経営者が、相談相手を選ぶときに見落としていること

「お金のことは、とりあえず税理士に聞いておけば安心」
経営者の方と話していると、
こう思われていることがよくあります。
資金繰り、資金調達、投資判断、借入の是非。
たしかに、どれもお金に関わる話です。
でも、僕はここに、
経営者が相談相手を選び間違える
落とし穴があると思っています。

「誰に相談するか」の前に、「何を求めているか」が抜けている

税理士に相談する。
コンサルタントに相談する。
先輩経営者に相談する。
相談相手を選ぶとき、
多くの経営者は「誰に」から考えます。
近いから。
資格があるから。
評判がいいから。
でも、本当に先に決めるべきなのは、
自分が今、何を求めているかです。
税務上正しいかどうかを知りたいのか。
それとも、経営としてどう判断すべきかを知りたいのか。
この二つは、似ているようでまったく別物です。
そして、多くの経営者はここを区別しないまま、
「とりあえず税理士に」と相談してしまいます。

税理士に何を求めるかで、答えは変わる

うちの事務所は、
税務の手続きだけをやる事務所ではありません。
財務、資金調達、資金繰りまで踏み込んで関わる、
社外CFOとしてのサポートを軸にしています。
数字を整理する。
資金繰り表をつくる。
調達の選択肢を並べる。
借入の返済計画をシミュレーションする。
ここまでは、僕らが伴走できる領域です。
でも、本質はここではありません
どれだけ深く関わっても、
最終的にその選択肢を選ぶのは、経営者自身です。
経済学に、プリンシパル・エージェント理論という考え方があります。
本人(プリンシパル)が、専門知識を持つ代理人(エージェント)に
判断を委ねるほど、本人の意思決定への関与が薄れていく、
という構造です。
社外CFOと経営者の関係も、これに近いものがあります。
CFOが増やせるのは判断のための材料であって、
判断そのものではありません
ここを混同すると、
経営者は「決めてもらう人」を探すことになります。
そして、それは相談相手を間違える一歩目です。

密に関わるほど、相談相手を間違えやすくなる

面白いのですが、
サポートが手厚くなるほど、
この間違いは起きやすくなります。
密に関わって、数字も、資金繰りも、調達も見ていると、
経営者側は「お金のことは、全部聞けばいい」
という感覚になりやすいのです。
正直、これは頼られている証拠でもあるので、
ありがたい話です。
ただ、ここで求められるままに応じ続けると、
経営者自身が「決める」という感覚を、
少しずつ手放してしまいます。
経営者自身に、経営の責任と自覚を持ち続けてもらうことも、
僕らの役割の一つ
だと思っています。
これは、ティーチングとコーチングの違いにも近い話です。
ティーチングは、答えを与えること。
コーチングは、本人に考えさせ、本人に決めさせることです。
社外CFOという立場は、
答えを与えるティーチングではなく、
経営者自身が決められるように材料を整理する、
コーチングに近いスタンスであるべきだと考えています。
とはいえ、密にサポートしていると、
求められるまま応じることが「良いサービス」だと
錯覚しやすいのも事実です。
正直に言うと、この線引きは、
うちの事務所でもまだできていません

信頼関係を大切にしているからこそ、
「ここから先は経営者自身の判断です」と
はっきり線を引くことに、難しさを感じる場面があります。
突き放したいわけでは、決してありません。
でも、応じ続けることが、必ずしも良い関わり方とは限らない
サポートすることと、決めてしまうことは別。
ここのバランスは、信頼関係を築きながら関わるほど、
むしろ難しくなっていくものだと感じています。

期待ギャップは、範囲を決めていないところに生まれる

これは、複数の経営者との関わりの中でよく見る、
一般化した場面です。
ある経営者から、
「銀行から追加融資の提案があったが、
借りるべきかどうか」という相談を受けます。
返済シミュレーションを出し、
金融機関との交渉のポイントも伝えます。
ここまでは、僕らの領域です。
そのうえで、こちらの立場としての意見も伝えます
状況によっては、はっきり「借りた方がいい」と勧めることもあります
材料だけ渡して、あとはご自由に、というのは冷たすぎます。
ただ、そこには技術が必要です。
意見を伝えるときも、
「僕ならこう考えます。ただ、最終的にどうしたいですか」
という問いを必ず添えること。
こちらの意見を伝えつつも、
最終決断の主語を経営者に戻す
この一手間があるかどうかで、
経営者の意思決定への関与の度合いが決まります。
意見を言わないことが良いのではなく、
意見を言った後、決断を本人に返せるかどうか。
ここに、社外CFOとしての技術があると思っています。
投資判断でも、同じ構図がよく起きます。
数字の裏付けや資金繰りへの影響、
こちらの見立ても伝えられます。
それでも、「その投資に賭けるかどうか」は、
経営者にしか決められません。
ここの境界線を、
僕らはまだ完全には言語化できていません。
「どこまでが伴走で、どこからが決断か」
この線引きを明確に伝えられていないケースは、
正直、まだあります。
だからこそ、期待ギャップが生まれます。

税理士を使いこなす経営者は、強い

相談相手を間違えないために、
まずやるべきことはシンプルです。
自分が今求めているのは、
材料なのか、判断なのか。
ここを、自分の中で一度整理してみることです。
材料が欲しいなら、
税理士等を頼ってください。
数字も、選択肢も、しっかり示せます。
でも、決めるのは経営者自身です。
そこを他人に委ねた瞬間、
経営の主導権は少しずつ失われていきます。
税理士を「なんでも聞ける相手」ではなく、
判断材料をくれる相手」として使いこなせる経営者は、
経営者としての軸がぶれません。
そして、その使い方さえ間違えなければ、
税理士は必ず、経営者にとって
良きパートナーになれます。


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この記事を書いた人

新美 敬太のアバター 新美 敬太 代表税理士

「経営を楽しむ」という想いを大切に、日々経営者の皆さまと向き合っています。
税務・会計だけでなく、同じ目線で悩みや挑戦を共有しながら、一緒に考え、進んでいくことを大切にしています。
私自身も一人の経営者として、まだまだ成長の途中です。
だからこそ、うまくいくことも、迷う時間も、すべて含めて寄り添える存在でありたいと思っています。
経営の中にある楽しさや可能性を感じていただけるように。
これからも、皆さまと一緒に歩んでいきます。

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