家を売ったら税金はいくら?知らないと数百万円損する話

「家を売ったら、税金ってどのくらいかかるの?」
こういう話を、よく耳にします。
話を聞くと、たいてい売却価格の話が中心です。
いくらで売れそうか。
いつ売るか。
どの不動産会社に頼むか。
でも、整理すべきはそこだけではありません。
税金がかかるのは、
売った金額ではなく利益に対してだ

ということを、
正しく理解できていることも大切です。
ここが曖昧なまま契約してしまうと、
売却後に「思ったより手取りが少ない」
ということが普通に起こります。
今日は、そのズレが生まれる理由を、
確定申告の仕組みから整理していきます。

確定申告は1つ、でも中身の「所得」は分かれている

まず、大前提の整理です。
確定申告というのは、
基本的に「1つの手続き」です。
年に一度、まとめて行うものです。
でも、その中身は1種類ではありません。
所得は、性質によって細かく分類されています。
給与所得。
事業所得。
退職所得。
そして、不動産や株を売ったときの譲渡所得。
所得税の世界では、
所得は全部で10種類に分類されています。
それぞれ、計算方法も税金のかかり方も違います。
給与所得は、他の所得と合算して、
所得が増えるほど税率が上がる
総合課税・累進課税という仕組みです。
一方、土地や建物の譲渡所得は、
他の所得とは合算せずに、
別枠で税額を計算する
分離課税という仕組みです。
税率は、所有期間によって変わります。
・所有期間5年超(長期譲渡所得):20.315%
 (所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)
・所有期間5年以下(短期譲渡所得):39.63%
 (所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)
同じ「売却益」でも、
所有期間が5年を超えているかどうかで、
税率がほぼ倍違います。
ここを知らないと、
「給与にかかる税率の感覚」で
不動産を売ったときの税金を考えてしまいます。
これが、想定とのズレが生まれる最初の原因です。

譲渡所得の計算式

ここから先は、少し計算の話が続きます。
式が苦手な方は、
数字は読み飛ばしてもらって大丈夫です。
要は、「利益」の出し方によって、
税額が大きく変わる

という一点だけ持ち帰ってもらえれば十分です。
譲渡所得の計算式は、シンプルです。
譲渡価格 −(取得費+譲渡費用)=譲渡所得
税金がかかるのは、この譲渡所得、
つまり利益の部分だけです。
売った金額そのものに、
丸ごと税金がかかるわけではありません。
ここで重要になるのが、取得費です。
取得費とは、その不動産を買ったときに
かかった金額のことですが、
そのまま使えるわけではありません。
土地は年数が経っても劣化しないので、
購入価額がそのまま取得費になります。
でも、建物は違います
建物は時間とともに価値が下がっていくため、
購入代金から減価償却費相当額
差し引いた金額が、
建物部分の取得費になります。
(減価償却費 = 建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数(所有期間))
※償却率は建物の構造(木造・鉄骨・RCなど)によって異なります。
以下は非事業用木造住宅(償却率0.031)を
前提にした試算です。
言葉で言うと、
「建物は年数分だけ価値が減っている前提で、
その減った分を取得費から差し引く」
というだけのことです。
実際の数字で見てみます。

  • 20年前に購入したマイホーム(土地2,500万円+建物1,500万円)
  • 建物の減価償却費相当額
    1,500万円 × 0.9 × 0.031 × 20年 = 約837万円
  • 建物の取得費
    1,500万円 − 837万円 = 663万円
  • 取得費の合計
    2,500万円(土地)+663万円(建物)
    = 3,163万円

このマイホームを7,000万円で売却し、
仲介手数料などの
譲渡費用が210万円かかったとします。
譲渡所得 = 7,000万円 −(3,163万円+210万円)= 3,627万円
ここで一度、何も特例を使わなかった場合の
税額を見ておきます。
所有期間が20年(5年超)なので、
長期譲渡所得の税率20.315%を掛けると、
税額 = 3,627万円 × 20.315% = 約737万円
7,000万円で売れても、
737万円が税金で消える計算です。
ここまでが、特例を知らないまま
計算した場合の姿です。
次の章の特例を使うと、
ここから話が変わってきます。
なお、相続した実家などで
購入時の契約書が残っていない場合、
取得費は、譲渡価格の5%とみなされます。
契約書や領収書が残っているかどうかで、
税額が数百万円変わることもあります。

マイホームには「特例」という選択肢がある

居住用財産の3,000万円特別控除
譲渡所得から、最大3,000万円を
控除できる特例です。
先ほどの例に当てはめると、
課税譲渡所得 = 3,627万円 − 3,000万円
= 627万円
一気に、課税対象が627万円まで下がります。

所有期間10年超の軽減税率の特例
所有期間が10年を超えるマイホームを売った場合、
6,000万円以下の部分については、
税率が14.21%
(所得税・復興特別所得税10.21%+住民税4%)
まで軽減されます。
これを先ほどの627万円に当てはめると、
税額 = 627万円 × 14.21% = 約89万円
先ほどの「特例なし」では約737万円だった税額が、
特例を使うことで約89万円まで下がります。
その差、約648万円です。
特例を知っているかどうかだけで、
これだけ変わります。

買換え特例
新しい家に買い換える場合に、
譲渡益への課税を将来に繰り延べられる特例です。

これらの特例は併用できない組み合わせもあり、
住まなくなってからの期間や所有期間、
共有名義かどうかなど、条件は細かく分かれます。
どれが使えるかは、必ず個別の確認が必要です。

今、家を売るという選択肢が増えている理由

最近、こうした相談が増えている
背景にも触れておきます。
ここ数年、住宅価格は
下がりにくい状態が続いています。
都心部を中心に、高値圏での取引が続いていて、
金利上昇の影響を含めても、
すぐに大きく下落する気配は強くありません。
この状況で、
「今の価格で売れば、住宅ローンを完済しても
税金を払ってお釣りが出る」

という方が、実際に出てきています。
そのお釣りを元手に、
持ち家をやめて賃貸に住み替える。
そういう選択肢を取る方も、
体感として増えてきています。
価格が下がりにくく、金利は上がっている、
という事実だけは、間違いなく今の状況です。

だからこそ、「売る」という選択肢自体を、
一度検討してみる価値はあると思っています。

契約前の一本の相談が、手取りを変える

ここまで整理してきたことは、
どれも契約後では取り返しがつきません。
取得費の証明。
使える特例の確認。
納税までの資金計画。
これらはすべて、
契約前に整理しておくべきことです。
不動産会社との話が進んでから相談に来られると、
使えたはずの特例が間に合わない、
ということも実際にあります。
正式に契約する前に、
一度概算のシミュレーションを取っておく。
それだけで、手取りは大きく変わります。


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この記事を書いた人

新美 敬太のアバター 新美 敬太 代表税理士

「経営を楽しむ」という想いを大切に、日々経営者の皆さまと向き合っています。
税務・会計だけでなく、同じ目線で悩みや挑戦を共有しながら、一緒に考え、進んでいくことを大切にしています。
私自身も一人の経営者として、まだまだ成長の途中です。
だからこそ、うまくいくことも、迷う時間も、すべて含めて寄り添える存在でありたいと思っています。
経営の中にある楽しさや可能性を感じていただけるように。
これからも、皆さまと一緒に歩んでいきます。

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