「顧問料、高いですね」
そう言われる瞬間があります。
一瞬、頭の中で値下げがよぎる。
「もう少し下げましょうか」
そう言いかけて、僕は止まります。
値下げをすれば、
その場はおさまるかもしれません。
でも、それは根本的な解決にはなりません。
なぜなら、本質は価格の話ではないからです。
「高い」という言葉の裏には、
たいてい別の問題が隠れています。
価格を決めているのは、実は自分じゃない
価値と価格について、こんな考え方があります。
売り手が決められるのは価格です。
でも、価値を決めるのは買い手だという話です。
顧問料という「価格」は、
僕らが決めているように見えます。
でも、その価格に見合う価値があるかどうかは、
僕らではなく相手が決めています。
同じ7万円の顧問料でも、
価値があると感じる経営者もいれば、
高いと感じる経営者もいる。
価格は一つでも、価値は人によって変わります。
これは、値上げのときに特に忘れがちな視点です。
僕らは「作業量が増えたから、
この価格になりました」
と説明したくなる。
でも、それは価格の理由であって、
価値の説明にはなっていません。
「高い」の正体は、価値が翻訳されていないこと
値上げを伝えるとき、
よくある場面を三つ並べてみます。
パターンA:価格の説明だけする
「顧問料が月5万円から7万円になります」
これだけ伝えると、相手には値上げされた、
という事実しか残りません。
パターンB:作業量の話で終わる
「仕訳の数が増えました」
「消費税の課税事業者になりました」
「税務調査のリスクも上がっています」
一見丁寧な説明に見えます。
でも、これは事務所側の負荷が
増えている理由であって、
相手にとっての価値の説明にはなっていません。
値上げの根拠にはなっても、
価値の翻訳にはなっていない。
ここを混同すると、結局コストの
積み上げを説明しているだけになります。
パターンC:本当の価値を翻訳する
税理士に求められているのは、
申告書を作ることだけではありません。
会社が大きくなるほど、
経営者は一人で判断する場面が増えます。
資金繰り、投資判断、人の採用、組織の変化。
そのとき、税務と財務を分かった上で、
何でも話せる相手がいるかどうか。
これは、社外CFOという役割そのものです。
信頼できる壁打ち相手がいることの価値は、
仕訳の数では測れません。
パターンAとBは、価格の話にとどまります。
パターンCだけが、価値の話をしています。
同じ顧問料でも、価値がまったく違う理由
高級車の話を聞いたことがあります。
価格3500万円のあるスポーツカー、
本人にとっての価値はマイナスだという話です。
タダでもらっても、
維持費や駐車場代がかさむだけで、
むしろもらわない方が得だと。
一方で、同じクルマに
何千万円も価値を感じる人もいる。
価格は一つでも、
価値は主観によってまったく違う。
顧問料も同じです。
まだ経営の相談相手がいない会社にとって、
月7万円の顧問料は「話せる相手を持つコスト」
として大きな価値になります。
一方、すでに経理体制も整い、
判断も一人でできる会社にとっては、
同じ7万円が「申告書を作ってもらうだけの費用」
に見えることもあります。
価格が同じでも、
価値は相手の状況によって変わる。
だからこそ、誰にとっての価値かを見ないまま、
価格だけで比較されると、話がかみ合いません。
価値の翻訳は、顧客教育でもある
僕は、この価値の翻訳を
顧客教育だと思っています。
うちが提供している価値には、
自信を持っています。
だからこそ、
その価値をきちんと感じてもらうことは、
単なる説明ではなく、
顧客自身の成長にもつながると考えています。
サービスは、提供する側だけでは完結しません。
受け取る側が、その価値を感じ、
実際に活かせるかどうか。
ここまでがワンセットです。
壁打ち相手がいても、
それを経営判断に使わなければ意味がない。
だからこそ、価値を翻訳して伝えることは、
相手に価値の使い方を教えることでもあります。
士業がやるべきは値下げでなく「価値の翻訳」
「高い」と言われたときにやるべきことは、
値下げではありません。
価値を翻訳することです。
作業量が増えたという事実を、
経営上の意味に変換する。
仕訳が増えたのは、
会社の取引が広がっている証拠です。
課税事業者になったのは、
申告の複雑さと同時に、
税務調査で見られる論点も
増えているということです。
これらは単なる作業増加の説明ではなく、
経営リスクが一段上がっている
という経営情報です。
そして、そのリスクに対して、
税務・財務に詳しい人間が
壁打ち相手としてそばにいる。
ここまで翻訳して初めて、
価格に対する納得が生まれます。
値下げは、価値を
証明できなかったときの逃げ道です。
本当にやるべきは、
価値を言葉にして届けることだと思っています。
正直に言うと、この顧客教育ができなければ、
事業はいずれ成長が止まります。
売上や社員数が増えても、
価値が伝わっていなければ、
それは成長ではなく膨張です。
中身が伴わないまま、
器だけが大きくなっているだけだからです。
そして、これは
トップ一人でできることではありません。
組織全体でこれに取り組めるかどうかが、
成長を左右します。
次に「高い」と言われたら
値下げを考える前に、
一つだけやってみてください。
その価格の裏にある経営上の意味を、
一つ言葉にする。
「仕訳が増えた」ではなく、
「事業が拡大している証拠」。
「税務リスクが上がった」ではなく、
「一人で判断する場面が増えたとき、
話せる相手がいる安心感」。
そして、伝えたあとの反応も見てください。
そこで初めて、その価値が
相手に届いたかどうかがわかります。
届いていなければ、また別の言葉で
翻訳し直せばいい。
価値の翻訳に、正解は一つではありません。
価格は変わらなくても、
伝え方を変え続けることで、
伝わり方は少しずつ変わっていきます。
YouTube「にいみ税理士のお悩み相談室」
YouTube / にいみ税理士のお悩み相談室
日々の会計・税務・経営支援の現場でよくあるお悩みを解決!
さらに、節税のポイント、資金繰り、事業計画のヒントなどをわかりやすく解説しています。
気になる方は、ぜひチャンネル登録もよろしくお願いします!



