「A案とB案、どちらがいいですか」に潜む思考停止

「今日のランチ、パスタにする?
それともカレーにする?」
こう聞かれると、
人はパスタとカレーを比べ始めます。
昨日何を食べたか。
今日はがっつり食べたい気分か。
どちらが早くできるか。
でも、本当はうどんでもいいし、
そもそもお腹がそんなに空いていなければ、
軽く済ませてもいい。
「AかBか」と聞かれた瞬間、
それ以外の選択肢は頭から消えてしまいます。
これ、実は組織の中でも
毎日のように起きていることです。

選択肢を2つに絞った時点で、答えの半分は決まっている

トヨタ自動車の豊田章男さんが、
こんな話をしていたと聞いたことがあります。
「A案にしますか、B案にしますか」
と選択肢を持ってこられることが多いけれど、
自分が見たいのはそこではない。
「A案とB案を作れる素材を持ってこい」
と言うそうです。
素材さえあれば、
料理(判断)は自分がする、と。
なるほどな、と思いました。
A案とB案まで作り込んだ時点で、
実はもうかなりの判断が
終わっているんです。
何を課題だと捉えたのか。
誰の意見を聞いたのか。
どの情報を重く見たのか。
そして、どの案を
「これは違う」と外したのか。
AとBが並んだ時点で、
CもDもEも、すでに消えています。
最後にAかBかを選んでも、
それは相手が用意した枠の中で
選んでいるだけなんですね。

2つに絞ることが、悪いわけではない

ここで一つ、
誤解しないでほしいことがあります。
AとBを用意してくること自体は、
悪いことだとは思っていません。
素材のまま持ってこられても、
判断する側は
何から手をつければいいか分かりません。
素材の中から論点を見極めて、
AとBという形にまで整理する。

これ自体、立派な思考のプロセスです。
むしろ僕は、AとBの2案を出してもらうより、
洗練されたA案を1つだけ
持ってきてほしい
と思うことすらあります。
「これしかない」というところまで
突き詰めて考えてもらえるなら、
それが一番早いからです。
問題は、AとBを用意すること自体ではなく、
その手前にあった判断が見えなくなることです。
AとBという結果だけを渡されると、
何を拾って、何を捨てたのか、
その過程が分からなくなる。
ここが分かれ目だと思います。

比較して答える人、聞き返す人

同じ相談を受けても、
反応の仕方は大きく2つに分かれます。

パターンA:
「AとB、どちらがいいですか」と聞かれ、
それぞれのメリット・デメリットを
比較して、その場で答える。

パターンB:
答える前に、
「なぜこの2つに絞ったんですか」と聞き返す。

パターンAは、一見スピーディーで
頼りがいがあるように見えます。
実際、僕自身も
つい即答してしまうことが多いです。
でも、パターンAを続けていると、
相談してくる側は
「どうせ最後は判断してもらえる」
と思うようになります。
すると、次第に選択肢を絞り込んだ状態でしか
相談を持ってこなくなります。
パターンBは、一見遠回りに見えます。
でも、「なぜこの2つなのか」を聞くことで、
実は課題そのものが別のところにあったと
分かることが少なくありません。

多くの組織でよく見る場面

たとえば、こんな相談は
どの会社でもよくあります。
「値上げするか、しないか」
「新しいツールを導入するか、しないか」
「人を採用するか、既存メンバーで回すか」
こうした相談の多くは実はAかBかの前に、
もう一段階、確認すべきことがあります。
値上げするかしないかの前に、
そもそも原価が上がっているのに
価格に転嫁できていない構造

問題だったりします。
ツールを導入するかしないかの前に、
今のやり方自体が
属人化していて、ツールでは解決しない
場合もあります。
採用するかしないかの前に、
今いるメンバーの業務が
そもそも整理されていないだけ

というケースもよくあります。
AかBかを精密に比較しても、
問いの立て方自体がずれていれば、
いい判断にはたどり着けません。

選択肢を疑うと、集まる情報が変わる

「AかBか」で止まらず、
「なぜこの2つなのか」を聞く。
これをやると、何が起きるか。
相談する側は、一度立ち止まって考え直します。
「言われてみれば、
なぜこの2つに絞ったんだっけ」と。
そうすると、実は最初に外していた選択肢や、
言いにくかった本音が出てくることがあります。
情報が集まる組織と、集まらない組織の差は、
実はここにあります。
即答してくれる相手には、考える前の生の情報を
持っていきにくいものです。
一方、「なぜ」を聞いてくれる相手には、
まだ整理しきれていない情報でも
持っていきやすくなります。

聞き返す余裕がない日もある

ここまで書いてきましたが、
僕自身も忙しいときはつい「じゃあAでいこう」
と即答してしまいます。
聞き返す余裕がある日と、
ない日があるのが実際のところです。
それでも、意識して「なぜこの2つなのか」
と聞き返す回数を少しずつ増やしています。
聞き返した分だけ、思ってもみなかった前提や
違う選択肢が見えてくるからです。

答える前に、素材を見る

今日、誰かから「AとB、どちらがいいですか」
と聞かれたら。
すぐに答えを出す前に、
一度だけ聞いてみてください。
「なぜこの2つに絞ったんですか」
それだけで、見えている景色が
変わることがあります。
絞ってもらうことに感謝しながら、
その手前も一度見てみる。
組織の情報が集まるかどうかは、
案外そんな小さな一言の
積み重ねで決まっていくのだと思います。


YouTube「にいみ税理士のお悩み相談室

YouTube / にいみ税理士のお悩み相談室

日々の会計・税務・経営支援の現場でよくあるお悩みを解決!
さらに、節税のポイント、資金繰り、事業計画のヒントなどをわかりやすく解説しています。
気になる方は、ぜひチャンネル登録もよろしくお願いします!

よかったらシェアお願いします
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

新美 敬太のアバター 新美 敬太 代表税理士

「経営を楽しむ」という想いを大切に、日々経営者の皆さまと向き合っています。
税務・会計だけでなく、同じ目線で悩みや挑戦を共有しながら、一緒に考え、進んでいくことを大切にしています。
私自身も一人の経営者として、まだまだ成長の途中です。
だからこそ、うまくいくことも、迷う時間も、すべて含めて寄り添える存在でありたいと思っています。
経営の中にある楽しさや可能性を感じていただけるように。
これからも、皆さまと一緒に歩んでいきます。

目次