経営者なら、小規模企業共済は満額でやるべきです。

「節税したいけど、手元の資金は減らしたくない」
経営者の方からよく聞く相談です。
経営者の節税策はいくつもあります。
でも、その中で小規模企業共済だけは別格です。
「これを勧めない税理士は変えた方がいい」
と言われるくらい。
入る入らないの結論はその人次第です。
ただ、経営者なら一度は必ず検討すべき制度です。

小規模企業共済の基本

経営者・役員・フリーランスのための、
税制優遇つきの退職金積立制度です。
掛金は月1,000円〜7万円。
途中で増減も可能です。
ここで一つ、勘違いされやすいポイント。
この掛金は、会社や事業の経費にはなりません
法人役員でも個人事業主でも、
個人の財布から払います。
ただし、その払った金額は個人の所得税計算上、
全額が所得控除
されます。
法人の経費にはならないけれど、
個人の税金は確実に下がる。
課税所得1,000万円の方が年84万円かけた場合、
税率約43.7%
(所得税33%+住民税10%+復興税等)として、
84万円 × 43.7% = 年間約36.7万円の節税
20年続ければ、約734万円です。
ちなみに似た制度にiDeCoがありますが、
原則60歳まで引き出せません。
経営者の機動力という意味では、
小規模企業共済の方が圧倒的に
使い勝手がいいです。

「お金が出ていく」を打ち消す貸付制度

掛金を払う以上、一旦はお金が出ていきます
所得控除があっても、キャッシュは確実に減る。
ただ、この制度には貸付制度があります。
積立金の7〜9割を、
年1.5%ほどの利率で借りられる仕組みです。
例えば、月7万円を10年積み立てると
積立金は840万円。
その約80%、672万円を年利1.5%で借りられます。
仮にこの672万円を年5%で運用できれば、
金利差で年20〜30万円のプラス。
運用を推奨する話ではなく、
構造としてこういう選択肢がある、
ということです。
節税効果は受け取りつつ、
お金は寝かせず動かせる。
この自由度を持つ節税策は、他にありません。
だからこそ、
苦しくても満額を目指す価値があるわけです。

生命保険との比較。そもそも土俵が違う

経営者向けの保険は、よく
税金が減ることを前面に出して勧められます。
法人で契約すれば保険料の
一部または全部が損金になるので、
たしかに目先の税負担は軽くなる。
でも、本来保険は保証で考えるべきものです。
万一のときに、会社や家族を守る。
そのための保証を買うのが保険。
そこに損金性や投資のリターンを絡めて
判断するから、おかしくなる。
保険は保険、節税は節税、投資は投資。
保証が必要なら保険に入る。
節税で資産形成したいなら小規模企業共済。
別物として整理するのが健全です。

倒産防止共済との比較。個人での運用は要注意

倒産防止共済(経営セーフティ共済)も、
経営者によく勧められます。
最大年240万円、累計800万円まで
損金算入できる。
入口の効果は大きい。
ただし、解約時は全額が益金になります。
特に個人事業主の場合、所得税は累進課税。
たとえば、解約する年の所得が高ければ、
入口で20%の税率で引いたものが、
出口で33%や40%の税率で課税される、
というケースもあり得ます。
こうなると、税率の高い時に戻ってきて
結果的に損
ということになりかねません。
だから個人で使う場合は、
満額を一気に積むよりも、
所得とのバランスを見ながら少しずつ積み、
解約のタイミングも分散するのが現実的です。
法人なら税率はほぼ一律だし、
出口で役員退職金にぶつけられるので使いやすい。
個人は出口設計が難しい制度、
と理解しておくべきです。

出口の話。退職所得は本当に強い

事業を辞めたとき、
積み立てたお金は退職金として戻ります。
この退職所得は、税制上
もっとも優遇された区分
です。
退職所得控除があり、その上で1/2課税。
20年で1,500万円受け取った場合、
控除800万を引いた700万がさらに半分の350万。
この350万円にだけ課税されます。
入口で年間約36.7万円ずつ節税しながら、
出口でもこの優遇。
入口と出口、両方で得をする制度は
そうそうありません。
ただ一点、共済金と
他の退職金(役員退職金など)を
同じ年に受け取ると、
退職所得控除の通算ルールで効果が減る
ことがあります。
複数の退職金を受け取る予定がある方は、
受取年を分けるのが基本です。

それでも注意点はある

加入期間が20年未満で任意解約すると
元本割れします。
ただし、掛金は最低1,000円まで下げられるし、
事業をやめざるを得ない場合は「事業廃止扱い」
で目減りせず満額戻ります。
課税所得が低い時期(赤字や創業初期)は、
所得控除の効果が薄い。
所得が出始めてから増やしていけばいいです。
ちなみに僕自身は、
満額の月7万円でやっています
毎月の支出としては小さくない。
でも貸付制度があるから、
本当に苦しい時はそこを使えばいい。
経営者なら、多少苦しくても
満額やるべき制度
だと思っています。
今すぐ満額が難しい方も、
いきなり7万円を目指す必要はありません。
所得の伸びに合わせて、
少しずつ掛金を上げていく。
「いつか満額でやる」を目標に置いておくだけで、
判断が変わってきます。

経営者なら、まず検討すべき制度

なぜ別格なのか。整理するとこうです。

  • 元本割れリスクが実質ない(事業廃止なら満額戻る)
  • 出口で課税が爆発しない(退職所得扱い)
  • いざという時に借りられる、しかも運用にも回せる

この3点を同時に満たす制度は、
他に見当たりません。
だから、「これを勧めない税理士は変えた方がいい」
とまで言われるわけです。
入っていないなら、
月1,000円でもいいので始めてみる。
入っているなら、
今の所得水準と掛金が合っているか見直す。
今すぐ満額にできなくても、
満額を目指すこと自体を一つのゴールに置く
それだけで、長期の資産形成の景色が変わります。
派手な制度ではありません。
ただ、正しく理解して使っている人だけが、
長期で確実に恩恵を受けられる制度です。


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この記事を書いた人

新美 敬太のアバター 新美 敬太 代表税理士

「経営を楽しむ」という想いを大切に、日々経営者の皆さまと向き合っています。
税務・会計だけでなく、同じ目線で悩みや挑戦を共有しながら、一緒に考え、進んでいくことを大切にしています。
私自身も一人の経営者として、まだまだ成長の途中です。
だからこそ、うまくいくことも、迷う時間も、すべて含めて寄り添える存在でありたいと思っています。
経営の中にある楽しさや可能性を感じていただけるように。
これからも、皆さまと一緒に歩んでいきます。

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