消費税の納税義務、正確に言えますか?判断基準は3つ

こんにちは、しんこう会計事務所の新美です。

「うちはまだ売上が少ないから、
消費税は関係ないですよね?」
こういう質問を、新規のご相談でよく受けます。
答えは、場合によってはNoです。
売上の大小だけで決まるわけではないからです。
消費税の納税義務は、
「今の売上」ではなく複数の基準で判断します。
この仕組みを正確に把握していないまま進むと、
ある年から突然、申告が必要な状態になっていた、
ということが起きます。
今日は、その判断基準を一つずつ整理します。

「売上1,000万円以下=免税」は正確ではない

まず基本から。
消費税の納税義務があるかどうかは、
「基準期間」という考え方で判断します。
基準期間とは、簡単に言うと2年前のことです。
個人事業主なら2年前の1月〜12月、
法人なら2年前の事業年度。
この期間の売上が1,000万円を超えていると、
その年は消費税を納める義務が生じます。
逆に今の売上がどれだけ伸びていても、
基準期間の売上が1,000万円以下なら
原則免税のまま。
判断のタイミングは
「今」ではなく「2年前」というのが、
最初に押さえておくべきポイントです。
一点補足しておくと、
ここで言う売上は「課税売上高」という概念で、
すべての売上が対象になるわけではありません。
輸出取引や、医療・介護・一定の不動産取引など、
消費税がそもそもかからない取引は
この1,000万円の判定に含まれません。
「売上=すべて判定対象」ではないという点は、
業種によっては重要なポイントです。
詳しくはまた別の記事で書きます。
この「2年前」という仕組み、
意外と知られていません。
売上が伸びてきた会社ほど、
気づかないうちに
課税事業者になっているケースがあります。

落とし穴① 特定期間という「もう一つの判定」

2年前基準だけ知っていても、まだ足りません。
特定期間」という、
もう一つの判定があるからです。
特定期間とは、前年の上半期
(個人なら1月〜6月、
法人なら前事業年度の前半6ヶ月)のことです。
この期間の判定には、2つの基準があります。
課税売上高が1,000万円超、
または給与等の支払額が1,000万円超。
ポイントは、
どちらか一方を選んで判定できるという点です。
課税売上高が1,000万円を超えていても、
給与等の支払額が1,000万円以下であれば、
その基準を選ぶことで免税のままでいられます。
実質的に課税事業者になるのは、
両方の基準を確認した上で、
逃げ場がないときです。
具体的な場面で考えます。
昨年の上半期の課税売上高が1,200万円。
ただし、給与等の支払額は800万円。
この場合、給与基準を選択すれば、
免税のまま継続できます。
売上だけ見て「もう課税事業者だ」と思い込む前に、
給与等の金額も必ず確認してください。
順調に伸びている会社ほど、
ここを見落としやすい。
「2年前は大丈夫だったから今年も大丈夫」
という感覚が、一番危ないパターンです。

落とし穴② インボイス登録で自ら課税事業者になっているケース

2023年10月、
インボイス制度(適格請求書等保存方式)
がスタートしました。
制度開始後、免税事業者から
インボイス発行事業者になった
個人事業者だけで約105万人にのぼります
(国税庁)。
取引先に求められて、
深く考えずに登録した方も少なくないはずです。
ただ、インボイス登録は、
消費税を納める事業者として
自ら手を挙げる行為です。
売上が1,000万円以下でも、
登録した時点から消費税の申告義務が発生します。
よくある誤解がこれです。
「インボイス登録したけど、
売上がまだ少ないから
消費税は関係ないと思っていた」
関係あります。
登録した以上、売上規模に関係なく
申告と納税が必要です。
「とりあえず登録した」が、
思わぬ申告義務を生むことがあります。
登録するかどうかの判断は、
取引先との関係だけで決めてしまいがちです。
でも税務上の影響を
きちんと確認してから判断してほしかった、
と思うケースが実際にあります。

納税義務の発生、3つの入口を整理する

ここまでの話をまとめます。
消費税の納税義務は、
3つの入口のどれかに当てはまると発生します。

基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円超
最も基本的な判定。まずここを確認する。

② 特定期間(前年上半期)の課税売上高または給与等が1,000万円超
①をクリアしていても、
前年上半期の数字次第で課税事業者になる。

③ インボイス登録
売上規模に関係なく、
登録した時点で課税事業者になる。

「売上が少ないから大丈夫」は、
①しか見ていない判断です。
②と③も含めて初めて、正確な判断ができます。
3つ並べると複雑に見えますが、
要は「2年前・前年上半期・インボイス登録」
の3点を確認する習慣があれば足ります。
一度整理してしまえば、
毎年同じ流れで確認できます。

今日できること

今すぐ、二つだけ確認してみてください。
① 2年前と、前年上半期の売上が
それぞれいくらだったか
② インボイス登録をしているかどうか
この2点を把握しているだけで、
売上が大きくなれば、
やがて課税事業者として固定されていきます。
そうなれば、自分自身の納税義務を
気にする場面は減ってきます。
ただ、消費税の仕組みを知っておくことは、
経営を続けていく上でずっと役に立ちます。
取引先が課税事業者かどうか、
インボイス登録をしているかどうか。
こうした判断は、取引条件等の
経営判断にも直結します。
「自分には関係ない」ではなく、
「取引先も含めて理解しておく知識」
として持っておいてほしいと思っています。

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