こんにちは、しんこう会計事務所の新美です。
資金繰りの相談を受けていると、
かなりの確率で経営者の方からこんな言葉が出てきます。
「銀行から借りられているうちは、まだ大丈夫ですよね?」
この感覚、間違いではありません。
ただし、そのまま信じ切るのは少し危険です。
今日は、資金繰りが悪化していく会社に共通するサインと、
銀行員が実際にチェックしているポイントを、
現場目線で整理してみます。
借入は「悪」ではない。「正解」になる場面も多い
最初に、誤解してほしくないことがあります。
「借りられるだけ借りて、レバレッジをかける」こと自体は、
経営として十分に正解になり得ます。
- 成長局面で一気にアクセルを踏む
- 設備投資や人材投資を前倒しする
- M&Aなどで次のステージを狙う
自己資金だけで回そうとする方が、
むしろチャンスロスなどのリスクになる場面もあります。
また、一定程度の現預金を安全性のために確保するための融資。
これも、よくある「正しい借り方」の一つです。
不測の事態に備えて手元のキャッシュを厚くする。
これは守りの経営として、とても合理的です。
問題は「借入そのもの」ではなく「前提」
ここで一度、立ち止まって考えてみてください。
- 今の借入は、何のための借入でしょうか?
- その借入によって、将来どんな数字を作る想定でしょうか?
この問いに、自分の言葉で答えられない借入が増え始めると、
資金繰りは静かに歪み始めます。
借入は、精緻な損益計画と資金繰り計画が前提にあって
初めて「武器」になります。
前提がない借入は、気づかないうちに経営の重りになってしまうのです。
資金繰りが悪化する会社に共通する状態
実際の相談現場で多いのは、こんな状態です。
- 借入残高は増えているのに、手元の現金は増えていない
- 長期の「運転資金」が積み上がっている
- 毎月の返済額を正確に把握していない
- 決算書を「税金のための書類」としてしか見ていない
ここでも、少し自社を振り返ってみてください。
「返済後もキャッシュは残っていますか?」
「借入の内訳を、運転資金と設備資金に分けて説明できますか?」
このあたりが曖昧だと、資金繰りは一気に不安定になります。
銀行は「黒字かどうか」より構造を見ている
銀行は、単に黒字か赤字かを見ているわけではありません。
見ているのは、資金の回り方そのものです。
代表的なチェックポイントは、次の3つです。
① 運転資金は何ヶ月分借りているか
目安は月商の1.5〜2ヶ月分程度です。
赤字補填などで借りて3〜4ヶ月を超えてくると、
銀行からは警戒ゾーンと見なされます。
「今、何ヶ月分の運転資金を借りているか」すぐに答えられますか?
② 債務償還年数は何年か
今の会社の稼ぐ力(キャッシュフロー)で、
「何年かけたら借金を全額返せるか」という指標です。
一般的な中小企業であれば、10年以内が一つの基準です。
これが長くなるほど、銀行は「将来の返済余力」を疑い始めます。
③ 年間返済額とキャッシュフローの関係
個人的な感覚ですが、以下の状態はかなり苦しいサインです。
年間返済額 ÷ フリーキャッシュフロー > 2倍
利益は出ているのに、返済でキャッシュが減り、
足りなくなってまた借りる。
この「自転車操業」の循環に入っていないか、
一度数字で確認してみてください。
黒字なのに資金繰りが苦しくなる理由
ここで多くの社長がつまずきます。
借金の返済は、「利益」ではなく「現金」で行われるからです。
減価償却、在庫、売掛金。
これらを無視して「PL(損益計算書)が黒字だから大丈夫」
と判断すると、資金繰りは簡単にズレます。
銀行が慎重になるのは、冷たいからではありません。
決算書の数字から、返せないと判断しているからです。
借入を武器にできている会社の共通点
逆に、借入をうまく使っている会社には、はっきりした共通点があります。
- 運転資金と設備資金を明確に分けて考えている
- 短期借入と長期借入を使い分けている
- 計画と数字で銀行に説明できる
そして何より、
「なぜこの借入が必要なのか」を数字と言葉で説明できること。
ここができると、銀行との関係は一段階上のステージに変わります。
最低限、ここだけは押さえておいてほしい
難しいことをやる必要はありません。
まずはここから始めてみてください。
- 損益計画と資金繰りをセットで見る
- 最低でも6ヶ月先の現預金を把握する
- 決算書を一度、銀行目線で眺めてみる
もし、「6ヶ月後の現預金残高がパッと浮かばない」のであれば、
改善余地はかなりあります。
おわりに|借入は「体脂肪」と同じ
最後に、私の好きな例え話をさせてください。
借入は、体脂肪とよく似ています。
多すぎても動きが鈍くなる。
かといって、ゼロ(ガリガリ)でも不測の事態に弱く不安定。
「ほどよい状態」を、意識的に維持することが重要です。
「借りられるかどうか」ではなく、「返しながら成長できるか」。
ここを基準に、一度自社の借入を見直してみてください。
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