「これ節税ですよね?」と持ってきた領収書、税務署はこう見ています。

こんにちは、しんこう会計事務所の新美です。

経営者やフリーランスの方とお話ししていると、
必ずと言っていいほど話題に上がるのが
節税」の話です。
ただ、相談現場でよく耳にするこのセリフ。
実はとても危ういなと感じることがあります。

「これ、経費で落ちますよね?」
「領収書があるから大丈夫ですよね?」

結論から言いましょう。
「領収書がある=OK」ではありません
そして厄介なのは、
グレー”を攻めているつもりが、
気づかないうちに「アウト(脱税)
の領域に足を踏み入れてしまっている人が
少なくないことです。
今日は、意外と知られていない
節税・租税回避・脱税」の境界線について、
頭の中をスッキリ整理します。

境界線は「事実」と「想定内」にある

税金を減らす行為は、結局この2つで分かれます。

  • 事実に沿っているか
    (やってないことを“やった”にしていないか)
  • 税法が想定している範囲か
    (不自然な仕組みで逃げていないか)

この2つをごちゃ混ぜにすると、
税務調査で「こんなはずじゃなかった」が起きます。
逆に言えば、節税を堂々とやる人は、
ここを外しません。

「節税・租税回避・脱税」は3階建てで整理する

ここで一度、頭の中を整理します。
税金を減らす行為は、大きくこの3階建てです。
1階:節税
(合法・推奨)
2階:租税回避
(合法=違法ではない。ただし否認リスク)
3階:脱税
(違法・アウト)

節税(合法・推奨)

税法が「どうぞ使ってください」と
用意しているルールを、
事実に沿って正しく使うことです。
青色申告、小規模企業共済、iDeCo、
規程に基づく旅費日当や役員社宅など。
これは堂々とやってOKです。
むしろ、やらないと損です。

租税回避(合法。ただし否認リスク)

ここが一番モヤモヤするところです。
まず大前提として、租税回避は基本的に
違法ではありません」。
ただし、税金を減らすためだけに
通常はやらないような“不自然な取引や”、
経済合理性の薄い“異常な組み立て”を使って、
課税の条件に当てはまらない形へ
逃げるイメージです。
形式は整っているのに
「やってることが変」なので、税務署から
「その形は不自然なので、
通常の取引として計算し直します」と言われ、
否認”される可能性があります。
専門的に言えば、よくこう整理されます。

脱税は、課税要件に当たる事実を隠すこと
租税回避は、課税要件の充足そのものを回避すること

脱税(違法・アウト)

事実を「曲げる・隠す・作る」行為です。
売上除外、架空外注、架空経費、
領収書の偽造・改ざんなど。
ここは明確にアウトです。

「グレーゾーン」の正体

世の中で言う「グレー」は、
多くが2階(租税回避〜否認)の話です。
でも本当に怖いのはここからで、
2階にいるつもりの人が、
無理に“説明を作る”ために証拠をいじった瞬間、
3階(脱税)へ落ちる。
これが、税務調査で一気に不利になる
典型パターンです。

具体例:一つのケースでわかる「3階建て」の境界線(家族への給与)

抽象的な話だけでは分かりにくいので、
多くの経営者が一度は検討する
家族への給与」を例に、どこまでが安全で、
どこからが危険なのかを並べてみます。

節税(合法・推奨)になっているケース

家族への給与は、正しく設計すれば
堂々とした節税になります。
ポイントは「実態」と「適正」です。
実態:家族が本当に仕事をしている
適正:仕事内容・時間・金額が相場と整合している
この2つが揃うと、かなり強いです。
具体的には、こういう形が望ましいです。

雇用契約(役割、勤務形態、給与)
業務内容が分かる記録(担当業務、日次の簡単なメモでもOK)
成果物(請求書発行、入金確認、SNS投稿、簡単な資料作成など)
給与は振込で支払う
源泉徴収や年末調整など、処理も正しくやる

要するに「普通の雇用」として
説明できればOKです。

租税回避(合法=違法ではないが、否認リスク)に寄っているケース

ここはグレーに見えます。
だからこそ危ないです。
家族が何かしているのは事実だけど

仕事内容が曖昧
勤務実態が説明できない
金額が不自然に大きい
他の従業員と比べて明らかにバランスがおかしい

こうなると、税務署側から見ると
「税金を減らすためだけに、
異常な設計になっている」
と見える可能性があります。
この場合、
「その給与は必要経費としては認めません」
と引き直され、否認→追徴が発生するリスクが
現実的になります。

脱税(違法・アウト)になっているケース

これはシンプルです。

働いていないのに給与を出す
勤務表や業務報告を作って“働いたことにする
名義だけ使って、お金を動かす

ここまで来ると、事実を作っているので3階です。

「事実」を動かした瞬間に、階層が変わる

この例で見ていただいた通り、
1階と3階を分けるのは
「嘘があるかどうか」だけです。
細かい経費も理屈は同じです。
実際に仕事で使った(事実)なら1階
プライベートなのに仕事と言い張る()なら3階
今回はカフェ代などの細かい話はあえて省き、
本質に絞りました。

「否認」と「脱税」は、住む世界が違う

ここが今回いちばんお伝えしたいポイントです。
否認とは、ざっくり言うと
「その経費は認められません」
「その形は不自然なので、
通常の取引として計算し直します」
と言われることです。
痛いのは間違いないですが、
基本は計算のやり直し(追徴)の話で、
まだ否認は「税務」の世界にいます。
ここで止まるなら、戻れます。

仮装・隠ぺいがあると判断された瞬間、
脱税は「制裁」の世界に入ります。
重加算税が視野に入り、
代表的には過少申告側で35%、
無申告側で40%といった高い割合で課されます。
さらに納付が遅れれば延滞税もかかります
ただ、実務で本当に効いてくるのは、
お金以上に「信用」です。
一度「悪質」というレッテルが付くと、
その後にジワジワ響きます。
経営者にとって、これは致命傷になり得ます。

迷ったら戻る「3点チェック」

「これ、経費にしていいのかな?」と迷ったら、
この3つだけです。

実態:その取引、本当にやった?
証拠:領収書以外に、第三者へ説明できる裏付けはある?(チャット、メール、成果物)
目的:事業目的だと一言で言える?

この3つが揃うほど、
あなたは安全な1階(節税)に立てます。

まとめ:堂々と節税する人は「設計」している

強い節税は、裏ワザや小細工ではありません。
役員報酬、社宅、旅費規程、投資計画。
こういったものを
あらかじめ設計し、ルール通りに運用する」。
これが結局、いちばん手元にお金が残り、
税務調査でも強い戦略です。

家族への給与も同じです。
「あとから説明を作る」のではなく
「最初から説明できる形で設計しておく」
これだけで、税務リスクは激減します。
「嘘」の上ではなく、「正しい設計」の上に
節税を積み上げていきましょう。

📺 YouTubeチャンネルはこちら!

▶️ にいみ税理士のお悩み相談室(YouTube)
「にいみ税理士のお悩み相談室」では、
日々の会計・税務・経営支援の現場で
よくあるお悩みや、節税の考え方やポイント、
資金繰り、事業計画のヒントなどを、
やさしく・わかりやすく解説しています。

気になる方は、
ぜひチャンネル登録もよろしくお願いします!

関連記事

開業のリアル②|資格を諦めた自分が、独立を決意するまで

AI時代でも税理士の価値が上がる理由

日本人の平均勉強時間は1日6分?!

PAGE TOP