財務に強い社長は、金利より返済額を見ている

こんにちは、しんこう会計事務所の新美です。

「金利が高くて、
少しでも安いところで借りたいんですが……」
こういう相談、月に何件かいただきます。
気持ちはよくわかります。
でも、そのたびに僕は聞き返すようにしています。
「毎月の返済額は、いくらですか?」
たいてい、すぐに答えが出ません。
そして、それが問題の本質だったりします。

会社を潰すのは「赤字」ではなく「資金不足」

「会社はPLではなくBSで潰れる」
という言葉があります。
一度は聞いたことがある方も
多いのではないでしょうか。
これが意味することはシンプルです。
会社は、赤字で潰れるのではなく、
お金がなくなって潰れる
損益計算書が一時的に赤字でも、
キャッシュがあれば会社は生き続けます。
逆に、黒字でもお金が底をつけば倒産します。
だとすれば、借入のときに本当に見るべきは何か。
金利ではなく、毎月の返済額です。
金利は利益を減らします。
ただ、それだけです。
返済額は、毎月キャッシュを直接削っていきます。
この違いは、思っている以上に大きい。

損益計画だけでは、資金繰りは見えない

ここで、多くの経営者が陥りやすい
落とし穴があります。
「売上計画も利益計画も立てている。うちは大丈夫」
そう思っている方ほど、注意が必要です。
損益計画は、売上・費用・利益を管理するもの。
経営に欠かせない、基本中の基本です。
でも、損益計画には返済額が載りません
毎月の借入返済は、
損益計算書の外で起きています。
どれだけ丁寧な損益計画を作っていても、
返済によるキャッシュの流出は見えてきません。
だからこそ必要なのが、
損益計画とそれに連動した資金繰り表です。
毎月いくら入ってきて、いくら出ていくか。
返済も含めた上で、手元にいくら残るか。
この流れを月次で把握していて初めて、
「今、本当に安全な状態かどうか」がわかります。

返済額の「実質ペース」を今すぐ確認する

では、具体的に何を見ればいいか。
まず、この計算をやってみてください。

長期借入金の残高 ÷ 毎月の返済額 = 実質返済月数

5年(60ヶ月)で借りているなら、
答えは60以上になるはずです。
ところが、36や24
という数字が出てくることがあります。
契約上は5年なのに、
実質3年・2年ペースで返している状態。
これが、気づかないうちに
資金繰りを圧迫していきます。

なぜ返済ペースが狂うのか—具体的な事例で見る

原因のほとんどは、
借入本数が増えすぎることです。
具体的なケースで見てみましょう。
3年前に1,200万円を5年返済で借りたとします。
月返済は20万円。
現在(3年経過)の残高は480万円
月20万円の返済が続いています。
ここで新たに設備投資などで、
1,200万円を追加で借りたとします。
借入後の状況を整理すると、こうなります。
1本目(残り2年):残高480万円、月返済20万円
2本目(新規5年):残高1,200万円、月返済20万円
合計:残高1,680万円、月返済は40万円

残高1,680万円 ÷ 月40万円
実質42ヶ月(3.5年ペース)

5年で借りているのに、
実質3.5年ペースで返している状態になっています。
さらにここから
2〜3年後に運転資金でもう1本借りると、
残高はそれほど増えていないのに、
月の返済額だけがじわじわ積み上がっていく
「利益は出ているのに、なぜか資金がきつい」
その原因が、
ここに隠れていることが少なくありません。

対策は3つ。まず「予防」から考える

① 新規借入の時点で返済期間を長めに設定する
最もシンプルな予防策です。
「少しでも早く返したい」
という気持ちはわかります。
でも、返済期間を短くするほど月の返済額は増え、
資金繰りの余裕が削られます。
返済期間は、無理なく返せる長さで設定する
繰り上げ返済は後からできます。
でも、資金が苦しくなってから
期間を延ばす交渉は簡単ではありません。
借りる前の設定が、じつは一番大切です。

② 借入を一本化する(おまとめ)
本数が増えてしまった場合の、
現実的な対処法です。
複数本に分散している返済を
1本にまとめることで、
月の返済額を大きく圧縮できることがあります。
借金の総額は変わらなくても、
毎月のキャッシュへの影響は激変します。
まず取引銀行に「一本化の相談」
として持ち込むことが第一歩です。

③ 当座貸越を調整弁として使う
地方銀行や商工中金と取引があり、
ある程度の
信用枠が設定できる企業向けの方法です。
当座貸越は、借りっぱなしにできる枠
として機能します。
本数が増えすぎたとき、
この枠で一時的にカバーしながら
長期借入を整理していくという使い方ができます。
①②で改善できない場合の
選択肢として持っておく程度で十分です。

銀行交渉は「晴れているうちに」

どの対策も、共通して言えることがあります。
業績が良いうちに動くこと
資金繰りが苦しくなってから相談しても、
銀行は動いてくれません。
返済能力がない会社の返済を、
銀行が自ら緩める判断はしないからです。
逆に、業績が安定しているうちなら、
銀行側も前向きに動いてくれることがあります。
雨が降ってからでは遅い。
晴れているうちに交渉する
これが、財務に強い社長の共通点です。

まず、この2つを確認してください

① 実質返済ペースを計算する
長期借入金の残高 ÷ 毎月の返済額
を出してみてください。
60を下回っていたら、要注意です。
業績が安定している今のうちに、
取引銀行へ相談を入れてみてください。

② 損益計画に資金繰り表を添える
月次の入出金と返済を含めた資金の流れを
一度書き出してみてください。
難しく考えなくていい。
まず「見える化」することが最初の一歩です。

「金利より返済額」。
この視点が加わるだけで、
借入の判断は大きく変わります。
損益計画と資金繰り表が揃ったとき、
経営の全体像が初めてクリアに見えてきます。

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