最近、相談に来る経営者さんの多くが、
先にAIで調べてから来られます。
「AIに聞いたら、こう言われたんですけど」
という前置きから始まる相談が、
ここ半年でかなり増えました。
正直、AIの回答は的確なことが多いです。
税務の一般論としては、間違っていません。
でも、本質はそこじゃないと僕は思っています。
AIの答えは、たぶん間違っていません
AIに税務のことを聞くと、
かなり精度の高い答えが返ってきます。
「経費になるかどうかは事業関連性で判断する」
「自己資本比率は高い方が融資審査で有利」
こうした一般論は、ほぼ正確です。
僕自身、AIを日常的に使っています。
その精度には、正直驚くことも多いです。
だからこそ、AIは使うべきだと思います。
問題は、間違っているかどうかではありません。
正しいことと、十分なことは別だという点です。
AIが返しているのは「知の系譜の末端」です
情報には、系譜があります。
誰かが実際に経験する。
それを言語化して、記事や本に残す。
それがネット上に蓄積される。
AIは、その蓄積を学習して答えを返します。
つまりAIの回答は、
一次情報から何段階も経由した、
知の系譜の末端にあたります。
末端に行くほど、
個別の経過や例外は削ぎ落とされ、
残るのは「平均的に正しいこと」だけになります。
税務や融資の相談で本当に知りたいのは、
たいてい平均ではなく、
自分の状況ではどうなるかの方です。
現場でしか手に入らない情報がある
例えば、ブランド品の経費判断。
税務調査時は疑われやすいものほど、
すぐに現物を見せられる状態にしておく。
これは隠すためではなく、
実態を説明できる状態にしておくためです。
AIに聞けば「事業に必要なら経費になる」
という正論は返ってきます。
でも、日頃どう管理して、
税務調査時にどう対応するかという具体策までは、
なかなか出てきません。
融資でも同じです。
「自己資本比率は高い方がいい」
これは間違いではありません。
でも実際の融資現場では、
その金融機関や時期、支店長、
会社の財務や立場まで含めた、
総合的な判断で結果が変わります。
この「今はどうか」という生の情報は、
ネットにもAIにも落ちていません。
AIだけで動くと、必ずどこかで不都合が起きる
ここで思い出してほしいことがあります。
ネット上の情報だけを信じて行動する。
これが危ういというのは、
もう多くの人が知っています。
検索結果の上位が、
必ずしも正解とは限らない。
広告主の都合が混ざっていることもある。
今どき、それをそのまま鵜呑みにする人は
少なくなってきました。
でも、AIに対しては、
同じ警戒心を持てていない人が多いです。
理由ははっきりしています。
文章がうますぎるからです。
ネットでの検索結果は、玉石混交だとわかります。
発信者が見えるからです。
でもAIの回答は、
整った一つの文章として出てきます。
論理的で、自然で、断定的。
だから、そのまま信じてしまいます。
構造としては、ネット情報と同じです。
出てくる情報だけを信じて行動すれば、
どこかで実態とずれます。
AIだけで判断を完結させると、
必ずどこかで不都合が起きる。
これは、AIの精度の問題ではなく、
情報の受け取り方の問題です。
AIとアナログを、ミックスさせる
だからこそ大事なのは、
AIをやめることではなく、
アナログな確認をミックスさせることです。
経験者に聞く。
実際に会って話す。
「うちの場合はどうですか」と専門家に聞く。
これは、AIを否定する行為ではありません。
むしろ逆です。
AIが整理した一般論を土台にして、
そこに現場の情報を重ねる。
このミックスをすることで、
AIの使い方そのものが上手くなります。
AIに何を聞けばいいかも、
アナログな経験を通じて磨かれていくからです。
AIを”仕組み”ではなく”存在”として捉える
うちの事務所でも、AI推進委員会を立ち上げて、
業務にAIを取り入れる動きを進めています。
資料作成のスピードなどは、
上がってきたと思います。
ただ、ここで大事なのは、
AIをどう業務フローに組み込むかという
仕組みの話だけではない、ということです。
AIを「効率化のツール」として扱うのか、
「意見をくれる相手」として扱うのか。
この認識の違いが、使い方そのものを変えます。
ツールとして扱えば、
出てきた答えをそのまま採用したくなります。
でも、AIを一つの視点、
一人の関係者くらいの距離感で捉えると、
「他の人にも聞いてみよう」という発想が
自然に出てきます。
AIをどういう存在として捉えるか。
この認識を持っているかどうかで、
出す答えの質はかなり変わると感じています。
AIに聞いた後、もう一段掘る
AIを使わない理由はありません。
一般論を素早く整理してくれるのは、
それだけで価値があります。
ただ、そこで止まらないことです。
「自分の場合はどうか」
「実際にやった人はどうなったか」
この一段を、人に聞く。
経験者に聞く。
専門家に聞く。
AIが出した答えを起点にして、
そこから一段深く掘る。
アナログをミックスするほど、
AIはもっと使えるものになります。
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