきます。
償却はあくまで、支出したお金を、
会計上どう配分するかという話です。
「2ドアはダメ」は、よく聞く話ですが
高級車の経費化の話になると、
「2ドアの車はプライベート用とみなされやすい」
という話を聞くことがあります。
実務の現場でも、たまに耳にする基準です。
でも、これを突き詰めて考えると、
少し不思議なことに気づきます。
軽トラックも、2ドアです。
ドアの数だけを基準にするなら、
軽トラックも私用車扱いになってしまう。
そう考えると、ドア数そのものが
本質ではないことが分かります。
見るべきなのは、車の形状ではなく、
その車を、実際にどう使っているか
という実態です。
これは単なる屁理屈ではありません。
軽トラックであっても、
荷物を運ぶためではなく、
単なる移動手段として
使われていることもあります。
逆に、高級車であっても、
機材や商品を運ぶなど、
運搬目的で使われているケースもあります。
つまり、車の見た目や種類だけでは、
使われ方は決まらないということです。
だからこそ、ドア数のような形状ではなく、
実際の使い方を見る必要があります。
実際に見られるのは「車体」より「周辺費用」と「台数」
ここからは、実際に調査に立ち会っていて
感じる実感です。
車体そのものの経費化自体は、
実務上、それほど強く否認されません。
理由はシンプルです。
車が高級かどうかを基準に否認するのは、
調査官にとっても線引きが難しいからです。
高いか安いかという感覚は主観が入りやすく、
そこを根拠にするのは、
調査官側も分が悪いところがあります。
一方で、しっかり見られるのは、
修理代や維持費などの周辺費用です。
高級車であれば、当然、
パーツ代や修理代も高額になります。
金額が大きいからこそ、
その内容が事業実態に見合っているか、
きちんと確認される。
車体本体よりも、こうした周辺費用のほうが、
結果的に細かく見られる場面に
なりやすいというのが実感です。
もう一つ意識しておきたいのが台数です。
1台であれば、事業用として
自然に説明できることが多いですが、
事業規模に対して台数が増えてくると、
一台一台について「なぜこの台数が必要か」
という説明が求められます。
会社の規模や営業スタイルに対して、
台数が見合っているかどうか。
車体そのものより、所有目的や周辺費用、
台数の説明のほうが重要だ、
というのが、実務での率直な実感です。
保有目的と年式で変わる、減価償却の可否
高級車の経費化で、
もう一つ実務でよく出てくるのが、
保有目的と中古車の年式の話です。
まず保有目的について。
高級車の中には、乗るためではなく、
値上がりを見込んで転売目的で
保有されているケースがあります。
その場合、その車は事業用の固定資産ではなく、
棚卸資産(在庫)として扱われます。
減価償却は「使うことで価値が減る資産」
が前提のため、
乗らずに転売目的で持っている車には、
そもそも当てはまりません。
「高級車だから」ではなく、
「何のために持っているか」で扱いが変わる、
という点です。
もう一つが、中古車の年式です。
普通自動車の法定耐用年数は6年ですが、
中古車の場合は、簡便法という計算式で
耐用年数を出し直します。
(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×20%)
新車登録から3年10ヶ月以上経過した中古車
(いわゆる「4年落ち」)にこの式を当てはめると、
耐用年数はちょうど2年になります。
耐用年数2年の資産を定率法で償却すると、
償却率は1.000。
つまり、条件が揃えば、
実質12ヶ月で取得価額のほぼ全額を
経費にできるということです。
ただし、減価償却は月割計算のため、
決算間際に購入すれば、
その年の経費になるのは
ごくわずかな月数分だけです。
狙って年式を選んでも、
購入するタイミングを間違えると、
効果は大きく変わります。
まだ事例は多くない、それでも見えてきたこと
正直に言うと、
高級車の経費化についての相談は、
そこまで頻繁にあるわけではありません。
それでも、実際に調査に立ち会う中で、
「車体そのものより、所有目的や周辺費用、
台数の説明のほうが重要だ」
という感覚は、
はっきりと積み上がってきています。
高級車だからという理由だけで、
必要以上に身構える必要はありません。
むしろ意識すべきは、
その車を、どう使い、
どう説明できる状態にしておくか
という、地に足のついた部分です。
経費判断は、車種ではなく使い方で決まる
高級車を社用車にできるかどうか。
答えはシンプルです。
車が高いかどうかではなく、
事業でどう使っているか。
そして、その使い方を、
きちんと説明できる状態にしておけるかどうか。
保有目的、年式、周辺費用、台数。
実務で見られているのは、そういう部分です。
高級車だからと必要以上に怖がるのではなく、
使い方と説明できる状態を、先に整えておく。
それが、経費判断における
一番大事な視点だと思っています。
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