「うちは普通ですよ」 経営者の方と話していると、
この言葉をよく聞きます。
特段すごいことをしているわけでも、
際立ったものがあるわけでもない、
という意味合いで。
でも、よく聞いてみると、
顧客から信頼されていたり、
同業他社にはない独自のやり方を持っていたり、
地域に深く根ざしていたりします。
どう見ても「普通」ではない会社が、普通だと言う。
この言葉の裏には、
自分たちの強みが見えていない
という現実があります。
「10年で9割廃業」は本当か
ネット上ではよく、こんな数字が出回っています。
「起業した会社の9割は10年以内に廃業する」
「国税庁のデータによると……」
ただ、この数字には根拠が曖昧なものが多いです。
国税庁は法人の課税状況を
把握するための調査機関であり、
企業の生存率を追跡するような
統計は公表していません。
信頼性の高いデータとして、中小企業庁が
帝国データバンクのデータをもとに
公表している数字があります。
それによると、企業の生存率は
こう推移しています。
- 創業10年後:約72%(約3社に1社が退出)
- 創業20年後:約55%
- 創業30年後:約43%
「10年で9割廃業」という数字は誇張です。
でも、だからといって「続けるのは簡単だ」
とはなりません。
30年後には半数以上が消えている、
という現実は、十分に重い。
続けること自体に、意味があります。
続いている会社には、必ず理由がある
では、なぜ続いているのか。
「特に何もしていない」という経営者がいます。
でも、それは本当ではありません。
顧客がいる。リピートがある。
スタッフが育っている。
地域に根づいている。 信用が積み上がっている。
これらは、ある日突然
生まれるものではありません。
時間をかけて、少しずつ積み重ねてきたものです。
問題は、当の本人がそれを「普通のこと」
として見ているということ。
自覚できていない強みが、一番もったいない。
弱みを見ることも大切。でも、それだけでは足りない
経営者は、課題や問題に
目が向きやすい生き物です。
これは正常なことで、
むしろそういう感覚がないと
会社は危うくなります。
PDCAで弱みを補完する、改善を続ける。
それは必要です。
でも、成功している会社の多くは、
弱点の修正だけにとらわれていません。
強みをさらに伸ばすことに、
意識的に資源を投じています。
できないことをできるようにするより、
すでにできていることをもっとうまくやる。
その方が、結果として差がつきやすい。
人の育て方と似ています。
褒めることで次のチャレンジが生まれるように、
強みに光を当てることで、組織は動き出す。
強みがわかったら、次は「独自性」を問う
強みを認識したとき、
次に考えてほしいことがあります。
「なぜ、自社なのか」という問いです。
世界で唯一無二でなくていい。
そんな会社はほぼ存在しません。
そうではなく、
「この地域で」「この規模の顧客に」
「このやり方で」「このスピードで」
という組み合わせが、独自性になります。
たとえば、同じ税理士でも、
「オンライン専門で」「マネーフォワードに特化して」
「社外CFO的な関わり方をする」というのが、
うちの組み合わせです。
個々の要素は、それぞれ他にもいる。
でも、そのかけ合わせを、
同じようにやっているところは少ない。
これが、ブランディングの土台になります。
「うちといえばこれ」と言えるものが、
一つでもあるか。
それを言語化できているか。
言語化できていれば、誰かに伝わります。
伝われば、選ばれる理由になります。
強みと独自性は、マネタイズにも融資にも直結する
僕はスタートアップの起業家と
話す機会が多くあります。
事業の初期段階から関わることも
少なくありません。
そこで必ず確認するのが、
この「強みと独自性」の部分です。
サービスの内容や数字ももちろん大事。
でも、その前に
「なぜこの会社がやるのか」「他との違いは何か」
が整理されていないと、
マネタイズの方向性が定まりません。
誰に、何を、なぜ自社から買ってもらうのか。
この問いへの答えが、収益の設計につながります。
融資の場面でも同じです。
金融機関が事業計画を見るとき、
必ず問われるのは事業の独自性や競合優位性です。
「同じようなサービスはたくさんあるが、
なぜあなたの会社が選ばれるのか」。
ここに答えられない事業計画は、
審査を通りにくいです。
現代は、あらゆる業種で競合が増えています。
多様性があるからこそ、競合も多い。
だからこそ、「自社はなぜ選ばれるのか」
を言葉にしておくことが、
経営の根幹になります。
強みを掘り起こすフレームとして—SWOT分析
強みを整理するときに使いやすいフレームが、SWOT分析です。
- Strength(強み):自社が得意なこと、資産として持っているもの
- Weakness(弱み):補完が必要な部分
- Opportunity(機会):外部環境の追い風
- Threat(脅威):外部環境のリスク
このうち、多くの経営者が
最も時間をかけているのが
「弱み」と「脅威」です。
逆に、「強み」と「機会」は後回しになりやすい。
でも、強みを起点に機会と掛け合わせると、
打ち手の方向性が見えてきます。
SWOT分析の具体的な使い方や、
他のフレームについては、
次回以降の記事で順に取り上げていきます。
今日できること
難しいことは何もありません。
「なぜ、自社は続いているのか」
「なぜ、お客さんは自社を選んでくれているのか」
この二つに、自分なりの答えを出してみる。
それが、強みの言語化の第一歩です。
うちの事務所も、自社の強みを
整理しきれているかというと、まだ途中です。
でも、問い続けていることで、
少しずつ言葉になってきているものがあります。
続いていること自体が、すでに何かの証明です。
あとは、それが何かを、自分で気づくだけです。
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