「なんでも対応します」は、選ばれない理由になっている

「御社の強みは何ですか?」
経営者の方にこう聞くと、
こう返ってくることがあります。
「特にないですね、なんでも対応してますので」
悪気はありません。
むしろ、間口を広げているつもりなんです。
でも、僕はこの答えを聞くたびに、
少し心配になります。
「なんでも対応できる」は、強みではなく、
選ばれない理由になっていることが多いからです。

「なんでもできます」が選ばれない理由

なんでも対応できる会社は、
一見、間口が広くて有利に見えます。
でも、お客さんの側から見るとどうでしょうか。
「なんでもできる会社」は、
「特に何が強いのか分からない会社」でもあります。
強みが見えないと、比較されます。
比較されると、最後は価格で選ばれます。
これが、絞らない会社が陥りやすい構造です。
逆に、専門を絞っている会社は、
比較の土俵に乗りません。
「この分野なら、あの会社」
そうやって、指名で選ばれるようになります。

美容師の例で考えてみる

分かりやすいので、美容師で例えてみます。
「カットもカラーもパーマも、なんでも対応します」
という美容師と、
「メンズカット専門です」
という美容師。
どちらが指名で選ばれやすいでしょうか。
なんでも対応する美容師は、
技術が低いわけではありません。
でも、お客さんの記憶には残りにくい。
一方、メンズカット専門の美容師は、
「あの人、メンズカットがうまい」と覚えられます。
遠くから通ってでも、
その人を指名する人が出てきます。
さらに、専門性が高いと見なされると、
単価も上がります
「誰でもできること」には、
高いお金を払う理由がありません。
でも、「その人にしかできないこと」には、
お金を払う理由が生まれます。
これは美容室に限った話ではありません。
税理士も、コンサルタントも、
工務店も、同じ構造の中にいます。

絞れない本当の理由は「恐怖」

それでも、多くの経営者は絞れません。
理由はシンプルです。
「絞ったら、他のお客さんが減るんじゃないか」
という恐怖です。
「業種を絞ったら、それ以外の業種から
仕事が来なくなるかもしれない」
「専門を打ち出したら、
間口が狭くなるかもしれない」
そう思うと、なかなか絞る決断ができません。
この恐怖、正直、僕にもよく分かります。
ただ、この恐怖は、半分正しくて、
半分間違っています。
確かに、絞った直後は、
専門外に見えるお客さんからの
問い合わせは減るかもしれません。
これは事実です。
でも、そのぶん、専門分野のお客さんからの
問い合わせは増えます。
なぜなら、「この会社は、この分野の専門家だ」
という認識が、初めて生まれるからです。
なんでも屋のときは生まれなかった認識です。
結果、長期的には、むしろ仕事は増えていきます。
そして、専門性が明確になると、
価格競争から抜け出せます。
「安いから頼む」ではなく、
「この分野なら、この人しかいない」
で頼まれるようになるからです。
これは、経営学でいう
差別化戦略の考え方そのものです。
みんなと同じ土俵で戦わない。
自分だけの土俵をつくる。
それが、差別化戦略の本質です。

絞った会社と、絞らない会社の差

こういう対比になります。

パターンA:領域を絞らない会社
どんな相談にも対応する。
比較検討される。
価格で選ばれる。
単価が上がらない。

パターンB:領域を絞った会社
特定分野に特化する。
比較の土俵に乗らない。
指名で選ばれる。
専門性の分、単価が上がる。

同じ実力があっても、
見え方が違うだけで、
選ばれ方がまったく変わります。

これも、差別化戦略
機能しているかどうかの差です。

完璧に絞れていなくても、始められる

偉そうに書いてきましたが、正直に言うと、
うちの事務所も、
完全に絞り切れているわけではありません。
オンラインでの税務顧問、
MoneyForwardへの特化、
社外CFOという打ち出しはしています。
これも、うちなりの差別化戦略のつもりです。
でも、業種を絞るところまでは、
まだできていません。
「どの業種の会社を、一番深く見てきたか」
と聞かれたら、正直まだ
言語化できていない部分があります。
それでも、何も絞らずにいた頃と比べると、
問い合わせの質も、選ばれ方も、
明らかに変わってきました。
絞ることは、一度で完成するものではなく、
少しずつ研ぎ澄ませていくものなんだと
感じています。

絞り方は「できること」からではなく「関心」から

では、どうやって絞ればいいのか。
出発点は、「自分が何をできるか」ではありません。
自分が何に関心があるか」です。
どの業種を、もっと深く知りたいか。
どんなお客さんと、長く関わっていきたいか。
自分の強みが、一番活きる場面はどこか。
この問いに正直に答えると、
絞るべき方向が、自然と見えてきます。
最初から大きく絞る必要はありません。
小さく、一つの分野から始めて構いません。
「この分野は、うちの専門です」
そう発信し続けることで、
その分野のお客さんが、少しずつ集まってきます。

指名される会社への、最初の一歩

もし今、「うちは、なんでも対応してます」
と答えているなら。
一度、立ち止まって考えてみてください。
それは本当に強みでしょうか。
それとも、「特に強みがない」ことの、
別の言い方になっていないでしょうか。
今日、一つだけ聞かれたときの答えを、
書き出してみてください。
「うちの会社が、一番自信を持って
任されたい相手は、誰ですか」
その答えが、差別化戦略の最初の一歩になります。


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この記事を書いた人

新美 敬太のアバター 新美 敬太 代表税理士

「経営を楽しむ」という想いを大切に、日々経営者の皆さまと向き合っています。
税務・会計だけでなく、同じ目線で悩みや挑戦を共有しながら、一緒に考え、進んでいくことを大切にしています。
私自身も一人の経営者として、まだまだ成長の途中です。
だからこそ、うまくいくことも、迷う時間も、すべて含めて寄り添える存在でありたいと思っています。
経営の中にある楽しさや可能性を感じていただけるように。
これからも、皆さまと一緒に歩んでいきます。

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