ある会社で、スタッフに数字の目標だけを
伝えている場面を見たことがあります。
「今月はこの数字を目指そう」
「この件数をこなそう」
言葉自体は、間違っていません。
スタッフも、真面目にこなします。
でも、どこか他人事なんです。
やる気がないわけではありません。
サボっているわけでもありません。
ただ、その数字が自分にとって何なのかが、
見えていない。
だから、動きに実感がこもらない。
そりゃそうだよな、と思いました。
数字だけを渡されても、
自分事になんて、なりようがないんです。
数字は「目的」ではなく「結果」
売上や利益は、経営をしていれば当然大事です。
数字がなければ、会社は続きません。
ですが、数字だけを追いかける組織にいると、
メンバーはどこかで疲弊していきます。
指示された数字をこなすだけの毎日になり、
実感の持てない仕事が積み重なっていく。
でも、本質はここにあります。
仕事は手段であり、
目的は仕事を通じて仲間が成長することです。
数字は、その結果として付いてくるものです。
数字を目的にした瞬間、
スタッフにとって仕事は
「自分の成長のための場」ではなく
「会社の数字を埋めるための作業」になります。
主体性がないと、仕事は「作業」で終わる
言われたことをただこなすだけの状態では、
仕事は「作業」にしかなりません。
作業には、成長がほとんど伴いません。
同じことの繰り返しだからです。
これが変わる瞬間があります。
パターンA:数字だけを渡す
「今月はこの数字でお願いします」
スタッフは、こなします。
でも、それ以上でも以下でもありません。
パターンB:方向性を共有し、
活かし方を一緒に考える
「うちはこっちに進みたい。
あなたはどこで力を発揮できそう?」
スタッフは、考え始めます。
「自分ならこの部分で貢献できるかもしれない」
この瞬間に、主体性が生まれます。
もちろん、言われたことをやって
仕事を覚える過程は、誰にでもあります。
最初はそれでいい。
それも必要な時期です。
でも、そのままで止まってしまうと、
正直に言ってつまらないです。
主体性を持って、それが成長につながっていく。
そのときに初めて、仕事は楽しくなります。
主体性を持った瞬間から、
仕事の時間の質そのものが変わります。
表情や動きが変わってきます。
指示待ちのときとは、
発揮される力がまったく違います。
人が一日の中で最も長く関わるのが、
仕事の時間です。
その時間の質が上がることは、
そのまま、人としての成長実感につながります。
うちのミッションは、
「経営を楽しく、スマートに!」です。
この「楽しく」は、雰囲気の話ではありません。
主体性を持って仕事に向き合い、
実力を発揮できている
状態そのものを指しています。
もう一つのバリュー
うちには、いくつかのバリューがあります。
そのうちの一つが
「いつでも、誠実に丁寧に!」です。
僕自身もいい加減な部分がある人間です。
楽をしたい、都合よく振る舞いたい。
そういう気持ちは、誰にでもあると思います。
だからこそ、これは
当たり前だけど、意識しないとできないこと
だと捉えています。
嘘をつかない。
真摯に対応する。
面倒でも丁寧に説明する。
一つひとつは、地味なことです。
派手な成果にはなりません。
でも、これを積み重ねることでしか、
人格は磨かれません。
そして誠実さが積み重なった結果として、
初めて周囲から信頼される人になります。
信頼される先は、顧客だけではありません。
家族からの信頼も、
同じ積み重ねの上に成り立っています。
ここでも、構造は同じです。
丁寧な対応という日々の仕事は手段であり、
信頼される人格者になることが目的です。
きれいごとだけでは、人は動かない
ここまで、主体性や誠実さの話をしてきました。
でも、正直に言います。
これだけだと、きれいごとに聞こえると思います。
成長ややりがいがあっても、
給料が伴わなければ、人は働き続けられません。
これは経営者として、避けて通れない現実です。
多くの零細企業に言えることですが、
業績が上がらなければ、原資がありません。
原資がなければ、給料を上げようがない。
どれだけ理念を語っても、
上げる原資がなければ、
絵に描いた餅で終わります。
だからこそ、僕が一番意識しているのは、
成果はきちんと還元することです。
成長を促す仕組みと、正当な対価を払う仕組みは、
セットでなければ意味がありません。
主体性を発揮して、誠実に積み重ねた結果が、
給料という形でも本人に返ってくる。
この実感があって初めて、理念は現実になります。
理念と現場をつなぐ実践
理念を語るだけでは、現場は変わりません。
うちで意識しているのは、こういうことです。
年に一度、経営方針発表の場を設け、
会社の方向性を「決定事項の伝達」ではなく
「対話の出発点」として共有する。
そこで終わりにせず、日々の情報発信を通じて、
方針や考え方に継続的に触れる機会をつくる。
成果だけでなく、誠実な対応や丁寧さそのものを
フィードバックの対象にする。
そして、業績が上がったときは、
給料という形で還元する。
一度の発表だけでは、
方針は記憶から薄れていきます。
継続的な発信があって初めて、
方針は「会社の目標」から「自分の目標」に
変わっていきます。
ドラッカーも、
目標は上から与えるものではなく、
本人が自ら持つべきもの
だという趣旨のことを述べています。
数字を追う仕組みと、成長を促す仕組みは、
両立しないように見えて、実は矛盾しません。
むしろ、主体性と誠実さが
土台にあるチームの方が、
中長期では数字も安定します。
ここは、短期的な効率とは
トレードオフになる場面もあります。
経営者としては、忍耐が要る部分だと
感じています。
言われたことをやるだけでは、つまらない
言われたことをやるだけの仕事は、
正直つまらないです。
でも、主体性を持って、
それが成長につながる仕事は、楽しい。
今度、方針や数字の話を誰かにするときに、
「なぜこの数字が必要か」だけでなく、
「これを通じて、あなたにどう活かしてほしいか」
も添えてみてください。
伝える情報量は同じでも、
受け取る側の実感はまったく変わります。
仕事は手段。
目的は、仕事を通じて仲間が成長すること。
そして、その成長は、
給料という形でもきちんと還元する。
その両輪があって初めて、
理念はきれいごとで終わりません。
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